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韓国映画「パラサイト」がアカデミー賞の四冠に輝いたことが話題になっている。
たしかに奇想天外で面白い映画なのだが、アカデミー賞四冠となると、他に傑作がなかったのだろうかと不思議に思う。 そしてまた、「パラサイト」が韓国社会の格差を描いた映画だというように喧伝されているのだが、正直言ってそれほどそうしたものは感じなかった。身分とか生まれとかが昔のように重要でなくなっている現代では格差は「能力、努力、運」によるものだろう。貧乏な一家の方が小賢しく機転がきき、金持ちの一家の方がおまぬけに見えるのは気のせいなのだろうか。そしてまた、格差の主因が能力であり、まさにそのことが格差に苦しむ側の絶望につながってゆく。ところが映画「パラサイト」では貧乏な家の息子は金持ち娘の英語の家庭教師を行い、まったくバレる様子もない。そしてその息子は学歴詐称こそしているが、なかなか優秀で、一流大学を受験している様子である。だから最後の「金持ちになるぞ」という息子の決意は荒唐無稽でなく、十分に可能性がある。なんだ、格差はあっても、そこには希望格差はないではないか。 こうした能力を主因とする格差は、この少し後に観た映画「リチャード・ジュエル」の方でより強く感じた。ちょっと知恵遅れぎみのジュエルと彼に唯一対等に接してくれた弁護士との会話の中で、「オレはあんたのようになれやしない。オレはオレだ」と叫ぶ場面があるが、それこそがまさに格差社会の下にいる者の絶望感ではないか。 それでは映画「パラサイト」で生活の格差は描かれているかというと、それもそれほど強烈には描かれていない。瀟洒な豪邸と半地下の狭い家という住居の格差は象徴的なのだが、それ以外では、食べるもの、着るものの差は描かれていない。普通に街を歩いていると貧乏だか金持ちだかわからない。映画の中で貧乏人の共通の「臭い」が言及される個所があるが、逆にいえば臭いでしかわからないということではないか。半地下という住居の貧困はあっても、腹をすかして、ぼろを着て…という衣食の貧困はあまり描かれない。 韓国では、韓国映画の快挙に国中がわきたっているという。けれども「パラサイト」には韓国の風景の美しさや伝統の素晴らしさが描かれているわけではない。誇るべき歴史や細やかな人情がでてくるわけでもない。そしてあの映画をみて、韓国に行ってみようと思う人もあまりいないのではないか。映画という芸術の一部門で自国の作品が認められたというのは喜ばしいことなのだろうけど、大統領をはじめ、国中であれほど大喜びするようなことなのかというと、どうもよくわからない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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カンヌに続いてアカデミーもは快挙でしょう。
予告しか見ていないのでなんとも言えませんが、アカデミーを受賞したということはエンタメ性もそこそこ評価されたのでしょうね。 ポンジュノ監督なので、おどろおどろしかったのではと想像します。 パラサイトかジョーカーかと言われていたので、アカデミーも評価基準が変わったのでしょう。 それにしても、韓国で住まいを借りることは大変なのですね。 けっこう豪邸に見えましたが、そうでもなかったですか。 参考: 韓国に住む私がパラサイトに目を覆ってしまった理由 エンタメ映画に描かれたリアルすぎる半地下生活 https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59350 (2020年02月15日 09時13分57秒)
テレビ局が放送するべき内容でしょう。スケールのでかいものではなく、単なる身近なものが映画の権威ある賞をとって
どれも視聴するから仕方がないが、いずれレンタルビデオで見るか否かの存在、たまたま見た1972年のアカデミー賞のポセイドンアドベンチャーのほうが重厚なものでしょう、そのリメイク版も見ましたが、いくらCG全盛でもシーンによっては命がけの場面とかは手の混んだ作業はしている。もともとはなにか訴えかける内容とか、手の混んだものが賞をとったものが多かったんですがね、まっ宣伝でしょうし、 (2020年02月15日 13時28分50秒)
maki5417さんへ
豪邸と半地下の住居の対比は映像的によくでていました。 ただそれ以外の着るものや食べるものでは貧富の対比はあまりないように見えました。 おもしろい映画なのですが、格差を描いたアカデミー賞映画というので期待してみると肩透かしかもしれません。 (2020年02月15日 15時54分32秒)
赤いオーケストラ荒木さんへ
たしかにアカデミー賞の傾向が変わったというのもあるかもしれません。詳しくないのですけど、人種差別や女性差別、あるいはナチスの暴虐と戦った人物の実録ものというようなのが、一巡し、そろそろアジア映画に受賞させようという流れがあったとかの。 映画としては好き好きですが、テレビでやるのでしたら一見の価値があると思いますよ。この監督の「殺人の追憶」は地味な実録ものですが、「グエムル」は娯楽性豊かな面白いもので、「パラサイト」主演の俳優ソンガンホが日本のお笑いタレントの石塚にそっくりでした。 (2020年02月15日 16時02分39秒)
数年前までは劇場で映画年間100本以上は見ていましたが、眼をやや悪くして近年は劇場で映画を観る事がめっきり減りましたが、七詩さんに触発され、「パラサイト」観てきました。
私はビートたけしの漫才は殆ど評価していませんが、北野武の映画は一部を除いてかなり評価しています。北野映画で取分け忘れられないのがキタノブルーです。 「パラサイト」を観て感じたのは北野映画で感じるバイオレンス感でした。そして降りしきる土砂降りの雨の映像にバイオレンスブルーの言葉が浮かびました。 悲惨だけでない痛快活劇ともいえるバイオレス間の中での人への愛情と非情、園子温監督の「冷たい熱帯魚」を想起するところもありました。 北野映画、園子温映画を想起したという事は、私にとってポン・ジュノ監督に対する大きな賛辞です。又、これだけの面白い映画を作る韓国に対して、韓国も捨てたものでないという感じを多少なりと得ました。 (2020年02月16日 22時18分55秒)
.・曙光さんへ
映画としてはよくできているのですが、正直、暴力的な場面はあまり好きではありません。ただハリウッドにはこうしたものがうけるのかもしれません。 そしてまた、この映画でもそうですし、韓国ドラマをみていてもそうなのですが、総じて俳優の演技力の水準が高いように思います。日本では映画とかドラマでも、スターやアイドルを「観る」のが主な目的になっていて、またそうしたものを売り出すことを提供者側も考える。演技という芸を「観る」というのは二の次になっているように思います。 (2020年02月17日 10時21分37秒)
>映画としてはよくできているのですが、正直、暴力的な場面はあまり好きではありません。
私は、暴力的描写は七詩さん言われる処の余りどころか、全く好きでありません。 そして戦争は暴力の極みで、人間として何よりも愚劣な行為です。 然し、人間は無為無策で、暴力、戦争反対の空念仏を唱えているだけでは、暴力に対すると同様、戦争に対しても不逞の輩に対して圧倒的に無力で、瞬時に日本国1.2億の民は阿鼻叫喚の中、海の無屑へと消え去る事に為ります。 暴力を戦争を抑えるためには、人間としての優しき精神的な心と、無法な相手を上回る軍隊と云う物理的装置の両面が、人間が人間としてあるために絶対必要不可欠です。 物理的国防を放棄した国は人間として無責任、怠慢の極みで、その報いとして歴史がその国を、その国民を消去する事に必然的に為るでしょう。 戦後70年に亘っての思考停止の呪縛から日本人は解放されなければ、真の自立した大人の国と日本が為れない事は、人類の歴史が証明しています。 (2020年02月17日 15時19分43秒)
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