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THE Zuisouroku

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2024/03/20
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カテゴリ:小説












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 宮崎女子医大病院の建物は既に廃墟となっていた。病院にも襲い来た巨大生物たちの死骸が転がっている。正面玄関には、一面にガラス片が散らばっている。明太は一瞬、これは絶望的かな、との思いがしたが、その嫌な気持ちを振り払い、明太は階下に通じる階段を探した。
 大きな大学の、附属病院と言う事もあり一階部分だけでもかなり広い。ガラス片や瓦礫を避けながら丹念に探すが、階段は目立たぬ所に作られていてなかなか見つからない。明太は広い病院の一階部分を幾度か隅々まで探って、漸くその階段を見つけた。それはエレベーターホールの脇に小さく作られた職員専用の階段で、その厚い鉄の防火扉は固く閉じられていた。これは階下に生存者がいる可能性を示すものだった。明太は必至でその防火扉の開き方を探った。
 それが電動式ならば、壁のどこかにその開閉ボタンがあるはずだが、それは見当たらない様だ。職員用の質素な造りのそれは、どうやら手動式らしい。ドアノブを、がしゃがしゃといじると手応えがあり、ロックが外れた。明太は重い鉄の扉を内側へ押した。階下への階段は、閉ざされる以前の状態を保って、清潔だった。埃一つ落ちていない。その階段を降りるとまた、別の防火扉が、行く先を閉ざしている。地下二階の入り口である。明太は同じ事を繰り返し、防火扉を開いて階下へと降りて行き、ついに地下四階に至った。閑として真っ暗な、地下四階の空気は、地上の地獄図のそれとはまったく違っている。



 明太はそれを開く前に一呼吸間を置いた。分厚い鉄の扉を叩くと大きな音が響いた。生存者がいるならそろそろこの、地下四階辺りではないか、地下五階まである建物も少なくは無いが、そろそろ見当を付けても良い頃合いでは無いか?明太はまた、強くその鉄の扉を叩いた。

 母がいるはずの、佐伯を目指している西さんの長男利見もまた、『大宝丸』の母港へと、少し船足を速めた。もうすぐ懐かしい佐伯の港はみえてくる。佐伯の町は、他の小さな町や村と同じ様に平穏だ。電気やガス水道などは使えないが、皆で助け合えば十分安全を保つ事が出来ていた。
 不思議な事だが全国で、小さな農漁村や町々は無事だったのである。
 利見は未だ、それを知らずに佐伯の港へと急いでいた。

                      ☆

 国防長官の、グレイの指示で日米艦隊に対する補給作戦は準備されていた。ドラム缶に物資を積めて、空中から投下すると言う古典的な方法で行うには逆に、手間が要った。
 食料医薬品から弾薬までを、ドラム缶に詰め込むのである。相手は第二次世界大戦当時の艦隊だ、受け取る側にはそれが分かりやすいのだが、今の時代にこの方法での補給は経験が無かった。
 補給の実施はまだ時間がかかるが、事前にこの作戦の実施を知らせる電文が、日米の艦隊に対して打電された。
 大艦隊への補給である。用意するのも運ぶのも、大変な作業である。日米艦隊に対して、こちらも輸送艦を使えば良さそうなものだが、海上の安全は保障されていない今の段階で、それはリスクが大きすぎる。必然それは、空輸に頼らざるを得ない。
 何れにしても、日米艦隊からは、その督促電が頻りに打たれているのだ。あまり待たせ過ぎては、相手が誤解して、こちらを敵と思うかもしれない。

「準備を急がせてくれ」グレイはその進捗を聞き、ただ一言、こう言った。

 一方、山本の第一艦隊は目標海域に接近しつつあった。山本五十六は、コーヒーを受け取り、ほっと一息入れた。作戦は明日、決行される。
 『大和』はじめ、艦隊は間もなく投錨し停泊する。 
 南雲の第三艦隊も、大和の砲撃に合わせて行動する事に決した。南雲の攻撃機も明日、早朝からニューヨークを攻撃、そのあとに山本らが砲撃で止めを刺す。他の都市へもこれを繰り返すのである。ハルゼイの航空隊はすでに、シカゴへの攻撃を終えている頃だろう。
 ハルゼイに対して、明日は、南雲と合同作戦を取る様にとの、要請電を山本は打電させた。


 
「ハルゼイに一番手柄を与えてやったのだ、今度は我々の要請にこたえてくれるだろう」
 山本は、ゆっくりとコーヒーをスプーンでかき回しながら呟いた。

 (続く)
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Last updated  2024/03/20 05:50:59 PM
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