テーマ:最近観た映画。(39047)
カテゴリ:映画ログ
イタリアの政治的事件を描いた映画としては、2003年のマルコ・ヴェロッキオ監督の「夜よ、こんにちは」があった。フォンターナ広場事件よりも約10年後、イタリア首相になっていたアルド・モーロ氏の誘拐殺人を描いていて印象に残っている。「フォンターナ」ではモーロは外務大臣として出てくる。ミラノのフォンターナ広場に面した全国農業銀行の閉店間際のロビーで何者かが爆弾を発火させ、17名死亡88名負傷の大事件が起きる。爆弾の威力は大きく普通には入手できない種類のものだった。しかしそのころ鉄道や劇場で爆弾が仕掛けられたり爆破が起きることが多かったので、犯人の目星は絞られていて警察は糾弾を急いだ。
130分の長時間映画で、中身は濃い内容がギュッと詰まっていて、観るのが大変だ。それだけにジュゼッペ・トウリオ・ジョルダーナ監督の意気込みが感じられる。何しろ、この事件には謎が多く、真犯人は分からずじまい、そのごのイタリアの政治が混乱する元になった事件なのだ。決して娯楽的に面白い映画とは言えないが、一つの事件にかかわる多くの関係者をじっくり手を緩めず描いていて、見ごたえは十分だ。たまにはこういう固い内容の作品も良いものだ。 銀行の爆発が起きたのは1969年12月12日(金)だった。ミラノ市警のカラブレージ警視が捜査を担当したが、たちまち上司や検事筋や役所筋からどんどん横やりが入った。そして間もなく容疑者が拘束され始めたが、顔ぶれがほとんどがアナーキストのグループの者か左翼団体の者ばかりだった。イタリアには彼らと同じかそれ以上に過激な右翼団体やネオファシスト団体があって、怪しいのはむしろそちらかも知れないのに彼らには嫌疑が行っていない。カラブレージ警視はともかくも一番名前が挙がっているアナーキストのピネリを逮捕したが、内心、これで良かったのかと不安だった。と、言うのはピネリの人柄は彼が良く知っていたからだ。左翼運動に詳しい新聞記者ノッツアも彼と同意見で、調べるなら左翼と右翼両方調べるべきであると言った。実は思想家たちには左翼から右翼へまたは逆に、と、行き来するものがいるし、相手陣に潜入している密偵もいて人物関係は複雑を極めていた。ところが3日間警察で調べられていたピネリが4階の窓から落ちて死んでしまう。そしてアナーキストたちの仲間も次々と怪死した。背後に何かの勢力を感じたカラブレージだった。 ここまでで事件が続発し、関係する人物たちが次々と数多く現れて、よっぽどしっかり見ていないと分からなくなる。難問に直面するような気分だ。ピネリの死も自殺か他殺か不明だ。アナーキスト仲間(一応、正体は不明)が高圧線に触れ焼死した事件などショッキングだった。そしてピネリの死で、白眼視されるようになったカラブレージにも悲劇が待っていた。 やはり一通りの事件ではなく仕掛けたものが、右か左かどの陣営に居たか、調べるにつけ、奥が深くなるような奇妙な謎の事件で、ちょっと日本人には理解の手が届かないかな、と感じた。 (おまけ)アナーキストの面々、右翼の旧軍人団体の面々、左翼の活動家や知識人の面々、たくさん出てくるが、それぞれの「つらがまえ」が面白く、イタリア人らしい熱気のある顔つきが見ていて飽きない。政情不安で騒がしかった時代の人たちは、現代の平和な間延びした(?)顔とだいぶ違うようだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2014.12.05 19:16:10
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