今日読了。下北沢を舞台に大学生の沙希と劇団を主宰する永田との7年間の生活を描いている。フェリーニの映画『道』のザンパノとジェルソミーナとは設定は違うところも多いけれど、沙希の純粋さと笑顔に救われる永田の関係が似ているなと感じた。そこでネット検索して「淀川長冶フェリーニの『道』を語る」という動画を発見した。淀川長治さんは『道』の解説で「男のわがまま 女の忠実 それで本当の人間の、男と女のオリジナル」と評していたが、「男のわがまま 女の忠実」が描かれている点でも『道』に似ていると思った。
前作『火花』は本の前半は火花がスパークするように輝いていたが後半はあまり良いと感じなかった。『劇場』は後半のところはちょっとはしょり読みしてしまったが全体としては飽きずに読めた。又吉さんの作品は夏目漱石や庄司薫さんと同じで「哲学エッセー風」だと私は思っている。40ページの「暴言吐いても謝ったら良いんやろ?」という問い。72ページの「簡単と複雑の価値が等価なように、劇的なものと平凡な日常も創作の上では対等でなければおかしい」という見解。このような考えさせるテーマがところどころにあるのが私の好みである。
代沢八幡は子どもの頃お祭りで通った神社なので、物語に登場して親しみを覚えた。2020年公開の映画では松岡茉優さんが沙希を演じるが、ピッタリな配役だと思った。松岡茉優さんが「全国の恋する、愛する、はたまた情で離れられなかったり、何かのきっかけを失っているパートナー達が救われる映画になると思います。」(https://www.cinra.net/news/20190716-gekijou)とコメントされている。映画も観たい。