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テーマ:読書(8467)
カテゴリ:読書 原田マハ
「同じ本を買ってしまったので」と頂いた本が原田マハ著「夏を喪くす」です。絵画や美術館がテーマではない同氏の本を読むのは初めてでした。4編から成る短編集で主人公は各編とも40代の女性で「仕事を続け結婚もして場合によっては恋人の確保もしている」野心家で自らの欲望に忠実な姿が描かれています。彼女たちの人生も右肩上がりと思っていると「夏を喪くす」の主人公は癌が見つかったり、「ごめん」では夫が仕事中の事故で植物人間にという展開で今まで培ってきた物を「喪くす」状況からまた新たな人生へ向かって行くという女性が本来持っている精神的逞しさが描かれています。 4編を読み終えての感想は何か美術館で絵画を見るのと同じように登場人物の小説の中に書き記されていない心の奥底の思いやその後の人生については読む側が自由に想像してみて下さいという感じがあります。 マリの最後の晩餐は「パストラミサンドイッチ」クロの最後の晩餐はマリ手造りの「ポトフ」 唯一の絵画繋がりの4編目の「最後の晩餐」にはメトロポリタン美術館や「ジョージア・オキーフ」の絵も登場して興味深く読みました。舞台は「9.11(2001年のアメリカ同時多発テロ事件)」の前と後のニューヨークで事件前に「ジェフリー・スミス・ギャラリー」に勤務していた主人公「マリ」と同僚であり同じアパートをシェアしていた「クロ」とのほろ苦い物語です。ある日アパートのキッチンでクロが「マリにとっての最後の晩餐って何?」と尋ね「ツインタワーの近くにあるシュマイヤー・デリカテッセンのパストラミサンドイッチ」と答えます。どんなサンドイッチ?と調べてみるとニューヨークの名物サンドイッチのようで原田マハ氏が「MOMA」に勤務していた時の好物だったのかなぁと・・。 コロナ禍にお持ち帰りしたトルティージャとスペイン繋がりのマンチェゴチーズ。 同氏の小説の中の印象深い食べ物と言えば「暗幕のゲルニカ」に登場したスペイン名物ジャガイモのオムレツ「トルティージャ」で、主人公のスペイン人の夫はパンに挟んで食べるのが大好きでした(私も真似してみました)彼にとっての所謂「最後の晩餐」で皮肉な事に朝食に食べたその日に9.11の被害者となってしまいます。シンガポールのスペインレストラン「BINOMIO」で運よく美味しいトルティージャを見つけ必ず注文する一品でした。 「最後の晩餐」に話を戻すと9.11の前にクロが愛する人を好きになってしまったマリは自らの背信行為の自責から日本へ帰国、初めての展覧会の企画を任されたクロがマリに送るつもりだった招待状の9月15日という日付け、そしてその4日前の事件の日に忽然と姿を消してしまったクロ・・。誰も住まないそのアパートの家賃を今でも振り込み続けている人物は誰なのか・・。ちょっとサスペンス風でもあります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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