1987年公開のアメリカ映画「グッドモーニング・ベトナム」はベトナムに派遣された空軍兵DJが兵士達を笑いとロックで癒し、ベトナム人とも触れ合い、戦争の冷酷さに翻弄される5ヶ月を描いた作品です。
DJのテンポの良い語り口や戦争映画としては異色な笑いやユーモアもある映画ですが、最後に流れる曲「What a Wonderful World(この素晴らしき世界)」にこの映画が全て集約されているような気がしました。
泥沼化したベトナム戦争(1965-1975)が終わり、荒れ果てた大地に上る太陽の映像と共に流れた「この素晴らしき世界」は戦争を繰り返す人間の愚かさを天上から諭すような威厳もありました。
「Louis Armstrong(ルイ・アームストロング) 1901-1971」の楽曲で1968年にアルバムが
リリースされ作詞・作曲は「ジョー・ダグラス」です。
ジョー・ダグラスはその当時始まっていたベトナム戦争を嘆きこの曲を作ったと言われています。リリース当時はそれほど評判にならなかったこの曲がビッグヒットに繋がったのはこの
「グッドモーニング・ベトナム」がきっかけでした。
今年この曲を「パラオリンピックの閉会式」で7本指のピアニスト「西川悟平」さんが演奏しました。その時は「何故この曲を?」と思ったのですが、後日NHKのドキュメンタリーで西川さんが指の不調(ジストニア)から3本の指が使えなくなり、医者からは「プロのピアニストに戻るのは不可能」と宣告されながらもプロのピアニストとして奇跡の復活を遂げたことを知りました。
もう一つは今年ニューヨークの地下鉄構内で暴行を受けたジャズピアニスト「海野雅威」さんのドキュメンタリーで、日本での手術後無事回復しニューヨークに戻りピアニストとして新たな意欲を燃やしている様子のBGMに「この素晴らしき世界」が流れていました。
改めて考えるとこの曲の本当の意味は「決して素晴らしき世界ではないけれどその中でもがき苦しんででも何か自分の星のような物を見つけよう」ということなのかなぁと。
検索して歌詞の和訳を見てみましたが、何気ない日常を優しい言葉で書いているようで何だかホッとしました。詩の最後の部分です。
『赤ちゃんが泣いている 彼らは大きくなって 多くの事を学ぶだろう 僕が知り得る以上に
そして僕はひとり思う なんて素晴らしい世界なんだ』