引き際の美学 その二
ティック・クァン・ドック師、釋廣徳、1897年~1963年6月11日人間が反応する刺激のなかで、熱感に対する反応がいちばん過敏であるという。たしかに痛みなどに対する反応よりも、お湯がちょっとはねたりちょっと熱めの風呂に入った時の反応の方が過剰であるのを考えれば納得できる。それを彼は絶命するまで蓮華座を崩さず、声を上げるどころか、表情一つ変えることはなかった。だだの募集で志願し、宗教家でも狂信者でもなく、政治的思想のためでもなく、報酬が家族に行くわけでもなく、死亡後の解剖でも薬物等は検出されず、正常な精神状態のままの焼身自殺である。イエス・キリストをはじめキリスト教絵画に見られる聖人たちの殉教の様子はみな苦痛をこらえあるいは打ちひしがれた被害者意識満々のものばかりである、ドック師の表情と比べてほしいものである、西洋人と東洋人の精神性の違いがよくわかる。ここまで崇高な引き際は人類最高峰の【引き際賞】を贈りたい。たいていの人間は、この「抗議の焼身自殺をはかったものの即ギブアップした韓国のおっさん」と同じリアクションをするであろう…それにしても雲泥の差とはこのことを指す言葉であろう。韓国と言えば韓国軍は後のベトナム戦争では最低でも6万人以上のベトナム人を殺害、戦争終結後、戦争犯罪として扱われるほど虐殺略奪レイプの限りを尽くし特におそれられたという、この写真での民族間の差は皮肉である。この崇高な死の1枚の写真からまさに火がついた戦争だが、私欲のため介入した米国が50万人以上の陸戦部隊を投入し6万人近い戦死者を出し、6000億ドル以上を費やし、2千機の戦闘機を撃墜され、それでも米国が勝てなかった奴がいた、その名はホー・チ・ミン、引き際を知る男である…つづく