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カテゴリ:映画
この映画は制作過程が面白い。というか、こういう制作過程でなければ作ることのできなかった、非常にユニークな映画になっている。
学生の武井彩乃という人が自分の祖父母をうつした5年分の録画テープを、友人の映画作家・横山善太が72分のドキュメンタリー映画に編集したものらしい。 ハンディタイプのビデオカメラで撮った私的な録画。それが編集でここまで「見せる」映画になるというのが驚きあり、身内の人間ならではの優しい映像にどこか救われる。 映画は普通の老夫婦の日常を撮した前半と、祖母が認知症を発症してからの後半からなっている。つまり、前半で「幸せな時間」が、後半では「不幸せな時間」が撮されている。 認知症になる前となった後の変化は、身近に体験したことのない人はかなり衝撃的だろう。メッセージ性のある映画ではなく、淡々とした日常を撮しただけなので、まだらぼけの様相を呈しているこの祖母の姿に、未来の自分を重ねる人は多いかもしれないし、醜いものは観たくないと目をそむける人もいるかもしれない。 だがこういう映画は、自分の身や家族にひきつけて観るべきだ。「幸せな時間」がいかに大切か、それは逆に「不幸せな時間」を経てからでないと決してわからないからだ。 そして「不幸せな時間」から「幸せな時間」に戻ることはもうできない。 老夫婦の妻が認知症になり、夫ががんで先に死んでしまう。ありふれた話であり、そうした話はよく聞く。しかし、映像で観ると、50年におよぶ夫婦の生活、ひとりの人生の重みに慄然としてしまう。辛い映画だが、観てよかったというか、気が進まないのに観るという決断をしたのは正しかった。 人はいつか死ぬ。人間はそれをつかの間忘れてのんきに生きている。しかしその冷厳な事実を思い出させてくれるのが芸術の力だと思うが、ドキュメンタリー映像のそのストレートな力には粛然となる。 いまビデオカメラは所有していないが、こういう使い方もあるのかと思うと、また手に入れてみようという気になる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
July 27, 2012 03:21:46 PM
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