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2007.11.21
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 私自身もそうですが、皆さんも、自分がお気に入りのシリーズを一つや二つは持っているのではないでしょうか。 読者の立場からすると、自分が興味ある、あるいは知的欲求に応えてくれるテーマについてシリーズで刊行されることはとても嬉しいことですし、1冊読み終えると 「次はどんな本が出るのかな」 といった期待感が生まれることもあり、その点で単行本とは また違った面があるわけです。

 しかし、企画する側の出版社 (編集者) からすると、単行本とシリーズ本では (抱えるリスクも含め) 大変な違いがあります。 例えば単行本の場合は、残念ながら結果としてその本の売れ行きがあまり芳しくなかったとしても、その1冊のことで済むわけですが、シリーズの場合はその後何点も続いて本が刊行されていくわけですから、刊行したものの売れ行きが良くないとなった場合には、書店の方には売れないシリーズだなと判断されてしまいますし、担当編集者はもちろんのこと、会社としても大変辛い状況に追い込まれます。

 そのため、最初のラインナップの出来が、シリーズが成功するか否かを決定づける大きなポイントとなってきます。 シリーズの第一弾に何を持ってくるかということについては何度も何度も議論を重ね、著名な執筆者の方々を並べたり、できるだけインパクトのあるテーマやタイトルで、しかも数点まとめて刊行して大きくアピールするということが一般に行なわれます。 (ただ、専門書のシリーズの場合は必ずしもそうではないことは、皆さんご承知のとおりです。) 

 シリーズの場合には、 カバーデザインはもちろんのこと、 レイアウトなども最初に決めた形でいくことになるので、 それなりに制限が生まれてきます。 そのため、 「この本はレイアウトも工夫して、カバーデザインもいろいろと考えたい」 、 「この著者には、ある程度ページが増えてもいいから思いっきり書いてもらおう」 などと考える場合には、単行本の方が企画として立てやすいということもあります。

 では、 シリーズ化することの良さは何かといえば、 まず第一には、 読者や書店へのアピールの大きさが挙げられます。 大型のシリーズであればあるほど、注目の度合いも高まります。 出版社としても、そのシリーズに多くの読者ファンを作ることができれば、以降に刊行する本の販売において、それを大きな強みとすることができます。 

 また、ある程度ラインナップが揃ってくると、書店の棚でも目立つようになります。 シリーズとして安定した売れ行きを示すようになると、書店に継続して置いて頂けるようにもなり、単行本とは違って、単品ごとの返品も少なくなります。

 シリーズ名がある程度市場に浸透するようになってくると、執筆依頼の話も比較的スムースに行くことが多くなります。 それは一つには、すでにシリーズの本として刊行したものがあるため、それを見て頂くことで本のイメージを伝えやすいことと、こういうファンが多く読んでいるということをお話していく中で、執筆に前向きになって頂くことができるからです。単行本の場合は、それこそ企画書一枚を持って執筆依頼に向かうのですが、シリーズの場合は多くの話題を持って執筆依頼に向かえるという利点もあります。

 その反面、シリーズの売り上げが芳しくないとなった場合には、大きな影響が出てきます。 売れないシリーズを、ただでさえ場所の奪い合いになっている限られたスペースにいつまでも並べて置こうとする書店はありません。 そのため、 シリーズの中でも比較的売れるもの以外は返品となり、 シリーズとしてではなく単行本と同じような扱いで、各分野の棚に個別に並べられるようになってしまい、シリーズとしての強みは発揮できなくなってしまいます。

 また、売れ行きの良くないシリーズの一冊として執筆をお願いするということは、編集者としても大変心苦しいものですし、結果として、このままシリーズを継続していくべきかどうかの可否も考えなくてはならなくなります。 

 多くのファンをもつ 「シリーズ」 として認められるようになったときには本当に嬉しいもので、単行本の成功とはまた一味違った感動を味わうことができるわけですが、それでも、新刊を出すときには毎回ハラハラドキドキといった感じです。






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Last updated  2007.11.22 01:37:09
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