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カテゴリ:再生
再生手続開始決定がなされると、収益可能な事業も価値の劣化により存続困難となることがある。
このような場合、再生債務者が第3者に営業譲渡をすることにより事業の存続を図ることが有益 である。 また、債権者も営業譲渡代金を原資として早期に一括弁済を受けられる。そのため、営業譲渡は 倒産処理の方法として有用とされている。 ところで、再生手続開始決定により事業の価値は急激に劣化するのが通常であるから、営業譲渡 は早期に行われる必要がある。そこで、民事再生法は再生計画案の決議前でも裁判所お許可を得 て営業譲渡を行うことを認めた(民事再生法42条)営業譲渡の許可は再生債務者の事業の再生 のために必要であると認められる場合に限ってなされる。(42条1項ただし書き) 具体的には、再生債務者の信用は失われているが、営業譲渡を受ける第3社の下では事業の存続 を図ることができる場合等である。 もっとも、再生債務者が株式会社である場合、株主保護の観点から、営業譲渡には株主総会の特 別決議が必要とされている。しかし、定足数要件を満たさない等の理由で株主総会の特別決議が 成立しないことが考えられること、債務超過に陥っている株式会社の株主は実質的な持分権を失 っているといえるから保護する必要性が乏しいことから、民事再生法は株主総会の特別決議に代 わる裁判所の許可(代替許可)の制度を設けた(43条) 代替許可の要件は、 1 再生手続開始後に再生債務者がその財産をもって債務を完済することができないこと 2 営業譲渡が事業の継続のために必要であること の2つである。 再生手続における財産評定は、原則として処分価値で行うが、必要である場合には継続企業価値 で行うことができるとされている。(民事再生規則56条1項)ところで株主の議決権を失わせ ることを正当化する根拠は、株主が実質的な持分権を失っているといえることであるから、処分 価値を基準にすれば債務超過となる場合であっても継続企業価値を基準にすれば債務超過となら ない場合には、株主は実質的な持分権を失っているとは言えない。 よって、上記1の要件該当性は、継続企業価値を基準として判断すべきであるとする見解が有力 である。2の要件該当性については、株主保護の観点から、営業譲渡しないと早晩廃業に追い込 まれざるを得ない事情にある場合に限るとする見解がある一方、倒産処理における営業譲渡の有 用性を考慮すれば、上記の場合に限ることなく、営業譲渡をしなければ当該営業の価値等に大き な変化が予想される場合も含むべきであるとする見解がある。 東京高裁平成16年6月17日決定は、営業譲渡しないと当該事業が遅かれ早かれ廃業に追い込 まれる場合や、当該営業の資産的価値が著しく減少する場合に限る。として、原決定の代替許可 を取り消した。 判例タイムズ 1184号224頁 頭注 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.01.24 05:26:39
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