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チラシの裏の幻視録

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2008年06月07日
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カテゴリ:原子力
こんばんは。

 今回は、以前取り上げた「小さな町の「『原子力戦争』」に関連して、高レベル放射性廃棄物処分について語るために最低限必要だと思われる基本的な話を少々。
 過去に知人の個人的なホームページが反対派によって閉鎖に至ったこともあり、ここではあまり原子力や燃料サイクルに関する突っ込んだ話は取り上げたくないのですが、インターネット上での感情的な反対論を見ると全く理解しない(しようともしない)ままに反対している方が多いため、あえて危険を冒して書き込むことに致しました。


 さて、原子力発電所で使われた使用済燃料には、核分裂生成物や(軽水炉では)役に立たない超ウラン元素などの他に、まだ燃えるウラン235が大量に残っており、また、燃えないウラン238から新たにできたプルトニウム239等も含まれています。

 これらをそのまま棄てると言ふことも出来るのですが、プルトニウム239は核兵器に使われる程の高いエネルギーを持つ放射性核種であり、これは実にもったいないことです。

 そこで、これらを使用済燃料から分離し、ウラン燃料やMOX燃料の原料を製造しよう、といふのが再処理工場であります。

 再処理工場では、燃料は金属被覆管ごとギロチンでブチブチザクザク(スパスパではない)とせん断され、硝酸で溶かされて被覆管と分離されます。
 この溶液から化学的手法(めんどくさいので解説は省略)でウラン/プルトニウムが抽出され、強力な電子レンジで乾燥されて粉末となります。
 ウランだけ、あるいはプルトニウムだけで抽出することも可能なのですが、六ヶ所村の再処理工場では核兵器への転用を防ぐために、プルトニウムはウランが混ざった状態で抽出されます。
 再処理工場から出てくる製品は、普通の燃料の原料となる「ウラン酸化物の粉末」と、MOX燃料の材料となる「ウランとプルトニウムの混合酸化物の粉末」となります。

 これらのプロセスの中で出てくるのが放射性希ガスやトリチウム水等の気体/液体廃棄物、そして燃料の残渣である高レベル放射性廃液であります。
 この廃液は極めて高い放射能を持つわけですが、その量は重量比で元の使用済燃料のたったの3~5%! 残りの95~97%は燃料としてリサイクル可能と言ふ事になるわけです。
 先に「実にもったいない」と書いた理由がわかっていただけるかと思います。

 この高レベル廃液をガラスに溶かし込み、厚めのステンレス容器(キャニスター)に注入して固めたものが所謂ガラス固化体、高レベル放射性廃棄物となります。

 実に大雑把ですが、ここまでが高レベル放射性廃棄物製造のプロセスです。
 このガラス固化体は廃棄物ではありますが、ウラン酸化物、MOXの粉末とともに、「再処理工場の第三の製品」と言っても良いものかも知れません。



 さて、「ガラス」と聞くと「もし割れたらどうするの?」と感じるのが、普通の皆様の反応でありましょう。
 ビール瓶が割れると中のビールが出てきてしまうわけでありますが、ガラス固化体はこれとは違います。高レベル廃棄物はガラス瓶の中のビールではないのです
 瓶自体に含まれる着色料のように、瓶自体のガラスの分子の間に閉じ込められるものです。

 ビール瓶をいくら細かく砕いても着色料である多硫化鉄を取り出すことができないのと同様に、ガラス固化体は割れたからといって中身が出てくるわけではありません
 話は少しずれますが、普通の自治体では、ゴミ収集時に青など特殊な色のついたガラス瓶をリサイクルの対象としていません。これは「ガラスに溶け込んだ分子を抜く事は非常に困難である」ことによるものであり、このことからもガラス固化体から放射性物質が簡単には出て来ないことが解ると思います。(厳密には『全く出てこない』わけではなく、希ガスなどは非常にゆっくり出て来るやうですが)

 現在の計画では、最終的にはこのガラス固化体をさらに分厚い鉄の容器に入れ、地下300m以深の岩盤に開けた穴に埋めることになっています。

 これが、東洋町が応募を撤回した「高レベル廃棄物最終処分場」であります。

 ガラス固化体は、処分場に埋められた後も放射性核種の崩壊によってじわじわと熱をだします。しかし、ガラスやステンレスや鉄容器や(埋めた後の)周辺の粘土や岩盤を溶岩にしてしまうやうなものでもありませんし、一部反対派が言っているやうに臨界・核爆発が起こることもありえません。

 また、放射能が自然界レベルになるまでに数万年かかるのは事実ですが、人が立ち入る場所に保管されるわけではありません。埋設が終わった後は、埋め戻しされて人が簡単にはアクセスできないようになります。
 NUMOが作成した資料では、下記の記載が有ります。

> 固化直後のガラス固化体は、人間が近づくことができないほど高い
>放射能を有しています。放射能はその後減衰しながらも長く残存する
>ため、長期間にわたり人間の生活環境から隔離する対策が必要です。
> 例えば、1000年後のガラス固化体表面での放射線の強さは、人間が
>一生の間に受ける自然放射線に相当する量を4時間で受ける程度の
>ものです。


 と言ふ事ですので、恐らく1000年後のガラス固化体表面の放射線は数10mSv/h位なのでしょう。
 これは確かに自然界と比べたら桁違いに高いものですが、実は原子力発電所の液体廃棄物処理系の配管やタンクにも、これと同じレベルのものがあります。これらは、鉛のマットをグルグル巻きつけたり、距離をとったりすることで対処が可能なレベルです。

 ガラス固化体は、その外側に分厚い鉄の容器、緩衝材、そして地上までは岩盤・地盤合わせて300m以上があるわけですから、放射線防護の意味では、発電所の配管などよりずっと安全に保たれていると思います。



 再処理や最終処分については、「MOX燃料のリサイクルは?」とか「希ガスの回収・貯留は?」とか「地震対策は?」とか「高速炉は?」などの魅力的な話題もあるのですが、ここは原子力関連の専門的・技術的な話題を扱うブログではありませんし、書き始めるときりがないのでこの辺で終わりにします。

 さらに詳しく知りたい方は、原燃やNUMO、電事連などに聞いてみて下さい。




 知人曰く、 「最終処分場は発電所や再処理施設よりも桁違いに安全で、原子力施設の中では一番安全なのに。」
 同感。

 リスクの大きさでは、「原子力発電所」>>「再処理施設」>>「中間貯蔵施設」>>「最終処分場」の順なのです。





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最終更新日  2008年06月11日 01時12分39秒
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