映画・小説　趣味のお話

２００９年３月公開
監督：ザック・スナイダー
製作費：１億３千万ドル


　アラン・ムーア原作の、同名のグラフィックノベル（大人向けのアメコミ）の実写映画化作品。
　監督は、『３００（スリーハンドレッド）』のザック・スナイダー。
　Ｒ‐１５指定。


［簡単なあらすじ］
　１９８５年１０月、ひとりの男がビルから投げ落とされ、殺害された。
　単身事件の調査を行っていたロールシャッハは、殺された男がコメディアンを名乗るスーパーヒーロー、エドワード・ブレイクだったことを知り、驚愕する。
　ロールシャッハもまた、コメディアンと共に、かつて存在したヒーローチーム、「ウォッチメン」の一員だったのである。

　コメディアンの死が、“ヒーロー狩り”によるものと結論を出したロールシャッハは、「ウォッチメン」の元メンバーたちに警告を発して回る。
　はじめは、それぞれが抱えている事情のために、なかなか聞き入れてもらえずにいたが、オジマンディアスが暗殺者に命を狙われるという事件が発生したことで、にわかに陰謀説が真実味を帯び始める。
　果たして、コメディアンを殺害した犯人は、一体何者なのか。
　そして、その理由とは――



　スーパーヒーローたちが実在する、地球とよく似た世界を舞台とした、彼らの真実の姿と苦悩をシリアスに描いた、ミステリ・サスペンス映画です。
　他のアメコミ映画とは一線を画す、かなり大人向けの内容となっているので、観る時はご注意を。

　１９８７年に刊行され、今でも多くのファンがいるという原作を描いたのは、人気コミック原作者のアラン・ムーア。
　彼の作品は他に、『フロム・ヘル』『リーグ・オブ・レジェンド／時空を超えた戦い』『Ｖフォー・ヴェンデッタ』などが映画化されています。





　舞台となるのは、１９８５年のアメリカ合衆国。
　超人的な体力を誇る、スーパーヒーローが実在する世界。

　かつて彼らは、ヒーローチームを結成し、日夜悪と戦い続けていた。
　ところが、人間を越えた力を持つ彼らに監視されることを恐れた市民は、次第にヒーローに反感を募らせていき、ついに１９７７年ニクソン大統領の元、覆面着用者による自警活動を禁ずる“キーン条例”が施行され、ヒーローたちは引退を余儀なくされてしまう。

　ヒーローという仮面を捨て、一般人として生活していた彼らを再び襲う悪夢、“ヒーロー狩り”。
　その目的と犯人の究明こそがこの映画のメインとなる部分で、アクション重視の他のアメコミ映画とは、かなり毛色の違う異色の作品といえます。



　登場人物であるヒーローたちも、スーパーマンやバットマンなど、既存の有名スーパーヒーローのメタファーで、どこかで聞いたことがあるようなものばかり。
　また、ミステリ要素が強く、やや難解なストーリーですが、１６３分という長尺の中で無理なく説明されているので、原作を知らなくても大丈夫。




　物語の狂言回し的な役割りをもつキャラ、ロールシャッハ。
　マスクに描かれたロールシャッハテストの模様が、ウニウニと絶えず動いていて格好いいです。
　性格同様、声もやたら渋いのですが、意外にも筆まめ。
　彼の正体も重要なキーになるのかと思いきや、中盤あっさり明かされてビックリ。




　元「ウォッチメン」メンバー、バットマンそっくりの「ナイトオウル」と、正統派ヒロイン「シルク・スペクター」（どちらも二代目）。
　ヒーローの悩みを体現したかのようなふたりは、常識人だけに色々と不幸な目に。
　なぜか、妙に濃厚なセックスシーンが（笑うところ？）。




　一足先にヒーローを引退し、自ら正体を公表していた、「オジマンディアス」ことエイドリアン・ヴェイト。
　「世界で最も賢い男」と呼ばれる知力の上に、体力、財力も並外れており、落ちぶれ気味の他のメンバーに比べて幸せそう。
　しかし、彼の思惑が、重大な結果を呼ぶことに……。




　この世界で唯一の本物の超人、「Ｄｒ．マンハッタン」。
　核実験に巻き込まれたことで、あらゆる原子を操作できる能力をもち、巨大化・分身・瞬間移動・未来予知など、考えられることは全てできるという神のような存在に。
　ただし、あまりに超越しすぎたため、最近では人間性や羞恥心が希薄になっている模様。
　時計好き。

　近くにいると、発ガンリスクが高まるという都市伝説が（笑）



　というような、非常に濃いキャラクターたちが、米ソの核戦争があやぶまれる緊張状態を背景に、ヒーロー狩りの謎に迫るという、大人向けのミステリ・サスペンス映画です。
　スローモーションを効果的に使用した、メリハリのあるアクションシーンもなかなかのもの。
　（やられ役のチンピラ集団が、なぜかチョンマゲ頭に「侍」の漢字を書いた服を着ていたのが納得いきませんが（笑））

　終盤明かされる、まさかの犯人の正体には驚愕すること必至。
　さらに、最後の最後には、それまでのすべてを覆しかねないアイテムまで登場するなど、アラン・ムーアの、練りに練ったストーリーには唸らずにはいられませんでした。



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アラン・ムーア原作作品の記事はコチラ

⇒「リーグ・オブ・レジェンド／時空を超えた戦い」

⇒「Ｖフォー・ヴェンデッタ」


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