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はずっと戦場ですごしていたんだ。『9.11』以降からだけどね。中東やそれに関係のある場所で任務についていた」
俊冬が唐突に話しはじめた。
2001年9月11日、アメリカでおこった「同時多発テロ」のことである。
当時、經痛 あのすさまじい映像がテレビで何度もながれた。まだ子どもであったが、あの光景はいまでもはっきり残っているほど衝撃的すぎた。
「元凶を追い詰めた後、おれたちは戦場から解放された。お役ごめんだとばかりにね。大人のやりそうなことだと思わないかい?あとのおいしい一瞬は、自分たちでやって手柄にしようってわけだ。まぁそれは兎も角、それ以降は暗殺や要人警護やスパイ活動を中心に、危険な国の軍事活動の邪魔をしたり、さまざまなテロ組織のテロ活動を阻止したりした。いずれにせよ、世界各地のを、殺してまわったりいろんな破壊活動をやったわけだ。創作的に表現すれば、「修羅の世界に生きる」ってやつだね。そんなあるとき、おれたちはをみせてくれたってわけだ」
俊冬は雲一つない青い空をみあげてから、またつづけた。
「かれは危険で生意気な獣二匹をとしてみ、接してくれた。そして、名を、の名前を授けてくれたんだ。ああ、そうだった。まだ本名を伝えていなかったね。おれもこいつも、つくられたばかりのは「実験体」と呼ばれていた。訓練が開始されてからは、コードネームが与えられた。おれが「Sleeping doragon」、通称SD。こいつが「Mad dog」、通称MD。俊冬と俊春は、その恩人たちからもらった大切な名前だ」
かれはまた、青空をみあげた。
そこにその恩人がいて、をあわせるかのように。
「ここまで話せば、いくらきみでもその恩人がだれだかわかるよね?」
ああ、俊冬。おれがいくら鈍感でも、だれだかわかるよ。
だが、その名をだせなかった。いや、いえなかった。
親父とこの二人が?そう思うと、なんともいえない気持ちでいっぱいになってしまったからだ。
「その恩人の名は、。かれの父上です」
俊冬がそう告げたのは、おれにたいしてではなく副長たちにである。
副長をふくめみんなが、はっとした「そういえば、主計の親父さんはすごい剣士だったって?」 「そうです、斎藤先生。ミスター・ソウマは、誠の剣士であり、誠のです。かれがいたからこそ、かれに出会ったからこそ、おれたちはここにいます。ここにいて、の真似事ができています。かれがいなかったら、おれたちは獣ののまま、百五十年さきの未来でを殺しまくっていたところでしょう」 「かようにすごいだったんだな。なれど、死んだのではなかったのか?」
みなが感心している。 もちろんそれは、親父にたいしてである。 を向け、ささやいた。 の職務を追われることになった元凶は……」
そこでいったんかれの口がとじられた。が、すぐにまたそれがひらいた。
「おれたちが片付けた。興味があれば、話をする。なければ、話さない。いずれにせよ、それは後日だ。いまは、いいだろう?兎に角、それだけはさきに伝えておきたかった」
正直、情報過多である。アップアップしていて、親父の仇が始末されたといわれたところで、実感がわかないどころではない。 ってか、真実ってのがほとんどみえてこない。
ぶっちゃけ、小説のネタバレをされたくらいの感覚しかもてないでいる。
「おれも、いまはまだ」
だから、それだけ答えた。それだけで、俊冬には伝わったはずだ。
「すまない。やはり、いまはまだ伝えるべきではなかったね。それでなくっても、きみはきみ自身のことで混乱しまくっているんだから。しかし、落ち着いたらおれがいまいったことをかんがえてみてほしい。それから、そのさきをきくかきかないかを決めてくれればいい。いま本当に伝えなければならないのは、おれたちはミスター・ソウマにきみを護るということを約束したということだ。そのために、おれたちはここにいる。きみ自身と、きみが大切なものを護り抜くためにね」 「おれを?」 「ああ。おれたちは、ミスター・ソウマに多大な恩がある。きみを護り抜くことくらいでは、けっして返せないような多大な恩だ。それを果たしきるために、おれたちはもっている力を発揮しなければならない。さっきもいったとおり、そうするには憂いや気遣いを抱えていては果たせない。それらをなくしておかないとね」
かれは、そういってから両肩をすくめた。
気がつけば、左腰の「之定」の柄をなでていた。
それは、相馬家に伝わる刀である。親父の形見、というわけである。
そこで思いだした。
以前、五兵衛新田の 「きみの慰めにはならないだろうけど、ミスター・ソウマの殉職にかかわり、きみ自身も重傷を負って 蟻通の言葉に、俊冬は一つうなずいた。それから、おれに お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.10.21 19:43:24
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