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テーマ:DVD映画鑑賞(13603)
カテゴリ:映画
■コレステロール値が気になるわりには、これといって何の節制も療法も行っていない。へルシア緑茶とか黒烏龍茶ってどうなんだろう。連休の最終日にポテトチップ食べながら横になって伊丹十三の「タンポポ」を見る。食べたくなったのはラーメン、北京ダック、鴨南、天ぷらそば、ふわふわオムライス、骨付きカルビ、スパゲティバジリコ、点心、炒飯、そして生牡蠣!
■伊丹作品の中では最も好きな一本である。本編であるラーメン店再生計画だけでも充分面白いが、私は合間合間に挿入されるこの映画の横道が大好きだ。思いつくままそのエピソードを拾ってみると その1 大滝秀治逆さまバキューム。怪老人大滝が蕎麦屋で普段は禁止されている鴨南、天ぷら蕎麦、お汁粉を食す。喉に餅を詰まらせた彼を渡辺謙が逆さまにして山崎努が電気掃除機(ダイソンか?)でそれを吸引する。ちなみに老人の連れの女は柴田理恵。 その2 子供3人を残し死ぬ間際の女房に井川比佐司の主人が「かあちゃんメシ作れ」と懇願。スクッと起き出した彼女が最後に作った料理は炒飯。鍋を食卓に置き、家族がそれを食す姿を見て彼女昇天。ちなみに妻役は三田和代。 その3 タンポポと彼女の息子が山崎努に連れられて行ったのはあるホームレスたちの集会。お腹をすかせた息子が彼らにリクエストしたのはオムライス。深夜の厨房に不法侵入してルンペンが作ってくれたのがふわふわ玉子のオムライス。ナイフでザクッと裂いた半熟がケチャップライスを包み込む。ちなみにそれを作ったのはノッポさんの高見映。 その4 原泉と津川雅彦のチャップリン映画のような追跡劇。このおばあちゃん、スーパーに行っては並んでいる商品(柔らかいもの)を指で押したくてたまらない。桃、カマンベールチーズ、菓子パン。私だったらあと高野豆腐(コウヤドウフ)に蒟蒻(コンニャク)に無花果(イチジク)なんて試したい。ちなみに漢字で饂飩と書いて何て読む? その5 白い服の男とその女。役所広司が最後に謎の銃撃を受け白いスーツを真っ赤に染めながら女に切れ切れ話すイノシシの腸詰めの挿話が実においしそうだった。それを聞きながら「ワサビ醤油なんか合うと思うわ!」と叫ぶ黒田福美が絶品。ちなみに私はイノシシはどうも苦手だ。 その6 とある接待の場、入ったフランス料理店でメニューに書いてある中身がまったくわからない上役たち。ひとりが舌平目のムニエル、スープ(コンソメ)、ビール(ハイネケン)と注文すると残りの人たち全員が同じオーダーを繰り返す。最後の鞄持ちの下っ端だけが何やら場慣れた蘊蓄を語り、場を凍らせる。ちなみに彼の隣りに座っていた上司役が伊丹作品の常連となる高橋長英。彼の顔面痙攣演技はここから始まった。 ■クラシックの有名曲が何げなく挿入されどうでもいい事柄が何やら崇高な問題にも見えてしまうような演出が好き。この映画を見た誰もが触れるだろうが、役所広司と黒田福美のエロチックなシーンの数々(生クリーム、生きたエビ、レモン汁、そして黄身の口移し)はこの作品を散漫にしているのかきりっと引き締めているのかわからないくらい印象に残る。洞口依子の生牡蠣少女も含めてね。 ■ラーメンの作法を語る大友柳太郎、老スリ役の中村伸郎、ホームレスの先生加藤嘉、虫歯に悩む藤田敏八など今では故人となった顔ぶれも多い。そうか、そういえばこの監督の新しい作品ももう決して見ることができないんだった。宮本信子がカメラの方を向いて「どう?」とタンポポのような笑顔を見せるシーンが何回かあった。その先には最愛の夫の姿があってこその笑顔だったのかもしれない。 PS ■あのフローラン・ダバティは学生時代フランスでこの映画を見て日本に興味を持ち、この国を訪れる決心をしたのだという。アメリカ映画のあらすじで、色んな国の食事が出てくるけれど、そういえば、これは紛れもない日本映画なんだな、なんて思った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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