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世に有名な「君主論」の作者は、 何を見て、何を行い、何を考えたのか・・・。
ルネッサンスの黄昏間近かなフィレンツェを舞台に、 縦横無尽に活躍した一人の「外交書記官」。
この、あまり風采のあがらない一庶民的な外交書記官こそ、 後世、「マキアヴェリズム」という、ある種、忌まわしいイメージを伴って想起されてきた男だ。
見落としてはいけないのは、この男は、「外交官」ではなく「外交書記官」にすぎなかったことだ。
著者の「塩野七生」は、この男が暮らしたフィレンツェに住み、 同じ街の住民である親しみを込めて、 この誤解されがちな男の等身大の相貌をよく伝えている。
中公文庫で約630ページもあるが、時を忘れ、一気に読ませてしまう。 イメージしていた権謀術数家の像は崩れ、 誠実で忠実で小市民的な官吏としての仕事ぶりに、親しみと愛しさまで感じてしまう。
塩野七生という作家に初めて出会った記念すべき一冊でもある。
いのち短し 恋せよ乙女 紅きくちびる あせぬまに 熱き血潮の 冷めぬまに 明日の月日は ないものを
マキアヴェッリもある年齢に達した頃から、 心からの共感をもって口ずさんだのではないだろうか・・・、と、塩野女史はいう。
昭和63年度女流文学賞受賞 中公文庫 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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