悪魔の足跡
皆様は、悪魔の足跡をご覧になったことがおありでしょうか? 恐らくはないと思います。 ミュンヘンの街の中心に、ミュンヘン市を象徴するマークのデザインにもなっている、屋根の先端が葱坊主のように丸まった二つの塔(高さ100米)を持つフラウエン・キルヒェ(聖母教会)があります(この屋根は、本来ゴシック様式で、天高く尖塔が聳える筈だったのですが、建築途中にお金が足りなくなり、それで尖塔は諦め、現在の形のように丸めてしまったと聞きます)。 毎日11時から演じられるグロッケン・シュピール(高さ85米の鐘楼のお腹につけられた等身大の人形が鐘による音楽に合わせて動く仕掛け時計)で有名な新市庁舎、その前が街の中心のマリーエン・プラッツ(マリアの広場)です。このマリーエン・プラッツから歩いて数分のところにありますから、聖母教会はミュンヘンの典型的な観光コースに入っています。 この聖母教会の入り口に悪魔の足跡があることは、ミュンヘンに住んでいる人でも意外に知らないようです。それ程大きなものではなく、説明の看板も目立たない極く小さなものです。 それでは、どうしてここに悪魔の足跡があるのでしょうか。上記の屋根のお話でもお分かりのように、聖母教会の建設は、お金の面で大変苦労したようです。その時、悪魔が建築家に囁きかけます。「若し、この教会を窓の一つもない会堂にするのなら、資金の不足を補ってやろう」。悪魔の意図は、教会が出来ても、信者を来させないようにすることだったのでしょう。 聖母教会が完成した時、悪魔は、どんな教会ができたかをチェックしに来ました。処が、教会にはちゃんと窓があるではありませんか。怒って建築家に問い質すと、建築家は悪魔を入り口の所へ連れていきます。そこから会堂を見ると、窓が柱に隠されていて、全く見えません。「これこの通り窓はありません」と言う建築家。騙されたと知って怒った悪魔は、石の床の上でドンと力まかせに地団駄を踏みました。そして、教会を吹き飛ばそうとしますが、頑丈な教会はビクともしなかったとのこと。この時に悪魔が怒って石の床に付けた足跡が今も残るという訳です。 さて、この足跡の実物ですが、本当に踵(かかと)の所から、後ろにひげのようなものが伸びていて、確かに悪魔の足跡のように見えます。ミュンヘンにいらっしゃった時は、是非お見逃しなきよう。そして、会堂の入り口に立って、そこから窓が見えるかどうかも、お試しあれ。 エッ? 女性にとっては、目尻に出来る「烏の足跡」とかいうものの方が悪魔の足跡ですって・・? それなら、世の中、悪魔の足跡だらけです。