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流石に何も知らずに怒られるのは理不尽だからと,夕餉の時分に桂にはみんなから丁寧に事の顛末を伝えられた。
「じゃあ九一に惚れてた女将が私が話した内容を基に三津と九一を脅して,それがここにまで被害が及んだと?」
「つまりはそうやな。どうせ木戸さんは他言しませんから話して楽になれとか色気にやられたんやろ?脱いで九一に迫るような女やからな。」
「は?九一,脱いで迫られたのか?」 植髮價錢
桂は衝撃の連続で全く箸が進まない。 三津は三津で脱いで迫られたのは聞いてないなぁと考えながら,改めて女将の凄まじさに身を震わせた。
「迫られたけど指一本触れてませんよ。私は誰かさんと違って三津やないと興奮せんし,三津と重ねて抱こうなんて愚かな真似はしませんからね。」
入江の一言は桂にとって一番抉られない所を抉った。怖くて三津の方を向けない。
「男の人でも我慢出来る人は出来るんですねぇ。据膳食わぬは男の恥とか言っちゃう方が恥ですよねぇ。自分で自分がだらしないって言っちゃってますからねぇ。」
三津の嫌味に心当たりのある男達が全員黙り込んで俯いた。
「とは言え……周りに吐き出さなきゃいけないほど小五郎さんを追い詰めてるのは私なので責める立場にはありませんけど……。 とりあえず明日は改めて元周様と千賀様にお礼とお詫びを。向こうのお屋敷で数日お世話になりましたし。」
「分かった……。」
桂は何を言われるか頭が痛いとこめかみを押さえた。
翌日,元親の元を訪れた桂は四半刻ねちねちと小言を言われた。
「まず私に嘘の馴れ初め教えたのを詫びれ。 それにお前の女関係のだらしなさはどうにかならんのか。元々お前が出石で一人孕ませて十三歳にも手を出さんかったら松子もお前から離れんかったやろうに。 あとお前だって女将に無防備隙だらけやないか。」
「ごもっともです……。」
『全部元周様には筒抜けか……。こっちの知られたくない事を……。』
そう思って気が付いた。女将に自分の話がされてると知った時の三津と同じ状況だ。
「話すにしてももっと相手を選ばなきゃ駄目よ。」
千賀にもそう言われてもう返す言葉もなくなってきた。ごもっとも,申し訳ない,以後気をつけるを繰り返すばかりだ。そんな桂を見兼ねた元周はこの辺にしといてやると説教をやめた。
「言っとくが参謀と松子にも小言は言ってある。お前だけを責めとるんではない。不在であったがお前にも原因があるのを分からせたかっただけだ。」
桂と三津は揃ってご迷惑おかけしましたと頭を下げて,今日は帰って良しと言われた。帰り道,馬に揺られながら桂は盛大に溜息をついた。最近溜息しか出ない。
「すみません,歩く問題児で。」
「いや,すまないね……。女将の本性も見抜けず……。」
「客商売をされてる方です。他の人よりも隠すのはきっと上手いですよ。それに毎回疑ってかかるなんてしませんもん。でも小五郎さんは特に女性には疑いの目を持たないみたいですね。」
「そんな事は……。」
ないと言い張りたいが,説得力の欠片もないんだろうなと思って最後まで言うのをやめた。 それに確かに女性を甘く見てる節はある。駄目な夫でごめんと肩を落とした。
「いいえ,私が駄目な妻だから小五郎さんは女将に愚痴を零したんでしょうし。」
「愚痴じゃないよ……。君が盗られそうで心配だと弱音を吐露してしまったんだ……。」
そして三津は少し黙りこくってから意を決して思ってる事を口にした。
「何も吐き出さずにいるのは難しいと思います。だったら小五郎さんも拠り所を作ったらどうですか?私に九一さんが居るように,小五郎さんも作った方がいいのかも。それを浮気やなんて言ったりしませんし……。」 「馬鹿を言うなっ!!」
間髪入れずに怒鳴られた。桂が本気で怒っている時の声だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.05.04 01:37:28
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