そして迷子。態度のでかい、迷子。
知らなかった。 というか、行き先を確認していなかった。 車内アナウンス 『次の停車駅は、ケルン・メッセ=ドイツ』 って、どこ。 車内の電光掲示板を見ると、次の駅は『ケルン・メッセ=ドイツ』 その次の駅は、よくわからないところだった。 つまり、とりあえず、ここで下りればいいんだな? ケルンはフランクフルトからICEで56分のところと書いてあった。 自分の時計を確認する。1時間をすこし過ぎているが、 時間的には確かにここで下りるべきなのだろろ。 そこで車内電光掲示板を見て笑ったのが、 空港駅を数十分遅れて出発したはずなのに、 到着予定時刻を5分過ぎた程度なのだ。 うーん。ドイツ。 とりあえず、ICEが止まるのだから、大きな駅なのだろうが、 とにかくケルン中央駅行きの電車の乗り方が分からない。 どうしよう、どうしよう。 ケルン中央駅で待っててくれている(はずの)人をこれ以上待たせるわけには行かない。 ここは、いつものアレだ!! Hey, タクシー!! そんな私は迷子歴十数年のベテラン。笑 ”Koln Hbf, Bitte.” 少し変な顔をする運転手。 何ですか。たった今駅から出てきた外国人がそんなに珍しいですか。 それとも、通じなかった?それは恥ずかしいな。 ”Hbf?” ”Ja, yes.” あ、通じてた。 そして、首をかしげる運転手。 何? 何? そうなんです。今ならわかる。その意味が。 ケルン中央駅は、ケルン・メッセ=ドイツ駅のお隣の駅だったんです。 そりゃ、今来た道を引き返し、電車で行けよ、って話ですよね。 何も知らない私。タクシーに乗り込む。 イヤに広いな、このタクシー。 あれ、このタクシー、 あのエンブレム。 もしかして メルセデス・ベンツ? うわー。日本では高級車。ドイツでは公共車。(タクシーは公共じゃないけど) 窓の外を覗いてみると、道を走るタクシーはベンツにBMWにVWにフォード。 バスまでベンツ!! 信じられん。 まぁ、ベンツは事故に強い(強いというのかは分からないが)んだから、 この国では値段よりも安全性をとるのが普通なんだろうな。 しかし、一度ベンツだと思うと、急に緊張する貧乏人。笑 窓の外に見えてくるのは一際異彩を放つ……Domだ!! 「うわー、すげ」 と本当に声を出してしまった。 初めて見る人は、誰でも圧倒されるだろうな。その存在に。 確かに、これは、宗教心を駆り立てられても仕方ないだろう。 とか何とか感動してましたら タクシーちょっとおかしい。 あれ。 Domがあんなにでかく見えたってことは 中央駅はすぐ近くのはず。 何でこの人こんな遠回りしてんだ? あ゛ー!! ちくしょ 距離稼ぎやがったな!! と、は、思ったものの。 きちんとつれてきてくれたんだし。 ライトアップされたDomも見れたし。 まずしゃべれねぇし。 よしとしよう。 次なる問題は、中央駅の一体どこに待ち人がいるか、だ。 想像以上に駅構内はでかい。 絶対無理。 いるかいないか分からない人を探してでかい荷物持ったままうろうろするのは 危険すぎる!! とりあえず、ここは駅の裏口だから、Dom側に回ろう。 見つからなければ、さっきの方法(タクシー)を使えばいい。 アンジェラさん(仮名)。 特徴は赤いコートを着た、ウエルカムボードを持った髪の長い女性…だったな。 全くの旅行者だと思われないように、 顔はまっすぐ前を向いて、重いトランクをさも軽そうに転がし 堂々と!! 目だけキョロキョロ。 余計不審だ。 赤いコート赤いコート… って、めっちゃアバウトー!! 右にも左にも赤いコート!! 長い髪ー!!当たり前ー!! せめて年齢とか身長とかさー。 堂々と。 端から端まで歩いたが、見つからない。 外に出ようと思ったが、行って帰るだけで方向が分からなくなる私。 危険すぎる。 元の道を戻ってみよう。 と、目の前(50メートル先)の角を横切る女性が気になった。 長い髪。赤いコート。手には折りたたまれた黄色い画用紙。誰かを探している風…。 ダッシュ。 ダーッシュ!! ゴンガラゴロゴロ大きな音をたてながら走った!!そして斜め後ろからそっと その画用紙を覗き込む。 『Tada(仮名)…』と読める。 アンジェラ(仮名)だ!!絶対そうだ!! 私は叫んだ。 「えくすきゅーずみーぃぃぃぃ~」 合計30キロの荷物が私の体力を奪っていた。 声が裏返る。間抜けだった。 振り返った女性は、とても綺麗だった。 背が高く、細くみえるが、筋肉質。 そんな彼女は、私(と私の荷物)を見るなり満面の笑顔になった。 『Tada(仮名)?』 「Yes!! I’m so sorry, too late」 とりあえず、英語の文法はよくわからなかったが謝った。 彼女は2時間近くも私を待っててくれていたのだ。 『大丈夫よ、電車が遅れたの?』(推測) ドイツ語だ。 「そうなんです。しかも着いたのはメッセ何とかって言う駅で。タクシーで来ました」 意味不な英語で答える。 『…もしかして、ドイツ語全く?』 はい。 『大丈夫。私も少し英語できるから』 と言いつつ私のトランクを持ってくれた。 重くないはずは無い、が、彼女は軽々持ち上げた。 『電車でこれからあなたが泊まる所まで行きましょう』 はい。そうですね。 私はケルンに住んでいる、と最初に言ったかもしれない。 が、実は住んでいるのは隣の市。 ○○市。と言ってもすぐに思いつく人は少ないだろうから、 とりあえずケルンの名を出したのだ。 決して嘘を付いた訳ではない。 アンジェラ(仮名)が、切符を買って来てくれて、 二人で電車に乗り込んだ。思いがけず電車の中は落書きだらけでひどく汚い。 私たちが座った座席も落書きだらけで驚いた。 電車が動き出して2分後、一つ隣の駅に着いた。 『あなたはさっきここに来たのね』 はい? まだその意味が分からなかった。 窓からホームを見ると、『ケルン・メッセ=ドイツ』の名が。 やっと気づく。 とっ、とーなーりーのーえーきー!! タクシーで、15分。電車で2分。 そりゃ、道路の関係もあるけどさー。 いいカモだったさ…私は。 それから20分後に目的の駅に着いた。 『さぁっ、トリさん(仮名)宅はどこかしら!!』 アンジェラ(仮名)その笑顔で。 や、勘弁してください。 知りません。 『私もこの町に来るのは初めてなのよ』 そうでしたか。それではしかたありません。 アンジェラ(仮名)はタクシーの運ちゃんに道を尋ねる。 お、ここもタクシーみんなベンツじゃん。 とか思っていたらアンジェラ(仮名)が、 『わかったわ!!こっちよ!!』 と一生懸命重い荷物を担いで長い階段を下りてくれた。 駅から徒歩4分。 大きな市じゃないが、ベッドタウン。 で、駅から徒歩4分はとてもいい条件なのでは? そして私たちは、玄関のチャイムを押した。 <続く>