公衆便所での両替(冗句)
風邪気味で腹をこわした文雄が、街中で急に便意をもよおした。やっとのことで公衆便所にたどり着き、欲求を果たした。ほっとして見回すと紙が見当たらない。 トイレット・ロールの芯のボール紙でもあればと思うけれども、それさえも無くなっている。 慌ててポケットを探ってみたが、そういう時に限って古手紙も領収書も入っていない。ハンカチも持ち合わせていない。やむを得ず、靴を脱ぎ、靴下をとって尻を拭いた。 と、隣の便所に入っていた人が、何やらゴソゴソしていたが、「あのう、そちらに紙があるなら、回して頂けませんか?」と、声をかけてきた。「私は、小便に入ったので、紙を使わなかったんですが、こちらにも紙はありません」 まさかソックスで拭いたとも言えないので、文雄がそう答えると、また隣から困ったような声で、「あのう」と、言ってきた。「二千円札を千円札二枚に換えて頂けませんか?」(トイレで紙を使うようになったのは、ヨーロッパでも意外に新しく、十七世紀から十八世紀のこととか。それ以前は、どうやっていたのでしょうかね・・?)