よみがえれ日本の水産業
昨年3月の東日本大震災からはや1年4ヶ月が過ぎています。 太平洋沿岸を襲った津波により、各地の水産業は大きな打撃を受けました。被災地では、関係者が復興のために様々な努力をされていることでしょう。 さて、そんな被災地の一つである宮城県気仙沼では、東北の水産業だけではなく、日本全体の水産業を成長させるためのヒントとなる取り組みが行われているようです。 まずは日本の水産業の問題点に触れたうえで、その取り組みを見ていきたいと思います。 (※ 株式投資とは直接関係ない話題なので、興味の無い人は読み飛ばしてください)■ ■1.日本の水産業の問題点 日本の水産業の問題点を分かりやすく記述した本として、『日本の水産業は復活できる!』という書籍があります。 著者はマルハニチロ水産の社員として北欧の水産事情を知り抜いた方で、日本の水産業の課題は、「早いもの勝ちのオリンピック方式の漁獲方法」にあると主張します。 具体的には、個々の漁業者が早いもの勝ちで水揚げすることで、漁場・水産加工・販売の各段階に、以下のような問題点を起こしていると指摘しています。(1)資源量が減少する(漁場の問題) 個々の漁業者が先を争って漁を行い、未成熟の小型魚を含めて獲ってしまった結果、個々の漁場で資源量が減少しています。 例えば、常磐沖から北海道にかけて漁獲されるキチジは、1960年~80年頃は毎年1.2万トンが水揚げされていましたが、1998年以降は年0.2万トンを割り込む水揚げ量となっています。獲れた魚のサイズデータを見ても、1973年は平均17~18センチ前後だったものが、98年以降は8~10センチの小型主体となっっています。 魚の重量当たり単価は、体長の大きいものほど高くなる傾向があります。すなわち、漁が減るとともにサイズが小さくなることは、数量と単価がダブルで減少することを意味します。(2)水揚げ量の変動が激しい(加工の問題) 漁業者が先を争って漁獲するため、うまく獲れた時は水揚げがまとまる傾向があります。 水揚げを受け入れる加工場としては、大漁に備えて大きな処理設備が必要となるのですが、需要のピークに合わせて投資をすれば設備の稼働率は落ち、結果として償却費等の固定費が重くなります。(3)魚価が値崩れしやすい(販売の問題) 水揚げ時期が集中するため、市場での需給バランスが崩れやすくなります。 また、加工業者の処理能力を超えた水揚げがあった場合、鮮度が落ち、飼料用など安い価格で販売されることとなってしまいます。■ ■2.気仙沼の水産業における取り組み 7/26の日経新聞の18面に以下のような興味深い記事が記載されていました。 気仙沼では震災と津波によって水産物の加工設備の処理能力が半減してしまい、大きなボトルネックが生まれることになったのですが、そのボトルネックを解消するために新たな操業方法を実施したところ・・・・水揚げ量の平準化・魚相場の値崩れの抑制・将来的な資源量の回復の可能性 といった、日本漁業の問題点を解決するような成果が出ているそうなのです。(おまけに燃料費など各種の経費も削減出来ました。) 少し長いのですが、以下はその記事を抜粋したものとなります。(内容は一部を省略しています。)「気仙沼の漁業者が共同操業」 宮城県気仙沼市の遠洋漁業者たちが今年4月、全国でも例のないグループによる共同操業を始めた。東日本大震災で水産物の加工施設が大きな被害を受け処理能力が小さくなり、漁獲量を調整する必要があったためだ。グループ操業で船の燃料代を減らせたほか、水揚げした魚の相場が安定するなど漁業者にとってのメリットも表れ始めた。 昨年の震災では、遠洋漁船の大半は沖に出ており被害を免れたものの、港の加工・冷蔵施設は全滅状態となった。現在も震災前の半分以下しか復旧していない。 漁獲と同様に水産業に重要な加工流通の機能の大半が失われたなかで、どのように漁を再開するか。漁業者と流通加工業者の双方が打ち出したのがグループ操業だ。 これまで個別に漁に出ていた13隻を3~4隻に分け、出港と水揚げの時期を調整する。 漁場を近場に変え、1回の出漁期間を従来の40日以上から10日ほど短縮。1航海あたりの漁獲量を3割程度減らす代わりに年間の出漁回数を各隻1回増やした。1週間に3回の水揚げがあるよう割り振った。 狙いの一つは相場の大きな変動を抑えることだ。従来は加工業者が処理できないほど水揚げが集中する日がある一方、10日も続けて水揚げがないこともあった。以前は1キロ500~1,000円の幅があったメカジキ相場は、900~1,000円で安定している。 もう一つの狙いは漁にかかる経費の削減だ。これまでは漁場の確保や水揚げは早いもの勝ちだった。競争のため船の速度を上げざるを得ず、必要以上に燃料を使っていた。グループ操業により水揚げ金額の約4分の1を占める燃料費を燃料費を1割以上減らせる。 中長期的には資源回復につながると期待する声もある。加工処理能力に合わせて漁獲量を合わせて漁獲量を抑えれば、減少した資源の回復にも有効だ。 いかがでしょうか。 企業に置き換えれば、設備の稼働率が上がり、変動費が下がり、商品の出荷単価が上昇したようなものです。気仙沼の漁業に投資を出来るならば、業績回復株として結構な金額を預けたくなるような改善だと思います。 僕はあくまでも部外者であり、漁業にまつわる歴史や込み入った事情は分かりません。故に的外れなことを書いてるのかもしれませんが・・・・ 「被災地で生まれた漁獲方法が、日本の水産業を復活させる糸口となった」 数年後、そんなロマンある物語が生まれることを願っています。 にほんブログ村