バイオエタノール、本格的実現化へ前進
日経新聞によれば、地球環境産業技術研究機構(RITE)と本田技術研究所は、人類や家畜の食糧である、サトウキビやトウモロコシから得られるデンプンからのみならす、それらの原料にともなって生産される、木くずや稲ワラ、荒れ地で育つ雑草などに含まれる繊維の全成分を短時間で遺伝子を改変した微生物を使ってエタノールに変える技術を開発したという。これまで、バイオ成分の一部しか利用できなかた従来技術の欠点を解消し、エタノールの生産効率が2-3倍になるという。バイオエタノールを農産物の食糧から獲得していたが、これからは、土や家庭内に普通に生息する「コリネ菌」の遺伝子を組み換えて、セルロースなど、植物繊維を分解してできる全ての糖をえさにエタノールを作る様に改良したという。植物繊維を分解すると、グルコース(ブドウ菌)やキシロースなど様々な種類の糖が生成するが、従来の微生物は、好みの糖だけを先に食べて、気に入らない糖は食べ残したり、後回しにしたりしていて、糖を食べ尽くすのに時間がかかったりして生産効率が上がらず、コストがかさむ大きな要因となっていたという。遺伝子を改変したコリネ菌は、全ての糖をえさとして好んで食べる他、培養器の酸素濃度を下げれば、グルコースやキシロースも同時に食べ尽くすことがわかった。結果として、エタノールの生産コストが半分から3分の1になり、雑草や木くずなどからつくるバイオエタノールの値段を大幅に下げられそうといい、燃料のバイオエタノール化の値段を大幅に下げられるという。これにより、ガソリン代替燃料として、食糧用の流用を回避することができ、米国や、日本政府がうちだしている、ガソリン消費量の一部を代替するという政策も実現する可能性が出てくる。現在、世界のバイオエタノール生産は、ブラジルと米国が中心であるが、原料に、サトウキビやトウモロコシから得られるデンプンや糖を使っている。今後バイオエタノールは、食糧にならなかった、木くずや雑草、稲ワラや麦わらなどが主流になることが確実であり、このブログでも提唱してきたことである。あとは、植物生産の血液である「淡水資源」の確保が、いよいよ重要になってくることになろう。また、今回の遺伝子組み換え微生物の発見で、商品先物市場でのサトウキビやトウモロコシの高騰する価格をストップさせうる技術確保であると言えよう。これに関連して、以下のような記事をこのブログと安倍首相官邸の目安箱に書いていたのを思い出した。Mar 20, 2007バイオ燃料需要、すでに、農産物価格にしわよせ [ 建築・都市・建築家 ] 日経新聞によれば、エタノールをはじめとするバイオ燃料の世界需要が急増しており、原料確保などの課題を残したまま、数値目標が先行したために、先物市場などで、農産物価格にしわよせがきているという。バイオ燃料の原料は、人間や家畜の食糧でもある穀物資源等が大半をしめるため、食糧危機がおきる国も現れ、米国やブラジルでも、原料の需要が逼迫している。中国が穀物等の輸出国から輸入国にかわるのも時間の問題とされている。そもそも、地球レベルの資源=エネルギー=環境問題は、地球上の人類の人口問題であるとも言え、そのひとりひとりの人口が、18世紀から19世紀以降に、「心が満たされれば幸せ」であるとする「心的福祉」から「物がみたされれば幸せ」であるとする「物的福祉」の時代に、科学革命、産業革命とともに、移行して、爆発的に、化石燃料資源をはじめとする、物質と燃料の消費をふやしたことによる。地球が提供可能な、化石燃料に限度があるため、バイオ燃料への切り替えをはかろうとしたが、その原料となる農業資源にも限度があるのみならず、バイオ燃料を生み出す効率を上げる技術が未熟であるため、商品先物取引市場の不安感を引き起こしていると考えられる。温暖化問題の指標がCO2 である現在、化石燃料をバイオ燃料におきかえようとするのは自然なことであるが、長期的には、緑色植物の光合成の結果をバイオ燃料にするのではなく、緑色植物の光合成のシステムを解読して、バイオ燃料を化学合成するていどの技術開発が必要である。バイオ系の燃料をえるために、いずれにしても必要なのは、淡水資源であり、農地や人工光合成のための工場が確保されたとしても、水がなければ、バイオ燃料は得られないのである。