明治維新
今年は明治維新150年ということで政府主導で様々な行事が計画されている。薩長土肥は観光振興のテコ入れにしているみたいで、それはそれでよいのだが、ああいう大きな歴史的事象には様々な側面がある。大河ドラマは司馬遼太郎の影響なのか、倒幕の志士や近代化に尽力した政治家や軍人の側にたって維新や近代化をみる見方が強いがそれだけではないはずだ。例えば、民衆の側から見ればどうだろう。それなりに安定していた秩序が崩れ、社会の混乱は生活苦をもたらしたのは確実である。おまけに義務教育(最初は有償だった)や兵役も始まった。明治の初期には地租や教育、兵役の義務に反対する一揆があちこちで起きている。民衆の目線では、身分制度が崩れて喜んでばかりいたというわけではない。武士はもっと大変だっただろう。維新は大瓦解ともいわれ、大失業時代の到来であった。そんな中で一番の勝ち組は官吏や軍人になった人々で、巡査や教員はその次くらいだろうか。高禄の武士が人力車夫をやったなどという話もあったという。新政府で活躍した官吏や軍人の視点だけでなく、そうでない人々の立場からみれば維新や近代化の印象も変わる。明治時代は素晴らしい時代だったが昭和に入って国策を誤った…こうした司馬遼太郎の歴史観は一般的だが、大陸への侵略は明治のごく初期から始まっていた。江華島事件は明治8年。台湾出兵は明治7年。すでに第二次大戦の破局の芽は明治時代からあったというほかない。