1179989 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

長編時代小説コーナ

長編時代小説コーナ

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

龍5777

龍5777

Favorite Blog

いさまろの【1億円稼… New! Isamaroさん

プリッツ旨塩レモン… New! 千菊丸2151さん

フキの煮物とメンマ… New! よりすぐりさん

休日(顕忠日)に考… New! 韓国の達人!さん

レンガの並べ替え作… New! Pearunさん

Comments

 人間辛抱@ Re:何故、安保法制が必要なのか。 (08/09) どうもお久しぶりです。 新型コロナウイル…
 http://buycialisky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) cialis muscle paincialis daily use side…
 http://buycialisky.com/@ Re:改定  上杉景勝(12/11) cialis 5 mg prezzo in farmaciaanti cial…
 http://buycialisky.com/@ Re:騒乱江戸湊(04/28) cialis in spanien kaufenavoid counterfe…
 http://buycialisky.com/@ Re:「改訂  上杉景勝」(04/21) what happens if a woman takes viagra or…
 http://viagraky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) offshore viagra &lt;a href=&quot; <sma…

Category

Freepage List

Calendar

Jun 5, 2007
XML
カテゴリ:暗闘
「畜生ー」  重傷の石田和助が叫び声をあげた。 

「石田、静かにしてくれ」  声をめがけ銃火が光り銃弾が撃ちこまれる。

  突然にラッパの音が戸ノ口原の闇に轟きわたり、喚声と銃声が響いた。

会津藩兵が最後の突撃を開始したのだ。  「篠田っ、我々も突撃しよう」

「待て、日向隊長の命令で動けぬ」  「このままでは全滅する、せめて武士らし

く死のう」 篠田儀三郎の友人の安達藤三郎である。

「よし、判った。どうせ死ぬなら石田も連れていこう」

  重傷の石田和助を林八十治と永瀬雄二の二人が抱え起こした。暗闇に馬蹄

の音がおこり、 「会津藩兵は撤退いたせ」  大声で叫びまわっている。

「防御線が破られたな、このままでは犬死じゃ。我等も撤退する」 篠田儀三郎が

命令を下した。  「何処に逃げる」  「滝沢山中に逃げ込む」

  残りの二十名が胸壁を離れ、闇夜を彷徨し滝沢山中に逃げ延びた。

  飢えと疲労の二重苦を抱え、彼等は手探りで彷徨い続け戸ノ口堰(せき)の洞

門をくぐり抜け飯盛山の中腹に出た。時に八月二十三日の早暁を迎えていた。

「あれを見ろ、お城が燃えている」 白虎隊の少年から悲鳴に似た声があがっ

た。篠田儀三郎が茫然と立ち尽くしている。城下一帯は火の海である。黒煙が

空を覆い鶴ヶ城の天守閣が燃えて見える。  「会津が敗れた」 
 
  隊士等が枯れ草にへたりこんだ。全員が号泣する。  「篠田、どうする」 

  全隊士が篠田を見つめた、黒煙が天を覆い、砲声がえんえんと轟いている。

「篠田さん、お先に」  重傷の石田和助が短刀で咽喉を突いて倒れた。

  それを見た少年たちが、つぎつぎと短刀で腹を突き刺し、死出の旅に発って

行く。  「篠田、おまえと俺は友人だった。一緒に死のう」

  安達藤三郎が篠田儀三郎の手を握りしめた、二人の双眸から涙が滴り落ち

ている。殿に信頼された出撃であったのに、敵を仕留めることも出来ずに無念で

あった。「行くぞ」  短刀がお互いの胸を突き抜けた。純粋無垢な少年たちの早

すぎる死であった。血腥い臭いが風に流され凄惨な光景が映しだされている、

白虎隊士中二番隊の生き残った全員が自刃したのだ。

  飯盛山を偶然にも通りかかった、百姓女のハッが壮絶な光景を見つめ息を

飲みこんだ。彼女は気丈にも一人一人の顔を覗きこみ、飯沼貞吉が息をしてい

ることを見つけた。ハッは貞吉を背負い塩川の病院に送り看病した。こうして

飯沼貞吉の証言で白虎隊士中二番隊の自刃の模様が、顕かになったのだ。

  併し、会津首脳は現時点、これを知らない。彼等が全員戦死したものと考え

ていたが、戸ノ口原の激戦地からは、篠田儀三郎等の遺骸が見つからず困惑し

ていたのだ。彼等の遺骸は雪に埋もれ、翌年の雪解けを待って発見された。

  滝沢村の横山邸の本陣で、藩主の容保は眠れぬ一夜を過ごしていた。会津

盆地特有の霧がたちこめ村を覆っていた。

  突然、けたたましい銃声が響き、薩長土の精鋭部隊が滝沢峠を越えて浸入

してきた。本陣の前を戸ノ口原で敗れた藩兵が雪崩をうって潰走しくる。

  本陣にも銃弾が降り注いできた、少しでも敗兵を収容するために、容保は

本陣を前線に近づけるよう命じた。側近の竹村助兵衛と黒河内式部が兵を率い

先駆けした。容保は弟の桑名藩主の松平定敬を招き、直ちに米沢に撤退するよ

うに説得した。 「卿は米沢で同盟諸藩と今後の謀を成せ」

「兄上はいかがなされる」  「わたしは城を枕に討死いたす」

  定敬は兄、容保の決意のかたさを悟り、藩兵を伴って米沢に去った。

  こうしたうちでも、政府軍の先鋒隊が村の入り口近くに進出し銃撃戦となって

いる。 「殿、お城にお下がりくだされ」 黒河内式部が容保の馬の轡を城に向け

た。鶴ヶ城方面から早鐘が響いている、藩の軍事局が藩士の家族や町人に警

鐘を鳴らしているのだ。合図の鐘の音で町人たちは市街地から非難し、藩士の

家族等は城内に入るよう命ぜられていた。

  これほどまでに素早く政府軍が、城下に進攻するとは誰も予測しきれない

出来事であった。容保は藩兵に守られ、馬首をまわし甲賀口に向かった。

  郭内まで引きあげると、家老の田中土佐が出迎えていた。

秘録 凌霜隊始末記(1)へ





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Jun 5, 2007 09:20:13 AM
コメント(9) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.