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テーマ:TVで観た映画(3799)
カテゴリ:映画
■原題は「滅亡」ということらしいが、アドルフ・ヒトラーはこの期に及んで何を手に入れようとし、何を守ろうとしていたのか。独裁者の究極の目標は自分が築いてきた帝国の栄華を末代まで持続させることであると思うのだが、彼は生涯血縁の後継者を持つことはなかった。
■自らの死は帝国の死であり、敗戦でもたらされる人民の不利益、国の存亡など、残された者に対する慈悲の心は微塵も感じさせない。愛人として長く彼を支えてきたエヴァ・ブラウンとは自殺する前日籍を入れ、愛犬ブロンディは自分たちが飲む毒薬の効果を試すために毒殺。 ■そのように自分を取り巻くごく少数の人々にはきっちりとおとしまえを自らの手でつけているのに対し、かつて自分を支持し、傾倒させてきた多くの人民のその後については何ら責任をとらない。 ■ついつい比較してしまうのがソクーロフの「太陽」で描かれた昭和天皇の姿。彼は自分は死に追いやられても人民の命だけは救ってくれと懇願する。もちろん、立場は微妙に異なるが、同じ同盟国の君主といえども、日本とドイツでは国民が崇める対象はこんなに異なっていた。 ■かつてチャップリンやピーター・セラーズによってデフォルメされてきたこの独裁者を演じたのはブルーノ・ガンツ。痙攣する左手、ヒステリックな恫喝、反面、女性や子どもに対する柔和な表情など、この人物をえらく人間的に見せてくれた。”ベルリン天使の詩”とこの”ヒトラー”、どちらが彼としては代表作と言って欲しいのか訊いてみたい気がする。 ■ゲッペルズの6人の子どもたちのエピソードなど、目を背けたくなるような悲惨な死が全編に溢れている。生き残ることが屈辱であるという意識の中には、それだけ酷いことを自分たちが他民族に対してしでかしてきたという自覚があってこそなんだろう。仕返しの恐怖も大いにあったんだろう。 ■物語は実際に彼の秘書だったというトラウドゥル・ユンゲという女性本人の述懐で終わるが、彼女はこの独裁者がそれまでしてきた残虐行為の数々は後で知ったことだと語っている。それだけ近くで見た彼の姿は人間然としていたということか。20世紀最大の怪物は近くで見ると実際には小柄な中年男だったのかもしれない。それでもいくら人間的に描いたとしても彼のやったことが消えてなくなるわけでは決してない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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Tバックさせていただきました~
んで、自分の日記を読みましたら、「あなたについて行こうか、迷ってます。」の下のビリーのリンク画像が消えてて意味不明でした。(笑) (2007/10/21 03:53:57 PM)
SEAL OF CAINさん
T.B.ありがとうございます。たしかにちょっと長かったですね。事前にもう少しこの人について文献をあたっていたらもっと興味深かったかなと思います。でも、最後まで見てしまいました。 >「あなたについて行こうか、迷ってます。」の下のビリーのリンク画像が消えてて意味不明でした。 一瞬、ドキッとしてしまいました。(笑) (2007/10/21 09:03:38 PM)
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