テーマ:最近観た映画。(39155)
カテゴリ:映画ログ
映画の内容はパッケージとおよそかけ離れている。ケースは派手に燃え上がるブランデンブルグ門と戦車や空飛ぶ戦闘機が描かれて如何にも戦争映画らしくて、中身は当然戦闘シーンの連続か?と思われた、ベルリンが陥落する最後の戦闘だ。でも相当違った。元のタイトルは「ベルリンの一人の女」で、そして中身は‥‥
冒頭、激しい砲火の市街の中で、兵士が走り回って市民を避難誘導している。映画「ワルキューレ」で御馴染みになった陸軍予備軍の首都守備隊の兵士だ。にげまどう婦人たちを、ある大きな家の地下室に誘導した。広い地下の空間には沢山の老人、女、子供がじっと座って息を潜める。ソ連軍がベルリンに到達し壊滅して瓦礫の山となった街路を戦車で進んできたのだ。この避難者の中に主人公の女性がいる(名前は言わなかった)他者が呼びかけるときは「フラウ」(お嬢さん、娘さん?奥さん?)と呼びかけている。これはこの物語が女性にとって名誉な事ではなく恥として隠したい事柄だからだ~そう、戦乱のどさくさでの集団レイプの物語なのだ。地下の隠れ場所はすぐに見つけられ、ソ連兵は女の姿に目つきが変わったのは言うまでも無い。ベルリンの帝国議事堂までまっすぐ攻め込むはずが、ポツダムあたりの市街路で停留し、しばらくいるらしい。焼け残った家も通りも兵でいっぱいになり、ジャガイモを載せた荷車や黒パンやぶどう酒が運び込まれた。地下で何も食べず飢えて過ごしてきた人々には欲しい物ばかり。「「お嬢さんたち出ておいで、食べ物を上げるよ、怖がらないで」と呼ばれたが。 だがソ連兵はここまでたどり着くのに大変な苦労をしてきたのだ。国を出てすでに5年は経っている。血と死の恐怖を通り過ぎた男たちが女をみたら、どうなるだろうか。それも敗戦国のおびえた女たちだ、兵達の動物的本能が女に向かうのは仕方ない事で、これは歴史上絶えず見られた情景なのだろう。50歳70歳の女でも例外ではなかった。反って兵隊は如何にも主婦らしい女のほうを病気の心配が無いので選ぶのだった。主人公も他の女たちもほとんどの女性はレイプの憂き目にあった。 この映画には原作があってアンソニー・ビーヴァー著の「ベルリン陥落1945」が元になっている。ドイツ敗戦の折多くの女性が侵入軍の性の犠牲になったこと、自殺者も多く出たことが書かれているとか。ではレイプ場面が刺激的なのか?製作がコンスタンチンフィルムというドイツの老舗映画会社なので悲惨さは極力押さえられていていて、テーマはそこには無い。むしろ何とかして生き延びようとする女性達の知恵のほうに置かれている。彼女らは自分たちを辱めた兵たちとしばらくは同居を保ったのだ、食料と命を守るために。主人公はジャーナリストでロシア語も話せるのでソ連軍の司令官の少佐と会話を交わし次第に心を通じ合わせた。そして1945年4月30日ヒトラーの自殺によってすべては終わる。内容がショッキングで心を打たれたが、戦争に関する一つの証言かも。主人公のフラウにはニーナ・ホスが扮している。 (おまけ)ソ連兵が飢えた野獣のようにひどいかというとそれほどではなかった。しかしそれなりに襲う人であった。ソ連兵の一人はドイツ兵たちが彼らの村で小さな子供の脚を持って頭を壁に叩きつけるのを目撃したと語る。「レイプぐらい何だ」と言いたかったのかも知れないが、戦争には残酷が付き物だ。本土国内に敵軍が侵入することを恐れるのはそのためだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[映画ログ] カテゴリの最新記事
|
|