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カテゴリ:損害賠償
ゴルフ場でのプレー中に、競技者がコース脇にあるふたのないマンホールに落ちて負傷した事故につき、ゴルフ場の占有者の工作物責任が肯定された事例(東京地裁 平成24年1月25日判決)
「事案の概要」 本件は、Xが、Yが占有するゴルフ場においてプレー中に、コース脇にあるふたのない本件マンホールに転落して傷害を負ったとして、工作物責任もしくは一般不法行為責任に基づく損害賠償として、治療費、休業損害、慰謝料等を請求した事案である。 「判旨」 そもそも、ゴルフという競技は、各ゴルフ場の具体的な立地や設計によって程度こそ異なるものの、地形を利用した起伏や湾曲等のあるコースの中で固いゴルフボールを金属等の素材でできたクラブで打って行われるものである。また、コース内には、運営管理やサービスのため、大小様々の人工物が存在していることは通常のことであり、これら全てについて、例えば市街地や公道上のように安全性を確保すべきものであるとまではいえない。 しかし、本件マンホールは、10番ホールと11番ホールの境界付近にあるが、10番ホールの競技者の打球が周辺に飛ぶことは時折ある場所だったのであり、一定数の競技者がその周辺に立ち入ることが想定される場所であったといえる。そして、本件マンホールは、直径、深さとも約1メートルもあるものであったから、万が一足を踏み外した場合には大きな傷害を負うこともありうる形状の工作物である。このような、本件マンホールの位置、形状等に照らすと、たとえ、それが競技者から明確に視認可能であったとしても、ふたをする等の措置が執られるべきであり、これにふたがされていないことは通常有すべき安全性を欠いていたものといえ、被告には、本件マンホールの設置又は保存に瑕疵があったものというべきである。 本件マンホールは、少なくともその周囲に行けば、存在を容易に確認できる程度には視認できたものというべきである。そのような状態のもと、Xはその周辺に落ちたボールを2度にわたって打ったにもかかわらず、かつ、同人は本件ゴルフ場をよく利用しており、コースについては熟知していたと推認されるにもかかわらず、暫定球が斜面を戻ってきたことから、あわててこれを避けようとして後ずさりを数メートル行い、本件マンホールに落ちたものであるから、本件事故は、もっぱら、周囲の確認を怠り、暫定球に気をとられて不用意に後ずさりしたXの過失によって発生したものといわざるを得ないのであり、過失相殺として7割を減ずるべきである。 判例タイムズ1368号164頁 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.06.08 16:06:18
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