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私:10月が近づいたが、このところ日本の科学者によるノーベル賞受賞が相次いでいて、期待が高まるが、このノーベル賞を受賞した業績の多くは若手時代のもの。
では、今の日本の若手の「科学力」はどうか。
現在の日本の「科学力」は「著しく低下している」という認識が、国内外に広がっているのも事実で、国は6月、「科学技術白書」で正面から危機感を表明。
ノーベル物理学賞を2015年に受賞した梶田隆章・東京大宇宙研究所長は、日本の「科学力」の現状について「影響力の大きい重要な論文の数が減っているのは、深刻な問題だ」という。
他の論文に引用された回数が各分野で上位10%に入る、影響力のある日本の論文数は、03~05年の平均でみると、自然科学や人文科学を含めてその数が約4600本にのぼり、世界4位。
ところが、10年後の13~15年は平均で約4200本へと減少し、中国、豪州、カナダにも抜かれ、9位に後退。
論文数の全体も、日本は03~05年の平均約6万8千本から15年の約6万2千本へと減少。
一方、同じ期間に中国の論文数は5倍増、米国も2割増えており、主要国で減少したのは日本だけ。
A氏:何が日本の研究力の低下を招いたのかというと、梶田氏はその原因として、1.「1.研究者の数」、「2.研究時間」、そして「3.研究費」の三つの要素を挙げる。
まず、「1.研究者の数」。
特に研究の主力を担う若手研究者は、助教などの正規ポストが減り、非正規のポストで働く人が増え、若手を競わせる国の政策の結果だが、任期に縛られ、自分の判断で自由に研究できる人が減ったことを意味する。
博士課程に入学する学生は03年度の約1万8千人から、17年度は約1万5千人に減少し、若手研究者の不安定な生活を見て、学生らが研究者としての将来に不安を抱いた結果とみられる。
「2.研究時間」については、大学の研究者が研究に割ける時間は02年は年に1300時間だったが、13年には900時間に減少。
職務時間に占める研究時間の割合は47%から35%に低下し、代わりに、授業や実験指導などの教育や、学外での講演などの社会貢献活動が大幅に増加。
文科省の意識調査でも「人が減り、大学運営に関する1人当たりの業務の負担が増えた」といった回答が寄せられ、雑務に追われ、研究のための時間を捻出できないという、そんな研究者像が浮かぶ。
私:「3.研究費」については、1995年に「科学技術基本法」が施行されて以来、国は日本の将来を科学技術に託す「科学技術創造立国」を掲げていて、5年ごとに「科学技術基本計画」を作り、「5年で26兆円」といった数値目標も立てて手厚く予算をつけてきた。
しかし、他国の科学技術への投資額の伸びは、日本を上回り、中国の予算は16年間で13倍以上に急増し、米国や韓国の上昇ペースも日本を上回る。
国の主な予算の配分先である大学部門の科学技術予算でみると、日本はかつて米国に次ぐ2位だったが、近年は中国とドイツに抜かれて4位に後退。
日本の研究力の今後を大きく左右するのは、論文数の4分の3を生み出している大学部門で、中でも、国は国立大学の改革を本丸ととらえている。
大学の規模に応じて分配され、人件費や自由な研究に使われる「運営交付金」を、国は減らし続けてきて、この数年、削減は止まったが、大学改革の進み具合に応じて配分額を増減させる方式を導入し、来年度以降、大学間の競争をさらに強める。
英科学誌ネイチャーは昨年、日本の科学研究の実力について特集を組み、日本の「科学力」低迷の原因について、「運営交付金」が削減されて人件費が減り、若手研究者は任期なしの安定した職を得る機会が少ないことなどを挙げた。
ノーベル賞を受賞した業績の多くは若手時代のものだけに、受賞の先細りを予想させる。
梶田氏は、「『運営交付金』の削減はもともと、大学の『贅肉』をそぎ落とす目的だったが、いまは筋肉をそぎ落とす段階に来ている」という。
安倍首相のいう「新しい日本」は、筋肉の少ない「科学力」の日本なのか。
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Last updated
2018.09.26 16:25:15
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