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カテゴリ:人文:今日の言葉この1冊
色々な視点や考え方を身につけようと、国際政治学者の中西輝政さんが書かれた その名もズバリ「本質を見抜く考え方」という本を読みました。 「考え方」という項目が53項目短くまとめられていて、 国際政治学者らしい外交の具体例なども書かれています。 でも、国際政治をぬきにして、人生の考え方としていい本だと思いました。 私が特に良かったと思った項目は次のようなものです。 まえがき 「正しいものの見方、考え方というのは、できるだけ色々な立場や視点から ものごとに光を当て、曇ったメガネや色眼鏡、歪んだレンズでものごとを 見ないようにすることから始まります。 そのために何が大切かと言うと、既に出来上がってる他人の考え方に染まらないで、 自分の頭で考えるということです。」 ☆考え方1:「自分」とは何か 自分を見る鏡が歪んでいたら、ほかのものを見る歪みに気がつかない。 すべてのものの見方、考え方は、正しい自画像を出発点に始まる。 これ大事だと思うんです。松下幸之助さんのいう「素直な心」というのと 近いのではと思います。「現実をありのまま直視すること」とも言えると思います。 ☆考え方2:「敵」をはっきりさせる 「敵を知り己を知れば」ではなく、敵を知ることが即、己を知ることになる。 日本人の美点を活かすためにも、あえて自らに仇なす敵を見据えて 己を見直すことである。 「敵」というのは、ライバル、競合、あるいは苦手な人、事柄とも言えると思います。 競争心や苦手意識を持つのは、相手の方が勝っていると思う点があるからで、 まさにそのポイントに「謙虚に」注目して、研究して取り込んだり、それに匹敵する 別の自分の長所をもっと伸ばしたりすることが必要なんですね。 ☆考え方3:「宙ぶらりん」に耐えること 人は答えがでないことに耐えられず、早まって誤った判断を下すことが多い。 正しい判断のためには、しばらく答えが出ない「宙ぶらりん」の状態に 耐える習慣づけが必要である。 これは目から鱗のポイントでした! うまい言い方をされるなと思います。 大半の問題は、白黒がはっきりしない幅の広いグレーゾーンで覆われているものです。 問題に複数の人やましてや国がからんでくれば、誰かの出方によって、 どこかの国の出方によって、情勢はいかようにも変わって行きます。 でも通常はお互いの出方を見て、中途半端な状態でジリジリしているのが普通です。 イギリスにデルハートという軍事評論家がいて、次のように言ったそうです。 「ものごとがいずれにも決しない状態に耐えるのはとてもつらいことである。 そのつらさに耐えかねて”死に至る道”(後先考えずに飛び込んでしまう衝動的な行動)に 逃げ場を求めようとする者は、昔から国家にも個人にもあった。 しかし、このつらい”宙ぶらりん”の状態に耐えることこそ、可能性の明確でない勝利の 幻影を追い求め、国家を灰燼に帰せしめるよりは、はるかに優れた選択なのだと 銘記すべきである」 中西さんの言われるには、 「強烈な自己抑制と、非常に細心な外界への注意の継続が課されている訳です。(中略) 「心の平衡」を保つことができれば、人は宙ぶらりんの状態でも、 自らを「確実なもの」ととらえることができます。 キレやすい子供たちも、その子供を性急に期待過剰に育てた親たちも、 この点で共通するものがあるということです。 ☆考え方21:「迷い」は将来への素晴らしい投資 人は迷ったり悩んだりすると、「早く心をすっきりして楽になりたい」ために、 「まあいいか、こっちで」という切り捨て方をしてしまいがちです。 切り捨ては、日々生きて行くうえで、戦術的には効率よく見えますが、 人生の一番いい部分をわざわざすててしまうようなものです。 迷っている状態というのは「将来への投資」です。迷った時こそ大事な時。 迷った時こそ収穫の時。 ほんと、そうですね。早く楽になりたい!ってすっぱり切り捨てたくなりますよね。 でも簡単には切り捨てられない大切なことというのを意識していると、 人生に奥行きが出るような気がします。 ☆考え方43:「早く」見つけ、「遅く」行動する もっとも国家戦略の巧みな国家イギリスの外交の特質を一言で言うと 「早く見つけ、遅く行動する」これが基本にある。 ☆考え方22:「粘り」と「潔さ」の両面を持つ 「相反する要素を併せ持つことで、「悩むこと」や「宙ぶらりん」の 状態を楽しむ境地が開けてくる。 外交の基本は「早く見つけ、遅く行動し、粘り強く主張し、潔く譲歩する」こと。 情報はできるだけ早くキャッチして、検証に時間をかけ、交渉する時は徹底的に 粘り抜かなければいけないが、妥協の最後の感覚というのを常に持っていて、 その時は潔くぱっと譲歩しなければいけない。 「粘り強く交渉し瞬時に妥協する」 イギリス人というのは本当にバランス感覚のいい人種なんだなあと思いました。 相反することをいつも持ち合わせて、両にらみで考えているんですね。 「性急な結論は諸悪の根源」とも本のどこかに書いていました。 ☆考え方23:「択一」より「共存」を意識 「個人と共同体」という対立軸でどちらかを選ぶより「共存」を考える 「他の人と一緒にいて、人の輪に入って幸せだと感じること」をゲルマン語で プリー(英語のフリーfree/自由)といったそうです。 昔から個人と集団の共存は、中国の思想哲学などでも扱われてきたように、 多分人間共通の永遠の課題です。それでも、freeの語源が人と一緒にいることで 開放感を持つことというのは、とても深い意味合いだと思いました。 好きな人と一緒にいると、不思議だけど、一人でいるときより自由になった気が することがありませんか? 脳科学者の茂木健一郎さんの話(Gコルベール氏×茂木健一郎氏特別対談)で、 「脳は自分という制約から解放される時強い快感を持つ」というのがありました。 自由という本来の意味は、そういうもっと人間の本質的なものに根ざしているのかも しれないですね。 イギリス人は「行動しながら考える」民族で、「情報を収集する能力に長けている」 そうです。 それに「早く見つけ、遅く行動し、粘り強く主張し、潔く譲歩する」ことができる バランス感覚に優れた、大人な国民性を持っているように思いました。 どれも日本人が苦手とすることのように思えてしまいます。 国としてももっと広く世界の国々と交流して情報交換する必要があると思うし、 (他所の国も理解して、日本のこともよく知ってもらう)、 外国の文化や社会の深い所まで謙虚に学ぶ姿勢が必要な気がします。 個人としてもそうです。 広く浅く人と上手に交流することがまず大切だし、 知らないことは謙虚に理解する努力をすることも必要だと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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