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カテゴリ:映画
何とも爽快な映画だった。
予告編を観て「おもしろそうだ」とは思っていたが、予想をはるかに超えるおもしろさだった。何かあっても、この映画に描かれている田中哲朗氏や彼の家族や友人たちのことを思い出して元気になれそうだ。 蠍座の企画「闘う男たちのドキュメンタリー」(11月29日~12月12日)では3本の映画が上映される。その一本目、オーストラリア映画「田中さんはラジオ体操をしない」を観てきた。 「田中さん」は、会社への忠誠心を示すために強制されるラジオ体操をたったひとりで拒否し、嫌がらせの異動命令も拒否したために大手電気会社を解雇された人。以来、毎朝、会社の門前に立ち、抗議活動を行っている。その25年に及ぶ闘いをインターネットで知ったオーストラリアの女性監督が作った75分のドキュメンタリーである。 カウボーイハットにサングラス、ギターといういでたちで毎朝30分、抗議の演説をしたり歌を歌ったりギターを弾いたりする、その姿に悲壮感はなく、何ともユーモラス。そして「自分の人生を生きている」人間だけが持つ力と光を感じる。彼の姿を見て見ぬふりをしていく「社員」たちが何とも哀れな、プライドを捨てたちっぽけな存在に見える。 大事なのはこのことである。自分の人生といえる人生を送っているかどうか。長いものには巻かれろとばかり判断停止のまま生きていないか。たとえば橋本徹のように、批判に対して論点をすりかえることしか行わない自己欺瞞に陥っていないか。 自宅で学習塾やギター教室を開きながらの25年の闘いは、家族をも成長させ、強い絆を生んでいるが、落ち着いた知性と開かれた心を持つ「田中さん」のブロークンな英語を操りジョークをも多発するその魅力的なキャラクターは強烈な印象となって心に残る。 一方、ドキュメンタリーとして観るなら、会社側の非人間的な労働者管理、つまり「会社ファシズム」はあまり描かれていず弱い。大企業における社内いじめや差別は、被差別者が会社に乗り込み自爆テロを起こしても不思議ではないほど酷薄なものだ。だがマリー監督は田中哲朗のパフォーマンスとキャラクターに重点を置くことで、こういう知的で誠実でユーモアのある人間を排除する会社の非人間性を浮き彫りにしたかったのだろう。 ひとつ心に残ったのは、仏教にも造詣が深いらしい田中氏が言った菩薩道という言葉。自分の闘争が多くの人を救う利他的な行動だと思っているからこそ長期間、闘い続けてこられたのだと思う。 もうひとつ印象的なのは「勝てないことは負けではない」という言葉。こんな単純なことがわからずに、「闘争」から脱落し自分自身との闘いからも逃避した人間の何と多いことか。 彼を「反骨精神の持ち主」というのは間違いではないが、必ずしも正しくない。正しいことを正しいと言うのはあたりまえのことであり反骨精神に由来しないからだ。田中氏はただ卑怯者ではなく臆病者ではないだけだが、異常な社会ではそれを「反骨精神の持ち主」と呼ぶ。 彼が解雇された29日には、毎月、終日闘争を行っているらしい。京王線高尾駅からほど近いその会社の門前闘争へのインヴィテーションでこの映画は終わる。この時期に上京する機会があれば、ぜひ参加して「田中さん」と交流してみたいと思う人は少なくないだろう。 東京へ行く楽しみがまたひとつ増えた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
December 5, 2011 02:41:28 PM
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