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2024年04月09日
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カテゴリ:読んだ本


「白い巨塔」を読み終わった。
医療と訴訟の世界を軸とした社会派小説で、その背景となった膨大な知識に圧倒される。
この小説が出た昭和40年ごろにはまだ女流文学という言葉があり、女流作家と言えばなにか共通の作品世界があったと思うが、本作はそうした女流の枠をはるかにこえている。
ただ、正直に言うと、最初の山である教授選のところではどうもこの作品テーマに興味がもてずにリタイヤしようかと思った。しかし、その次の山場である医療訴訟のあたりからはどんどん小説世界にひきこまれていった。主人公財前は手術した患者の診察を受持ちの医師にまかせ、海外出張に行く。このドイツ訪問の箇所は紀行文としても面白いのだが、その海外出張中に胃癌を手術した患者は肺癌で死亡する。これを遺族は胃癌の肺転移に気づかなかった財前の医療ミスであるとして訴訟を起こす。当たり前だが、損害賠償が認められるためには、医師に過失がありその過失と患者の死との間に因果関係がなければならない。手術時に肺癌の措置をしなかったことと、その後、短期間で起きた患者の肺癌死との間の因果関係を認めるのは難しいのではないか。癌は相当の期間を経て死に至る病であり、画像の見落としなどで早期発見の機会を逸したのとは違う。いくら患者遺族から見て医師が傲慢で手術後一回も患者を見なかったのが不誠実であったとしても、これだけでは損害賠償にはならない。非常に面白い小説なのだが、新進気鋭の弁護士がよくこんな訴訟を引き受けたとも思うし、調査や鑑定にも膨大な費用がかかるので、困窮する遺族が経済負担に耐えうるかも疑問である。同じ専門職でも医師は保険制度があるので貧しい農婦でも早期胃癌の手術ができるが、そんな制度のない法曹では弁護士費用や訴訟費用は遺族がすべて負担する。
ただ、この小説、医療訴訟の控訴審の場面が一番面白い。訴訟では財前は肺転移に気づいていたという主張をする。そのために、部下の医師や看護婦に虚偽の証言をさせたり出廷を妨害するような工作をする。その財前の主張を原告側の弁護士らが覆していく。財前の主張の虚偽を暴く法廷場面が小説でもドラマでも最大の見せ場となっている。小説の流れでは、第二審は原告勝訴となるのだが、胃癌手術後に化学療法で延命できたはずであるので、患者の死を早めたことに損害賠償責任を認めたのはやはり無理があるだろう。当時は癌は今以上に不治の病であり、化学療法も緒についたばかりだったのだから。そしてまた、癌は患者本人に知らせないというのが常識だったので、たとえ死期が伸びたとしても、患者が経営する商店について自分の死後の準備をするとも思えず、商店の経営悪化や遺族の困窮が防げたとも思えない。
この小説の最後については、こうした形の結末が一番すっきりするのかもしれないが、ややご都合主義の感じがしないでもない。ただ癌は患者本人には絶対に知らせないというルールが固く守られている点については、今日から見れば隔世の感がある。この時代には、癌の告知はタブーであり、癌を告知された高僧がショックのあまり気が狂ったという話がまことしやかに語られていた。





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最終更新日  2024年04月09日 17時58分10秒
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