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テーマ:今が旬の話(414)
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これまでの経験では、伯爵府との職務上の交渉は、彼にとってきわめて簡単なものであった。彼は、村長との会談が気にならない事を、そのことで説明づけようとこころみた。これは、一方では、彼の問題の処理に関しては外面的には彼にきわめて好都合な一定の原則がはっきり打ち出されているという事実にもとづくものであったが、他方では、伯爵府の仕事にみごとな統一がとれているせいでもあった。しかも、まさかここまで統一が及んでいるまいと思われるようなところにこそ、かえってとくに完璧な統一が支配していると感じさせるものさえあったのである。Kは、ときおりこの状況を考えてみるたびに、自分のおかれている状況は満足すべきだと思いかねなかった。もっとも、そうして満足していい気になったあとはいつでも、ここにこそ危険があるのだと、すばやく自分に言い聞かせるのだった。
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Last updated
2007.11.17 02:44:34
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