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2023.10.21
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一瞬、握手でも求めてきているのかと思った。が、すぐにちがうと判断した。さしだされている掌を握って立たせてもらいながら、かれがめずらしく腰に愛刀「関の孫六」を帯びていることに気がついた。

 

 俊春の腰にも、かれの愛刀である「村正」がよりそっているのを認めた。

 

 俊冬と俊春は、ともに名刀を所持している。それにもかかわらず、二人ともめったにそれを帯びることはない。それをいうなら、腰に帯びているときでもを遣うことはほとんどない。

 

 おそらく、​子宮內膜異位症​ 刀を遣わずとも体術やほかの武器で充分ってわけなのであろう。

 

 二人とも、刀をどこか神聖化している節が見受けられる。それを遣うことが、神を冒涜するに等しいって思っている感がある。

 

 気持ちはわからないでもない。

 

 おれ自身、「之定」にたいしてそういう畏れおおいものを感じている。

 それだけでなく、「」は親父の形見である。ゆえに、余計にそんな気持ちを抱いている

 

「にゃんこがぐずぐずしているから、主計は刀にまで妄想がうつってしまってしまいましたぞ」

「だまれ、わんこ!」

 

 俊冬は俊春を怒鳴り散らしてから、おれとに、めずらしく気弱な笑みが浮かんだ。それは視覚でわかったが、いまの言葉の意味はまったく理解できなかった。理解しようにも、うまく咀嚼できなかったようだ。

 

「もう一度いおうか?肇君。おれたちも、きみとおなじところからやってきたんだよ」

 

 はい?なんだって?

 

 懐かしいはずの本名で呼ばれることじたい、わけがわからない。

 

 つまり、まったく頭が追いついていない。

 

「仕方がないな」

をよせてきた。

 

「おれたちは、きみが考えているような存在じゃない。ミスターの息子は、きみだけだよ、肇君。それから、あいつと勝負してくれてありがとう。アイス、うまかったよ」

 

 そうささやかれた瞬間、頭のなかで強烈な光がスパークした。

 

 いろんな映像が、フラッシュバックする。

 

 思わず、その衝撃に耐えかねて不覚にもふらついてしまった。

 その瞬間、俊冬の掌がおれのからはなれて腕をつかんだ。

 

 そのおかげで、なんとか倒れずにもちこたえることができた。

 

「肇君、おぼえてくれているかな。おれたち《・・・・・》は、きみと会っている。子どものころに、だけどね。ある日の夕方、京都府警のちかくにあるちいさな公園で、きみはこいつと……

 

 俊冬は、そういいながら俊春の頭を乱暴になでた。

 

「剣道の勝負をしてくれた。そのあと、をごちそうになった」

「『おいしいね』っていったら、にゃんこに怒られた」

 

 俊春が笑いながら肩をすくめた。

 

「『うまい』、だ。そのほうが男らしい」

 

 俊冬の副長似のに苦笑が浮かび、すぐに消えた。

 

 映像が、そのときの映像が脳裏にくっきり浮かんできた。

 みたくてみたくてたまらなかった懐かしいお宝映像が、何十年ぶりかにスクリーンに映しだされたかのようだ。

 

 頭も心も、めっちゃ混乱しまくっている。なにがなにやらさっぱりわからない。眼前にいるのが、いったいなになのか?わからなさすぎて、かんがえる気力をもてない。

 

 頭がじりじりとしている。しかし、それもかかっていた靄が晴れてゆくように、しだいにひいてきた。

 

 刹那、そのときの映像とかわした会話が結びついた。

 

 そうだ。思いだした。

 

 小学校のときだ。おれは警察の剣道道場に通っていて、その日はめずらしく親父が稽古をつけてくれた。それから、いっしょに家にかえるというので、おれはうれしくってならなかった。

 

 稽古をつけてもらったこともそうだが、いっしょにかえって晩飯をいっしょに喰えるってことが、最高にうれしかったのである。

 

 親父は、がはいっているときは当然のことながら、それがはいっていないときでもなかなか時間がとれない。

 

 一緒に食事をするっていう、フツーのことがなかなかできないのだ。

 

 それは兎も角、親父が用事があるというので、おれは警察署のちかくにあるちいさな公園で親父をまつことにした。

 

 かれは両肩をすくめると、 そのちいさな公園には、先客がいた。

 

 おれとタメくらいの子どもが、たった二人でいたのである。なぜか声をかけたくなったので挨拶をすると、挨拶し返してくれた。

 

 すると、二人がちかづいてきたではないか。

 

 ちかづいてきて気がついた。

 おおきい子はおれとタメくらいであるが、ちいさい子は年下らしい。

 

 そのちいさいほうの子が、おれの剣道の防具と竹刀に気がついたようだ。

 

『それ、剣道でつかうもの?』

 

 たしか、そうきかれたと思う。

 

 それから、なりゆきで勝負をしたんだった。

 

「あのとき、こいつはおおよろこびした」

 

 俊冬のささやき声とともに、おれを支えているかれの掌に力がこもった。

 軍服とその下のシャツをとおしてもなお、かれの掌の冷たさが感じられる。

 

 かれは、超冷え性なのである。

 

「だましてすまない。おれとこいつは、につくられた兵器なんだ」

 

『をさわっていた。

 

「肇君。それは、ネタかい?おれたちは、そっち系じゃない。溶鉱炉のなかに沈んでいきながら、「I'll b back 」なんていわないよ。生身の身体だ。だいいち、きみはおれたちの子どものころの姿をみているだろう?超合金と人工皮膚では、いくらなんでも成長はしないさ」

「じゃあ、ゴキブリ?」

「あぁ、火星の人型ゴキブリのコミックのこと?あれもちがう。おれたちは遺伝子操作によってつくられたんだ。創作的に表現すれば、非人道的行為によってつくりだされたというやつだね」

 

 いやちょっとまて。そんなの、創作の世界まんまじゃないか。

 現代人であるおれでも、いまかれがいっていることがよくわからない。

 

「アメリカが中心になり、イギリスや日本やほか数か国の研究チームが何年ものときと金を費やし、できあがった最初で最後の人型の武器が、おれとこいつというわけ。ほら、映画や小説でよくあるだろう?






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最終更新日  2023.10.21 19:30:22
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