金曜日……国井咲也の満巻全席
●第4席“娯楽”であったものがクリエイタ達の切磋琢磨、限り無き向上心から“芸術”に変化する流れはジャンルを越えてうまれるものだ。しかしこの変化は時に本質そのものを変化させてしまい、大衆から見放されて、いわゆる「マニアのもの」となる場合が多い。歌舞伎しかり、クラッシック音楽しかり。料理もこの例に漏れない。バブル経済の煽りもあり、料理は『芸術』の一環として捉える事が当然のようになった。調理人は腕を磨き、味、見栄えの美を追求する。そうして本来の形を失ってしまうのだ。これが「悪い」といっているのではない。料理そのものは美味になっているのだから、悪かろう筈もない。だが、「生まれた」故に「失った」ものも存在するのだ。『オムライス』これほど“クリエイタ”によって数奇な運命をたどらされた『乙女食』は例を見ない。個人的にはメロンパンより乙女の要素が強いとみている、現在、乙女食の最高峰だ。メロンパンの乙女因子は“まぁるい”“甘い”“淡い色づかい”この3つに代表される。額に入れればまま、『ちゃお』『りぼん』『マーガレット』編集部に編集方針として飾れそうだ、と言えばわかりやすいだろう。では、『オムライス』はどうなのか?“本当は手間がかかる”“丸みを帯びているその身体”“甘さとしょっぱさを同時に有する“わかりやすいメッセージを添えられる利便性”“淡い黄色。しかし、身を切ると、 中は情熱の赤。その色はまた、「血」の赤。”……『りぼん』のメロンパンより明らかに設定年齢が高い。白泉社『花とゆめ』編集方針だといえる。このへんが私の乙女回路を刺激する料理だったのだが、前記したバブル、調理人達のあくなき追求心からその姿は一変してしまう。“半熟卵のオムライス”“デミグラソースのオムライス”などとその姿はより、高級・テクニカル系のニュアンスを強くして、「フライパン一個でつくる」料理ではなくなってしまったのだ!ケチャップでハートマークなど書けない料理になってしまったのだ!……そんな絶望にうちひしがれて約10年。ここへきてようやく『オムライス』が元来の姿を取り戻しつつあるのだ。しかし、これがヌーヴェル・キュイジーヌのような『調理』としての動機からのムーヴメントはなく、あくまで二次元から発信されているのだ!あー、前置き長かった。(ふぅ)本題に入ろう。『ローゼンメイデン』の桜田のり。のりちゃんだ!のりちゃんの料理はすごい!すべてが『乙女』なのだ!食べる人形達が『薔薇乙女』ってくらいだからかもしれないが、ラクロスやっているくらいの体育会系な筈なのに、『プリキュア』の渚ちゃんのような元気ではなく、どこかおとぼけ。しかし海より広く、マリアナ海溝より深いジュン君や“家族”であるドールズ達への愛情からふるまわれる料理の素晴らしさは言葉にできないほどである。『花丸ハンバーグ』などは料理としては単純な部類だが、そのヴィジュアル、ネーミングのセンス!これは料理人にはできない芸当だ。のりちゃんの料理には常に「自分より食べるひと」という感じが見て取れるのだ。おそらく「可愛いお花をのせたら、雛ちゃん喜ぶかも」という発想からの盛り付けであり、すなわち、料理そのもののコンセプトなのだ。そんなのりちゃんがくり出した『オムライス』!単行本6巻の38Pを開いてもらいたい!「ぷりぷりハートのオムライスー」チキンライスを薄焼き卵で包んだ、ベーシック・スタイルのオムライスだが、形もハート型。これが実はすごい。すこしでも料理を自分でやる人間なら、のりちゃんの調理技術がかなりのものだというのがここでわかる。通常のオムライスはいわば長方形。フライバンからそのままスライドさせた形なので、馴れればどうということはない。だがこのハート型というのは厄介だ。ライスの成型は簡単だが、それを包むハート型の卵焼きというのは想像しただけで鉄人・坂井氏のヒゲが白くなってゆく白昼夢を見てしまうほどに難しいのだ。しかもチキンライスの中には隠し玉としてミートボールを入れるという手の込みよう。おそらく、レトルトのままだとソースでライスがベチャベチャになるのでソースをきっちり取り除く手順も踏んでいるはずだ!そのミートボールのソースはお子様に大人気(いや、大人でも好きな人間は多い)なのでもしかしたら卵焼きの上のハートマークはそのソースで描いている可能性も否定できないッ!さらに良く見ると、真紅が食べようとする付け合わせの野菜もハート型に抜いてあるのも注目すべき点だ !ああっ!うまそうっ!雛苺 「キャァァァァァァー」翠星石「ぎょうてんですぅ~」オレ 「桜田センパイっ! ぼくのおよめさんになってーっ!!」真紅 「(ぴしっ!)……調子にのらない事ね、人間」ジュン「(咲也に)お前、誰だっ!」オレ 「今晩は。国井咲也です」ジュン「だから、誰だっ?!」オレ 「……あのとき助けてもらった、くまのぬいぐるみです」ジュン「え?」真紅 「(ジュンにビンタ)嘘にきまっているでしょう。ジュン」ジュン「いててて……嘘?」オレ 「う、嘘じゃないクマ。ほんとうだクマ」真紅 (咲也にツインテール、ぴしっ!)オレ 「あうっ!」真紅 「語尾をかえても無駄よ。いい加減にしなさい、人間」のり 「ほらほら、コントなんかしてるから せっかくのオムライス、冷めちゃったわよ~」真紅 「ガーン」(口が三角になる)と大騒ぎになるのは当然。(一部妄想脚本)きっと「びっくりするくらい喜ぶ料理をつくろう」というのがのりちゃんなのだ!否。のりちゃんだけじゃない!料理を美味しくするのは作る人間だけではないのだ。「心をこめて作った人を想い、心をこめて食べる」 それが人間。……これを私は二次元ののりちゃんと、 二次元の中でさらに人形である真紅達に教わるのである。そんな素晴らしい作品『ローゼンメイデン』を今回は大々的にピックアップする我々アニメ会のライヴ『中野アニメーション学院』のシリーズ、その第9回目は明日土曜。西武新宿線野方駅下車徒歩約3分、環七ぞいにある野方区民ホールにて開催!集え!オムライス乙女!集え!乙女回路内蔵男子!合い言葉は「アネモネーっ!」(何故?)