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カテゴリ:日本と世界の経済を憂う
民主党・菅直人内閣と日銀は、8月30日、急激な円高・株安に対応するために金融対策を発表した。
円高被習に若しむ中小企業業者やコスト削減のために過酷な長時間労働を強いられる労働者の苦境を打開するものになるならいいが、私は、結局、バブルになるのではないかと懸念する。 【写真は日本銀行福岡支店】 ◇ ◇ ◇ 日銀の追加金融緩和は、この日の臨時金融政策会合で決定したもので、09年12月に導入した、政策金利と同じ年0.1%の固定金利で資金を供給する「新型オペレーション」の規模を20兆円から30兆円に増額し、供給期間を従来の3カ月物に加えて6カ月物を導入する措置。 市場金利の低下をいっそう促進して、金融面から景気にてこ入れしようというものである。 しかし、市場は、円高水準のままで、政策への反応は弱い。 現在、日本経済が陥っている最大の問題は、賃金の抑制や肩用の悪化によって、個人消費が低迷し、内需・家計がやせ細ったことにある。 そのことに手をつけず、資金供給を増やしても、日本経済が好転する効果は得られるはずがない。 これまでの金融緩和でも、資金は生産活動の主役であるところの中小企業に回っていないのである。 その原因は内需不足とともに、都市銀行による貸し渋りが犯罪的と言わざるをえない。 実体経済に、資金が回らない中で、金融緩和を拡大すれば懸念されるのは、マネーが投機に使われること。 新型オペレーションの拡大に、臨時金融政策会合でただ一人反対した須田美矢子審議委員は「長い目で見てバブルの温床につながるリスクを高める」と表明。 白川方明総裁自身も「効果だけあって副作用がないということはない」とバブルにつながる可能性を否定していない。 ◇ ◇ ◇ 今の円高で、限界点に達している中小企業の救済は、待ったなしの政治課題だ。 中小企業は、リーマン・ショック以来の内需の冷え込みに直面して、円高を口実にした親企業による下請け単価の買いたたき、下請切りに泣かされてきた。 一方、大企業は、200兆円を超える莫大なためこみ金を蓄えている。 急激な円高の時にこそ、大企業のこのためこみ金を吐き出せと、政府は指導すべきなのに、大企業の利潤第一主義の無法にいっそうの揖車を掛けている。 ◇ ◇ ◇ 円高の背景には、自動車や電機など一握りの輸出大企業による大量生産・大量輸出のシステムがある。 それが、下請け中小企業への単価の引き下げとなり、大企業では正規労働者の非正規労働者への大量の置き換えとなり、さらにはリストラと過密労働の強化、サービス残業の横行、賃金の引き下げとなって、これがさらなる大企業の利潤追求のテコとなっている。 しかも、今回の円高を口実に、自動車や電機などの横暴勝手な奴らは、「産業空澗化」の動きも発言している。 経済産業省が、8月27日公表した、国内企業約200社への円高緊急ヒアリング調査によると、1ドル=85円の円高が継続した場合、製造企業のうち4割が生産工場や開発拠点を海外に移転すると回答している。 こんな売国奴的な態度を取る大企業には、「日本を出て行きたいなら、出て行け!」といいたい。 いまこそ、労働者、中小企業の犠牲のうえに、一握りの大企業だけに富が集中するという異常な日本経済のシステムを変更することなしには、再生は難しいことを訴えたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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