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カテゴリ:映画
こんな現代美術家、それもすごい人がいるなんて・・・観たあとしばらくは興奮を抑えることができなかった。淡々としたドキュメンタリー映画、しかも杉本博司はどちらかというと寡黙な人。しかし、ラディカルな仕事をする人というのはこうなのかと、感嘆を禁じ得なかった。
杉本博司は1948年生まれの現代美術家。ニューヨークと日本に拠点を構えて国際的に創作活動を行っている。その活動の現場と日常に長期にわたって密着したドキュメンタリー。 杉本博司のすごさはどこにあるのか。それは、この映画の「はじまりの記憶」というタイトルにヒントがあると思う。彼の芸術家としての出発は写真らしいが、『海景』のシリーズは「人類が最初に見た風景は海ではなかったか」「人類が最初に海を見たとき、海と対峙するものとして自分という意識、自我が生まれたのではないか」という問題意識から作られている。この視点、物事の始原にさかのぼることを創作の原理にしている点で、現代音楽の高橋悠治やジョン・ケージといった作曲家の仕事と通底するものを感じる。 建築では香川県の神社の再生が興味深かった。古代を想像力で再構築する、といった要約が陳腐に思えるほどの迫力ある思考による作品。感覚的なデザインではなく、無秩序に秩序を構築するのはこういうことかと目をひらかれる。 コンセプチュアル・アーティストのひとり、という紹介は間違ってはいないが、そう説明すると浅くなる。そのコンセプトが、物事のはじまりに、意識下の意識に、意識以前の意識にさかのぼろうという強い意志に貫かれている。 早朝に規則正しく事務所に出勤し、昼食は自分で作ったお弁当を食べるといった日常そのものもすごい。小さな成功に安住しない表現への意欲に、その人柄が淡々としているだけに圧倒された。 彼の仕事の前ではイサム・ノグチが小さく見える。 こういう仕事をする人は、クセナキスやケージや高橋悠治がそうであるように、左翼思想をバックボーンに持っている人にちがいない、と思って調べたら、立教大でべ平連をやっていた人らしい。古美術商をやっていた時期もあり、いまでもいろいろ収集しているらしいが、その中に太平洋戦争で死んだ兵士が残した日記などがあった。いつか、その収集活動が作品化して日の目を見ることがあるかもしれない。 最近も東京の原美術館で個展があったようだが、行けなくて残念だ。 映画の最後で、彼が移住することに決めているという神奈川のある場所が撮される。そこで自給自足の生活をすることでもかんがえているのだろうか。構想では、複合的な美術館のようなものも作られるようで、そこは現代美術の聖地のひとつになるにちがいない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
July 6, 2012 07:19:28 AM
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