これからの米国政治(8)
これからの米国政治(8) 前途多難な一つのアメリカ その4上院は、大統領が任命した閣僚やFRB議長、最高裁判事などの就任の諾否の権限を握っています。そのため、共和党にとって、左派と映る人物については間違いなく拒否します(かつて、参院で野党が多数を握っていた時期に、自公政府が日銀総裁に任命した人物が2人続けて就任を拒否されたケースがありましたが、ああいうことが可能なのです)。従って、49対51もしくは48対52となった場合は、左派が推す閣僚候補が就任できる可能性は、ゼロとなります。当然左派は不満を持ちます。それでも、左派が実現を期待する政策課題が取り上げられ、そのいくつかが法案となり、実現可能性が見えてくるならば、不満が爆発する可能性は和らぎますが、当然左派の期待する政策課題は,国民皆保険にしても、低所得層に対するセーフティネットの整備や貧乏学生に対する奨学資金の充実にしても、失業対策事業にしても、皆財政支出を大幅に増やす大きな政府を必要とする政策です。それに対して最近の共和党は、小さな政府を標榜して大規模な財政支出には反対を貫いています。10月以降、コロナ対策としての失業者の生活支援が9月末で失効し、それまで900ドルだった支援金支出が0になった時、民主党は今まで通り900ドルの支出の継続を主張したのに対し、共和党は300ドル以上の支出に反対してまとまらず、焦ったトランプ大統領が足して2で割った式の600ドルを提案しても、なお歩み寄りを見せなかった(政府支出に関しては、トランプの方が共和党より、民主党に近いんです)ほどなのです。 従って、左派系の望む政策課題は、左派が満点ではないけれど、60点のギリギリ合格点に達していると納得した案のままでは、否決されてしまうのです。当然零点は良くないから、45点でも0より良いだろうと、バイデン政権は共和党穏健派が歩み寄れるところまで譲歩を決断する方向に動くでしょう。左派系議員は、自分の支持層の不満に敏感ですから、素直に納得して引っ込むとは考えられず、ここに、民主党政権幹部と左派との軋轢は強まり、それが重なるにつれ、民主党の党内対立は激しさを増し、ついには分裂の危機を迎える。こうした危機が2022年の中間選挙(上院の3分の1と下院の全員を対象とした選挙です)の前に起きるのではないか。バイデン大統領は誕生しますが、彼らの前にある困難は、実に大きなものなのです。トランプが表舞台から去ることは、世界的に見て大きなプラスですが(ただし、トランプとG7世界でただ1国友好関係を結んでいた自公政権にとってはマイナスなんでしょうね。彼らはトランプ再選を願っていましたから…全く目先の利益しか考えない困った連中です)、アメリカ社会の分断状況を修復するのは、まさに至難の業のように見えます。バイデンーハリス政権に秘策はあるのでしょうか。 続く