日本政府は、この状況を先読みして、淡水資源の獲得技術を高度化しておく必要があろう。海水の淡水化技術だけではなく、砂漠地帯の灌漑技術や、人工降雨技術などを、実用化する必要があろう。事態は、急を要する状況であり、各方面の努力により自然科学的な技術開発や、農地や原料の確保や、淡水資源の確保を急ぐ必要がある。Mar 16, 2007植物由来のエタノールから水素製造と、その周辺 [ 建築・都市・建築家 ] 日経新聞によれば、東芝は、高純度水素を、植物から作る「バイオエタノール」から製造する技術の原理を、天然ガスから作る従来の製法と同程度のコストで開発できたという。これにより、化石燃料に依存しない水素製造が可能になるという。エタノールを化学反応させて水素を作ると、CO2が発生するが、東芝は触媒と、独自開発した「リチウム複合酸化物」を利用したCO2吸収剤を組み合わせる手法を開発し、従来の方法ではCO2が含まれ純度が65%程度だったものを、99.5%以上の高純度の水素を合成することに成功したという。開発された水素は、水素と酸素を反応させて発電する燃料電池車や、水素を燃料にする水素自動車に利用されるみこみという。バイオエタノールは太陽エネルギー(負のエントロピー)に対して開いたシステムであり、CO2を吸収する植物由来であることから、資源=エネルギー=環境問題に対し優しい燃料であることは事実である。従って、バイオエタノール由来の水素製造技術は、相対的には、環境に優しい技術である。しかしながら、自動車など、本来の人間や、地球生命の生態系の持続に対し、本質的に必要ではないものが、地球全体での人口増加にも加速され、新しい技術でますます盛んに加速度的に利用されるようになるのでは、せっかくの技術開発も意味のないことになる。自動車用の燃料電池よりは、人類の生活に密着した住宅用燃料電池などに利用される様になり、電力源の分散化と消費地の近接化が実現されることがより望ましいことであろう。しかしながら、バイオエタノール由来と言っても、バイオエタノールは農業製品であり、人類や家畜の食糧資源でもあるものを燃料に利用しようとするものである。現在においても食糧不足である地球において、今後の発展途上国を中心とする人口増加により、食糧不足はますます進展する見込みである。また、農業をするためには、大量の淡水資源が必要であり、現在、世界各地で、水不足や砂漠化が進行しているというのも事実である。農業により、バイオエタノールを増産するためには、それに見合った淡水資源の増産が必要であり、イオン交換樹脂や灌漑技術の進んでいる日本は、これからのバイオエタノール増産にみあっただけの淡水資源の確保のために、宇宙船地球号への貢献をすべきであろう。an 17, 2007建築廃材で商業生産のバイオエタノール 「ワイン大好き!(19873)」 [ 建築・都市・建築家 ] 日経新聞によれば、バイオエタノール=ジャパンは、2007年1月16日、建築廃木材を使って、ガソリン代替燃料であるバイオエタノールの商用生産を開始した。原料が、安定調達できる建築廃材であり、サトウキビの様に食糧としての需要に影響されない利点があるという。しかし、最も注目すべきは、サトウキビやトウモロコシの糖やデンプンを発酵させてつくるバイオエタノールではないことである。これまで、技術的にむずかしかった、木や草に含まれる糖を発酵させることを特殊な微生物を使い量産化を実現したことである。食糧に使われる糖やデンプンでなく、草や木の光合成による一般的成分を、生態系のバクテリアにより分解して植物系の燃料資源を実現することができることを実証したことである。太陽エネルギーから来る負のエントロピーを直接的に光合成した緑色植物の生成する有機物をこれもまた生態系のバクテリアで分解してバイオエタノールを獲得したこと。そして、太陽エネルギーの負のエントロピーにより駆動される、水と大気の大循環により大気圏外の宇宙に放出しやすい形にバクテリアで加工しているわけである。地球システムにおけるエントロピー収支の実現が産業革命以降の工業活動とはひと味ちがう、生態系を利用したそれ以前の江戸時代などの自然エネルギー利用技術に近い形で実現することができることに意義があるであろう。