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Oct 26, 2009
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2週間おいて観た 「屋根の上のヴァイオリン弾き」 は 期待通り、芳醇な葡萄酒、いや、テヴィエ父さんの好きなブランデーの香りがした。
(2週間前の感想は 10月12日のブログ に書きました。)

やや狭めの日生劇場の舞台空間に慣れて、群舞ものびのびと、きびきびと。

2度目の観劇のすべてが1度目より面白い。この作品の奥の深さを改めて知らされた。

25日の昼の部も満員御礼。プログラムが売切れで、係員が頭を下げていた。

お節介焼き仲人業のイェンテ婆さんは、10月11日にはクセが強くて憎々しく思われたが、2週間おいて観ると なにかこう丸くなっている。

第2幕の最後に聖地へ向かう決意を語って上手(かみて)へ歩き去るイェンテを演じる荒井洸子(こうこ)さんが袖に入り際に、にっこり笑って客席に向かい手を振ってくれた。

拍手してあげたかったなぁ。
プログラムを見ると、「屋根の上のヴァイオリン弾き」 には34年前の昭和50年 (1975年) から別の役で出ておられたのだと。

母ゴールデを演じる鳳 蘭(おおとり・らん)さんは、10月11日に見たときは、とびきり明るい母親と魔女のようにこわい妻との両面をハイテンションで演じ、舞台のオールマイティ・カードだった。
あまりにパワフルで市村正親さんを霞(かす)ませるほどだった。

10月25日には、役作りがやや変わって素っ気ない母となり、結果的にゴールデという人格に統一感が出た。
舞台での突出度が下がり、市村正親さんをいいバランスで守(も)り立てた。

あのヴァイオリン弾きは、いたずら天使なのだろう。
何の役に立つわけでもないが、いないと寂しい、そんな存在。
からだをくねらせ演じる日比野啓一さんに、勝手に親近感を抱いてしまった。

いたずら天使がいる文明には、きっと潤いがある。
ユダヤの原点の乾いた大地には、いたずら天使が必要なのだ。



次女ホーデルを演じる笹本玲奈さんの第1幕は、のびのびとし、花がこぼれそうな自然な笑顔に飾られて、観ていてハッピーになれた。
「ミー&マイガール」 を歌うサリーそのままだった。

じつは10 月11日には、ときとしてまるでファミリー・ミュージカルを無理して演じているような固さが感じられた。
ホーデルは、サリーより随分若い17歳くらいの設定のはずで、それを意識しすぎているのかなと思った。

笹本さんのこぼれるような笑顔は、いのちを捧げてもいいほど美しい。
でもじつは、なかなか見せてくれないのですねぇ、これが。

今回のあふれるスマイル。きっと、なにかいいことがあったのでしょう。

第2幕の、村の駅での父テヴィエとの別れのシーンは、演出が変わっていた。

前回は、
「今度は、いつ会えるか……」
といって嗚咽(おえつ)をもらして父に駆け寄り抱きついた。
(これを見て、電撃が走ってしまった。)

今回は、
「今度は、いつ会えるか、神様だけが知っているのね」
といって父から目をそらして立ち尽くし、そのうち感極まって父に駆け寄り抱きつく、という演出だった。

理屈では今回のほうがテンションを高める演出なのかもしれないが、ぼくは前回の演出のほうが好きだ。
ホーデルの別れの瞬間の気持ちの高ぶりが一気に出ていた。



第1幕、長女と仕立て屋の結婚の儀式のシーン。
しずかな歌が滑り込むように 「サンライズ、サンセット」 の斉唱に入った瞬間、ぼくのからだに幾本もの蝋燭が灯った。

劇を2度観ると、からだが反応する場面が変わる。

次女ホーデルとインテリ青年パーチクが
「いつの日にか、わたしたちも」
とふたりで歌うのが第2幕への伏線になっていることにも気がついた。

こういう発見の楽しさがあるから、いいお芝居は2度目がいい。

「サンライズ、サンセット」 は有名なフレーズだから日本語に訳せないのだろうけれど、ぼくなら
「朝な夕な」
と訳したい。

「朝な夕な」 は いまや古語に近いから(ワープロ変換でも出てこない)、最初は観客に理解してもらえないだろうけれど、このミュージカルのちからで現代日本語に復権できるかもしれない。

(日生劇場にて、10月29日が千穐楽。)





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最終更新日  Oct 26, 2009 08:14:11 AM
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