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カテゴリ:音楽
1.Shine On You Crazy Diamond (Part One) 2.Welcome To The Machine 3.Have A Cigar 4.Wish You Were Here 5.Shine On You Crazy Diamond (Part Two) ■どうやらずっと誤解していたらしい。「Wish You Were Here」の You とは、たとえば途方に暮れてしまった時に、底の深い穴みたいな所に落ち込んでしまった時に、助けをもたらしてくれるような、もしくは、ひどく荒んだ心を癒してくれるような「あなた」がここにいてくれたら、という意味だとばかり思っていた。 ■この作品のM4 に置かれているこの曲に流れる感情はタイトルからイメージされるようなある種の恋愛感情を歌っているのではなく、現代社会に生きる我々の感じる疎外感こそがテーマなのだということを歌詞を再読してみて感じた。 ■創世期のこのグループの中心的なメンバーで、ごく初期の段階で違う世界に行ってしまったシド・バレットの事を歌っているのはむしろM1 とM5で繰り広げられる大作「Shine On You Crazy Diamond」の方だ。 ■2001年に出たベスト盤「Echoes」の中で合体されたこの曲におけるデイブ・ギルモアのレスポールの響きはロック史上最も美しいギターの音色のひとつだと思う。漠然とした朝靄のような長い長い前奏が流れる中でそれはいきなり空気を劈(つんざ)くのだ。聴き手にとってそれが昇ってくる太陽なのか、雲の切れ間から見えた月の光なのか、その時の気分がそれを決めるのだ。 ■いつ始まったんだか、いつ終わるんだかわからないような、このグループ独特のえらくゆったりとした”うねり”みたいなものに支配されているこの曲を私は愛しているほど好きだ。この曲を聴きながら眠りたいし、この曲を聴きながら目を覚ましたい。そんなあとで読んだら赤面してしまうような気分がこの曲には溢れている。 ■The Dark Side of the Moon の次に出たアルバムである。メインの「狂ったダイアモンド」はパート1,パート2に分断され、間に入った3曲の意義がよくわからない。強いて関連をあげれば全体を流れる歌詞世界のムードはテクノロジーへの危惧とか、体制への不満といった社会的問題をテーマにしているように見える。でもフロイドを聴く時はあまり詩作の部分にはとらわれないようにしている。あえて暴論を書けば、こういうムードロックとも呼べる快楽的な音に言葉のメッセージは不要だ。むしろ聴き手が自由に気分を膨らませばよい。この曲を聴いて心情的に潤ったと思ったら、実は政治について歌っていた、なんてのは興ざめである。 ■ヒプノシスによるジャケットの意味もあえて正解など聞きたくない。このビジュアルからつけられた「炎」という邦題もイメージを限定するという意味では罪な仕事だった。右側の人が宇宙人でね、なんていう戯言を許さない雰囲気はよくないと思う。見たままに受け取ればいい。音楽と同様、想像を喚起するという意味ではとても魅力的なジャケットだと思う。 ■Pink Floyd の約半分はロジャー・ウォーターズだったんじゃないかと思っている。あの「狂気」も、原子心母の「If」も、そしてこのM1もM4も、彼の作品であり、彼の問題意識であった。彼がいなくなったあとのフロイドを思う時、ああ、あの「Wish You Were Here」で歌われたあいつって、結局ロジャー・ウォーターズが自分自身のことを歌っていたんだなと思うと、随分と腑に落ちるのである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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