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カテゴリ:読書
幸運の25セント硬貨スティーヴン・キング(新潮文庫) 映画の原作者としては「キャリー」以来おなじみなのに今まで読んだことのない作家スティーヴン・キングの短編集。 翻訳物があまり得意でないこと、映画になったものを除くと代表作がよくわからないことなどが原因でキングの作品を何となく避けていたのだけど、先日映画「ミスト」を観たことで興味が強くなった。 と言いながら短編集から入るところにやや思い切りの悪さを感じるのだけど(他人事か?) この短編集はもともと14編が収められたキングの第4短編集で、新潮文庫では「第四解剖室」との分冊になっている。ただしそのうちの1編は日本では単行本として出版されてるため、権利者の意向で両短編集には収められていない、とのこと。 本書に収められているのは7編 「なにもかもが究極的」 ある特殊な能力を持った主人公が、謎の組織に雇われる話。 「L.Tのペットに関する御高説」 妻が失踪あるいは殺害された友人L.Tは、妻が自分の元から去った経緯を話すのが好きで、その話はペットを飼うことに関する教訓で締められるという話。 「道路ウィルスは北にむかう」 ガレージセールで売られていた絵にひきつけられて買った作家。しかしその絵の周囲では次々に凄惨な事件が起きるという話。 「ゴーサム・カフェで昼食を」 離婚のための話し合いでゴーサム・カフェに行った主人公。奇妙な叫び声をあげる給仕頭の様子がしだいに高じて、という話。 「例のあの感覚、フランス語でしか言えないあの感覚」 結婚25年を迎えた夫婦が旅行に出かける。その道中、妻は何度もデジャヴを感じる。 「一四〇八号室」 心霊現象を信じないくせに、その手の体験談を売り物にしている作家が、12人の自殺者を出した部屋の取材に行く。何とか止めようとする支配人を振り切って部屋に入ったが、という話 「幸運の25セント硬貨」 離婚して女手ひとつで二人の子どもを養っているメイド。ある日ベッドにあった封筒には25セント硬貨のチップと「きみはついてるな」という手紙が入っていたという話。 観念なのか事実なのか、油断しているとわけがわからなくなりそうな展開にひきつけられる。事実と思っていたことが簡単にひっくり返される「L.Tのペットに関する御高説」「例のあの感覚、フランス語でしか言えないあの感覚」「幸運の25セント硬貨」は特にその騙される感覚が気持ち良い。 これでもか!と次々に異常事態が起きる「道路ウィルスは北にむかう」「ゴーサム・カフェで昼食を」「一四〇八号室」はとても怖い。 謎がしだいに明らかになっていく展開にひきつけられる「なにもかもが究極的」は結末のひねりがなかなか良い。 それにしてもこのタイトルの訳し方は何とかならないのかね。「なにもかもが究極的」の原題は"Everything's Eventual"というもので、どう訳して良いのかわからないのだけど、「究極的」なんてこんな風に使う言葉ではないでしょう。それとも、原題そのものが語感的に違和感があるものなのだろうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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