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Mar 15, 2007
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カテゴリ:小説 上杉景勝
  朝鮮の役では太閤殿下の寵をえ、ことごとに我等に難癖をつけたと三成を

腹の底から憎んだ。それは一種の嫉妬であったが、彼等は気づかずにいる。

  太閤や北政所(きたのまんどころ)を親のように慕っていた彼等は、父親を

三成に奪われたと感じ、憎悪の炎を燃やしていた。

  天下に恐れられた荒武者が、子供のように拗(す)ねているのだ。

  北政所も豊臣家から心が離れていた、余りにも淀君と秀頼に心を配る三成

一派を心良くは思っていなかった。その反動が武断派の武将たちにむけらた。

  彼女は昔のように彼等に慈愛を注いだ。その心理を家康が巧に衝き、彼等

を己の側に取り込んだのだ。家康の謀略の才がまさった結果であった。

  直江山城守兼続は上杉屋敷にとどまり、引き連れてきた隠密集団に、徳川

家の内情を探らせていた。そんな時期に三成から招待の知らせをうけた。

  兼続は白皙長身の体躯で定められた屋敷に向かっていた。

  伏見郊外の小奇麗な屋敷であった、風流な門を潜りぬけ案内(あない)を講う

た。 小袖姿の可憐な乙女が顔をみせ、「山城守さま」 と小首をかたむけた。

「左様」  「ご案内申し上げます」 庭の樹木の間から日差しが差し込んでいる。

  部屋には二人の人物が待ち受けていた、一人は石田三成で、いま一人は顔

面を白布で覆った人物であった。

「これは大谷刑部(ぎょうぶ)殿か、お久しうござる」

  彼は越前敦賀五万石の城主で、三十歳ころから癩病を病み、顔面が崩れ両

眼を失っていた。故太閤は刑部の武将としての才能を高く評価していた。そうし

た人物である。  「山城守殿も息災でなにより」 

 刑部が低いしわがれ声を発した。

  三成は年齢とともに才気走った顔つきとなっていた、人々にとり、それが豊臣

政権の中枢の筆頭としての貫禄、威厳と受ける者もいるが、逆に小面憎いと反

感をもつ者もいた。  「さあ、座ってくだされ」  三成が座をしめした。

  兼続がふわりと座し、「いかがなされた」 と三成に訊ねた。

  童顔の三成が嬉しそうな笑みを浮かべている。

「荒武者どもが、お命を狙ってござるぞ」

「流石は、直江山城守殿じゃ、もうお耳に達してござるか」

「ご貴殿らしくない策にござるな」  「左近の独り相撲にござる」

「左様か」  「それがしでは内府に勝てぬと申しましてな」

  三成が、からりと云った。

「島左近は恐ろしい男にござるな。もし内府の暗殺に成功すれば、近隣の諸侯に

檄をとばせば、伏見の徳川勢など殲滅できましょうな」

「山城守殿は左近の計画に同意なされるか」  三成が気色ばんだ。

「我が主の景勝も、石田殿と同様な気象の持ち主。左近の策には乗りますまい」

  兼続がほかごとを云った。

「佐吉、内府暗殺の噂は伏見の者は皆知っておる、用心することじゃ」

「紀之助、わしは負けぬ」  三成が顔をひきしめ甲高い声で断じた。

  紀之助とは、大谷刑部の幼名である。この頃、大谷刑部は病がすすみ顔を

白布で覆うようになっていた。その白布が三成に向けられた。

「天下の名士、島左近が合戦では勝てぬとよんだ。そこが分らぬのが、お主の

欠点じゃ」  ずばりと刑部が言った。

「左近の申すことは分る。だが、それがしには勝算がござる」
  
  三成が頬を赤くさせ答えた。

「考えてみよ、お主には人を引き付ける武功があるか」

  刑部の言葉に三成が声を失った。三成は豊臣政権の中枢にいながら、華々

しい戦場での活躍に欠けている。彼の目前に居る大谷刑部や、直江山城守に

は戦塵にあっての数々の武功がある。

  この二人の前では、加藤清正、福島正則でも一目おく筈である。それだけの

実績と凄味を兼ね備えている。

「だが、このまま見過ごす訳にはいかぬ、狸爺に天下が簒奪される」

「それを、お主が阻止すると申すか」  刑部が、しわがれ声で訊ねた。

「わしが遣らずば、誰が豊臣家を守る」  三成が昂然と胸をはった。

  流石じゃ、たかだか佐和山城十九万石の小名が、二百五十万石の大大名の

徳川家康を相手に戦いを挑むとは、故太閤殿下が信頼したとおりの男じゃ。

直江山城守は三成の意気込みを買った。

小説上杉景勝(63)





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Last updated  Mar 15, 2007 09:48:14 AM
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