獅子文六の『海軍』に出てくる鹿児島市の荒田八幡宮
naomatsu724さん、こんばんは、やまももです。 獅子文六の『海軍』のなかに、谷真人の母親のワカが真人の三歳祝いの時に郷社の八幡社へ参詣する様子が描かれています。この八幡社は、鹿児島市の下荒田町にある荒田八幡宮のことであり、この神社の目の前に荒田八幡電停があります。 それで、獅子文六が『海軍』で荒田八幡宮について言及している文章に現在の荒田八電停の写真を添えてアップしておきたいと思います。 三歳の祝いの時には、母親が抱いて、郷社の八幡社へ参詣した。尤も、ワカは、その年に、十二番日の真彦を生んで、いよいよ身辺が忙しかったが、七五三の参詣だけは、欠かされなかった。彼女は、紋服に身を更めて、古い、根元が六稜になってる石鳥居を潜った。丁寧に手を洗い、口を漱ぎ拝殿の前で、長い祈念を凝らした。べつに、なにをお願いするわけでもなかった。ただ、一心に拝むのである。男の子の場合は、いつも、そうして長く拝むのである。 荒田八幡宮は、由緒のある社で、現在の社殿は、島津十五代の貴久の造営になってるが、奉祀は遥かに古いらしい。九月二十三日の祭礼には、浜下りの行事があって、鹿児島の名物となっていたが、今は廃れた。ただ、宝殿の下の白浜を、蝮蛇(まむし)除けとする風習は、今なお続いている。「当社は蝮蛇を悪み給うとて、荒田一村その虫絶えてなし」と、古記にあるが、この付近に長虫の少いのは、確かな事実である。この産土神(うぶすな)に対する郷民の尊崇はまことに篤く、真人が、後年海軍軍人となってからも、帰省の度に、社前に額くことを忘れなかった。 なお、写真では分かりませんが、この荒田八幡宮はかつては鹿児島総廟とされていたそうですが、いまはとても小さな神社なんですよ。