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カテゴリ:映画
黒澤明やトリュフォーの例をあげるまでもなく、映画作家はあんがいピークがはやくおとずれる。音楽家や美術家とちがって、晩年には創作力の衰えてしまう人が多い。
しかし、ウディ・アレンはそうではないようだ。2011年、75歳のアレンが作った41作目の作品「ミッドナイト・イン・パリ」は、アレンの最高傑作かどうかはともかく、知的な会話と高い文化への憧憬をかきたてられるファンタスティックな魅力に満ちた一本であり、つかの間、1920年代やベル・エポックの時代のパリにタイムスリップできる。画面からパリ、それも古きよきパリが匂いたってくるようで、劇中人物のようにワインを飲んでいるわけでもないのに酔わせられる。 成功した脚本家の地位を捨てて小説家になりたいと思っているアメリカ人の男(オーウェン・ウィルソン)が婚約者と一緒にパリに来る。彼女は観光に余念がなく、雨のパリなど無意味だと言い放つ。美人でセクシーだが、文化に関心のない俗物で、彼のパリに住み小説家になりたいという夢を理解しない。 彼はパリで道に迷い、気がつくと20年代、黄金時代のパリへ。ヘミングウェイ、ピカソ、ガートルド・スタイン、フィッツジェラルド、サルバドール・ダリ、コール・ポーター、ルイス・ブニュエルらと出会う。ピカソの愛人とも知り合う。彼女とはベル・エポックの時代にタイムスリップしてロートレックやゴーギャンと出会う。 タイムスリップするのは深夜だけで、昼間は現代のパリ。散歩の途中、彼はコール・ポーターのレコードをかけている骨董品店を見つけ、店員の女性と話すようになる。 彼にとってヒーローであり神であった芸術家たちにどれくらい関心があるかで、この映画をおもしろいと思うかどうかは大きく変わってくる。何がいいのかさっぱりわからないという人たちは、戦後教養主義が崩壊したいまの時代、多数派なのかもしれない。 しかし、これらの芸術家たちのホンモノに出会えたらどんなにエキサイティングかと思う人にとっては、つかの間、いい夢を見せられた気持ちになる。 もちろんラブコメディとしてもきちんと作られているので、お金持ちだけど文化度が低く品のない女性ではなく、貧しくても文化度の高い女性を選ぶストーリー展開にはあたたかな気持ちと共に共感するし、「隣の芝生は青く見える」とベル・エポックの時代に留まることを拒否し、その時代に残ることを選んだピカソの愛人とも別れるという流れには、ウディ・アレン特有のシニカルな批評性・作家性をも感じさせてなかなかだ。 会話がこの上なく知的で洒落ている。特にヘミングウェイの言葉などはすべて書きとめておきたいという衝動にかられる。放映されることがあるなら録画して繰り返し観たい映画だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
March 15, 2013 01:43:22 PM
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