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Jun 9, 2007
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カテゴリ:暗闘
      (塩原焼き払い)
  塩原の凌霜隊本営、和泉屋に伝令が駆けつけてきたのは、夕刻の空が灰色

から鉛色にかわる刻限であった。

「伝令ー」  騎馬兵の声がうわずって聞こえる。 「変事が起こりましたな」

  速水参謀長が隣りの丸屋から駈け足で現れた。

「朝比奈隊長殿に出頭命令であります」  「何かございましたか?」

「拙者には判りません」  「直ぐに出頭いたす」  坂田副長が代って答えた。

  茂吉と坂田副長に速水参謀長が、騎馬で塩原の上流の古町にある小山田遊

撃隊本部に向かった。日向内記が鶴ヶ城に呼び出され、塩原方面の指揮官は

会津遊撃隊長の小山田伝四郎に代っていた。

  本部に着くと小山田遊撃隊長と組頭の黒河内左刀が緊張した顔で出迎え

た。 「何事ですか?」   「会津若松が危ない」   「危ないとは?」

「二本松から薩摩、土佐の政府軍が鶴ヶ城を包囲したとの知らせが入った」

「二本松からは要衝の母成峠と十六橋がある。そこが破れたと申されるか」

  速水参謀長が剽悍な目つきで聞き返した。

「詳細は判らぬが、甲賀町口より城に迫っておるとの報せじゃ。考えられぬが、

速水さんの言われる通りかもしれぬ」

「して我等の任務は?」  茂吉の顔が引き締まった。

「藤原口の山川総督は急遽、軍団を率い会津若松に戻られた。そこでじゃ」

  小山田伝四郎が口篭っている。

「二十三日までに塩原の町を焼き払い、上三依(かみみより)に進出下され」

  組頭の黒河内左刀が乾いた声で告げた。  「塩原の町を焼けとー」

  凌霜隊の三名が問い返した、考えもしない命令であった。

「左様、午前中までに焼き払い上三依に出陣をお願いいたす」

「山川軍団が藤原口を撤退されれば、敵はすぐに進撃いたしますぞ。我等が

横川で政府軍を防ぐことになりますな」

  坂田副長がしわがれ声で黒河内左刀に念を押した。

「敵に対する命令はござらん、だが塩原の町を焼けとの命令は受理いたした」

  小山田伝四郎が厳しい声を発した。  「何故、塩原を焼き払います」

  茂吉が憤りを示している。  「塩原は要衝の地です。兵士の休息や物資の

集積場としては、もってこいの地形じゃ。そこを焼き払えば、これから冬にむかう

政府軍は塩原を使えぬことになる」   「成程、考えましたな」

  速水参謀長が皮肉な笑みを浮かべた。

「朝比奈隊長、あなた方の胸中は察しますが曲げてお願いいたす」 

  小山田伝四郎が頭を下げた。

「会津の方針なれば仕方がありません、これから帰り村人を説得いたします」

  三名は怒りと悲しみを胸に秘め、本部をあとにして馬を急がせた。

「隊長、村人になんと云って説得いたします」  「わたしが詫びるまでてす」

坂田副長が弱りきった顔つきで馬を急がせ、速水参謀長は無言で馬の背にゆら

れている。茂吉の脳裡に太兵衛とお園の顔がよぎった。

「速水さん、あなたに願いがあります。塩原の名差の方々を和泉屋に集めておい

て下さい」  「和泉屋さんと丸屋さんも集まってもらいましょう」

  速水参謀長が馬腹を蹴って駆け去った。  「説得に応じてくれますかな?」

「これは命令です。万一、承知せねば力ずくで遣るまでです、説明は副長にお願

いします」 月光に照らされた茂吉の横顔が凛として見えた。

(我々は会津救援として来たのだ、恨まれようと謗られようと軍事のことは遣るま

でだ)茂吉の覚悟が固まっていた。

  二人は和泉屋にもどり隊士を召集し、ことの成行きを説明した。

「隊長、これは非道です」  真っ先に岡本文造が反対を唱えた。

「これは軍事行動です。我等には時間がありません、和泉屋さんと丸屋さんの

取り壊しは、氏井士官と相談して下さい」  「それを拙者に遣れと仰せか?」

「あとあと直ぐに建てれるよう丁寧に取り壊し、資材とともに家財道具も撤去

して下さい」  「そうでなくては成らぬ、了解いたした」

  岡本が頬を崩した。 「全隊士も出来る限り町の人たちの世話を頼みます」

  全隊士が茂吉の考えを理解した。

「妙雲寺も焼き払いますか?」  「仕方がありません」

  一同が沈痛な顔つきをしている、調練の終りに寺の境内で休息し和尚の読経

を聞き、心の高まりを鎮めてきたのに、その寺まで焼き払うとは。全隊士の胸に

戦いの無慈悲さがよぎっていた。

秘録 凌霜隊始末記(1)へ





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Last updated  Jun 9, 2007 08:54:49 AM
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