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長編時代小説コーナ

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龍5777

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Jun 4, 2007
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カテゴリ:暗闘
  羅紗(らしゃ)の軍服姿の少年もいる、上着だけ洋服で義経袴(よしつねはか

ま)の少年もいるが、いずれも紅顔を輝かせ大刀を背にしヤーゲル銃を担いでい

る。「猛訓練の成果をみせてやる」  二番隊の篠田儀三郎が昂然と胸をはる。

「白虎隊士中二番隊出陣いたす。殿に敬礼」  日向内記の凛とした声が響き、

少年たちは目を輝かせ容保に敬礼した。容保もフランス式の答礼を返し、白虎

隊士を見廻した。(酷い、この戦闘で彼等の何人が生還できる。藩内の俊才で

あると同時に日本の逸材でもある、許せ)容保は一人一人の顔を確りと見つめ

た。 「なおれ」 日向隊長の声で少年たちは姿勢をただした。

「これより戸ノ口原に向かう」  日向内記が騎乗、敬礼し本陣を踏み出した。

白虎隊士も二列縦隊で泥濘(ぬかるみ)の道を整然と出撃して行く。

  再び雨足が強まった。松平容保は微動だにせず、少年たちの姿が見えなく

なるまで冷たい雨に打たれ見送っていた。彼の頬に涙が滴っていた。

「殿、お風邪を召しますぞ」  側近一同が心配している。

「風邪なんぞ恐れぬ、見よ。白隊隊士の勇姿を」 側近の者が目尻を拭ってい

る。彼等にも容保の心境が痛いほどに判るのだ。

  一方の政府軍は十六橋確保のために母成峠を越えて急行していた。この隊

は川村純義(すみよし)の率いる薩摩四番隊の精鋭であった。母成峠の戦闘に遅

れた川村は、会津の防衛線の要が十六橋とみて兵を叱咤激励し急行していた。

  あの石橋を破壊されたら、戦局は膠着する。強風と氷雨をついて薩摩隊が

十六橋の東岸に辿り着いた。約五十間(九十メートル)の石橋には、予想にたが

わず、会津藩兵が橋梁を破壊する様子が見られた。

「斥候を出せ、敵情を探るのじゃ」  川村純義は慎重であった。

  目前には会津藩兵が黙々と破壊活動をしている。彼等は、この悪天候のな

か政府軍が来襲するとは予想だにしていない、油断であった。

  斥候がもどり、東岸に一兵も警戒兵の姿がないと知るや、川村は直ちに兵を

進め、橋の手前に兵を散開させ攻撃を命じた。雨音のなかに一斉射撃の銃声が

轟いた、ばたばたと会津兵が射抜かれ橋から転がり落ちる。

「敵じゃ」  会津兵も防御に廻るが、なんせ寡兵の上に銃の性能が格段に違う。

この氷雨の中でも会津兵の所持するヤーゲル銃は、十発も撃ち続けると銃身が

加熱して射撃が不可能となる。  「後方の胸壁まで後退いたせ」

  会津藩兵は戸ノ口原の胸壁まで引き下がり、反撃をはじめた。

何としても、ここで政府軍を阻止する。そんな会津藩兵を嘲笑うように、薩摩

四番隊はつぎつぎと十六橋を渡り銃弾の雨を浴びせる。会津兵も頑強で両軍の

睨みあいが続くなか、続々と政府軍は増強されている。

  そんな最中に、白虎隊士中二番隊の少年が胸壁に辿り着き戦闘に加わっ

た。いきなり初陣の少年兵は、戦闘の第一戦に立たされた訳である。

  急速に闇が広がり土砂降りの雨の夜を迎えた。白虎隊士のなかに数名の

犠牲者が出ていた。「畜生め」 「油断するな」隊長の日向内記の檄がとぶが、

冷えと空腹で隊士たちの気力は萎える。急な出撃で兵糧の用意をしてこなかっ

たのだ。隊長の日向内記の誤算であった。

「腹が減ってな」  誰ともなく愚痴がでる。途中で敢死隊(かんしたい)から、

握り飯を分けてもらい口にしただけであった。

「我慢してくれ」  隊長の日向内記が隊士に詫びている。

  漆黒の戸ノ口原の各所に篝火の明りが点在している。会津藩兵は銃弾を撃

ちつくし、抜刀斬り込みしか攻撃方法のない情況に陥っていた。闇をぬって果敢

な斬り込みを敢行し、政府軍を悩ましているが、徐々に兵力が先細っていた。

  敢死隊頭の小原信之助、奇勝隊長の上田新八郎も壮烈な戦死を遂げてい

た。白虎隊も数度の斬り込みを行い、隊士の数も二十名に減らしていた。

「篠田はおるかね」  「隊長、ここに控えております」

「わたしは食料を調達してくる、それまでは君が隊長代理だ」

「判りました」  篠田儀三郎が力強い返事をした。それを聞き日向内記が闇に

消えた。

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Last updated  Jun 4, 2007 09:12:04 AM
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