A氏:先日の10日の新聞で、福田首相が急遽辞任したことで、福田首相が力を入れていた派遣労働の環境改善が停滞していると報じているね。
市場原理主義の小泉改革の負の部分の修正だね。
私:辞任のために日雇い禁止法案は停滞し出しているというね。
ある日雇い労働者は「派遣法はどうなるのか。首相はやることをやってからやめてほしかった」と言っているという。
A氏:11日の「私の視点欄」では、労働経済ジャーナリストの小林美希氏が昨年末に出した政府の「ワークバランス憲章」について論じているね。
仕事と生活の調和のバランスを改善しようというものだが、現状では、正社員が優遇され、非正社員が忘れられていると批判的だ。
正社員は残業ゼロでも、そのしわ寄せが非正社員に押し付けられる。
非正社員の犠牲の上に、正社員のワークバランスが取れるという格差だね。
私:しかし、グローバル経済のほうもサブプライムローン問題で急激に悪化していて、労働環境は悪化するだろうね。
このブログでも、格差問題をとりあげて出しのが、ちょうど2年前だね。
俺は製造業経験があるから、大手の製造現場で、派遣労働者が半数を占めるという事実に驚き、それから知的街道が始まり、それをたどるうちに背景にあるグローバル経済の変化にたどり着いたね。
中でも、早くから小泉路線に対して批判をし、予告をしていた内橋氏の「悪夢のサイクル」は参考になったね。
この本では北欧の例もあげられている。
A氏:1980年代までの日本経済の成功は、製造業の現場の強さで築かれた。
その頃、近代製造業に携わるものは、北米、西欧、日本くらいで、全世界で6億人。
ところが、冷戦崩壊後の1990年代以降、それが崩壊し出す。
今や、中国沿海部、東南アジア、東欧、インドの一部などが加わり、20億人が近代的製造業に加わっている。
しかも、低賃金。
これが製造業の近代化とグローバル経済化で直結した。
日本の製造業はどんどん、低賃金の中国に進出した。
私:ヨーロッパ、特に北欧は「小さな政府」の市場原理主義でなく、高福祉高負担で対応したので、格差はひどくない。
だから、ヨーロッパは、消費税は2桁だね。
A氏: そのため、日本では格差問題解決を言うと、必ず、高負担をするのかという議論になる。
しかし、フランスのように、経済がよくないと若者の失業率が日本より高いというマイナス面も出ているためか、労働の規制緩和を求める経済界の声も強く、昨年、市場原理主義寄りのサルコジ大統領になったね。
サルコジ大統領は早速、労働の規制緩和に乗り出した。
ヨーロッパも流動的だね。
日本は市場原理主義の先を走り、数年前から派遣労働の大幅規制緩和で、安易に派遣労働への切り替えに走ったのは、そういう背景があるね。
A氏:そして、もたもたしているうちに、日本は、以前から、毎年、約20兆円の蓄積をしてきたが、グローバル経済の変化で2002年頃から、逆に、毎年、20兆円のカネが外に流れ出し始めた。
私:日本の一人当たりGDP(国内総生産)は1993年に世界一。
2000年6位。
2006年には18位。
A氏:今度の自民党内の総裁戦では自民党候補は全員、中福祉中負担だと言う。
財源は民主党と同じで、消費税はあげず、官僚の無駄遣いから捻出するという。
グローバル経済の悪化が背景にあるからだね。
私:一方で、水野氏や榊原氏の提言にあるように、グローバル経済の拡大で敗戦以来、初めて日本は大転回のときに来ているが、その具体策は見えない。
原因があって、格差が拡大する。
だから、深い原因を知らないと、格差解消の手が打てない。
しかし、原因は手強く複雑だから、簡単に手は打てない、というところか。
行くところまで行くのかね。