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カテゴリ:激動の20世紀史
歴史的事件としてのキューバ危機は、アメリカ東部時間10月28日午前9時の、ソ連ニキータ・フルシチョフ書記長のミサイル撤去声明によって終息したと見なされています。 もちろんその通りなのですが、両陣営が動員した軍隊の対峙、アメリカ軍のデフコン2体制は、その後約1ヶ月に渡って続き、一触即発の緊張状態は続いていました。 アメリカとしては、ソ連が約束どおり、キューバからミサイルを撤去するのを確認するまで、油断するわけにいかなかったのです。 一方のソ連は、アメリカの不安を払拭するため、国連による核査察受け入れを表明するなど、約束厳守の姿勢をアピールしましたが、この対応は、キューバのフィデル・カストロ書記長を激怒させました。 なぜカストロが怒ったのかと言えば、それはキューバと彼の立場が、「キューバ危機4」のところで触れました、ミュンヘン会談のチェコスロヴァキアと酷似していたからです。 今回の危機が戦争まで発展した場合、一番の被害者になるのは言うまでもなくキューバです。にもかかわらず、全ての交渉は米ソ両国によっておこなわれ、当事者なのにキューバに発言権はありませんでした。 今回の結果を見れば、キューバにとって悪くない結果で落ち着いたものの、下手をすればカストロもキューバもソ連に見捨てられ、アメリカに差し出されていたかも知れません。それに強い警戒感と不信感を抱いたのです。 カストロは国連による核査察受け入れを拒絶し、フルシチョフを慌てさせます(ただしアメリカ軍機による偵察活動は妥協したので、空からミサイル撤去の状況を確認する事は許しています)。 危機の終結後、カストロはソ連から一定の距離をとりつつ(1968年のチェコ事件(プラハの春)で和解するまで、ソ連とは微妙な関係が続きます)、ラテンアメリカ諸国やエジプトなどの非同盟諸国との関係改善に乗り出すことになります。 こうして1ヶ月後、キューバにあるソ連のミサイルが全て解体・撤去されて、基地が破棄されたのを確認したアメリカは、デフコン2を解除し、海上臨検を終了しました。これを受け西側同盟諸国、ソ連と東欧諸国の軍隊も動員を解除し、平常状態に戻りました。 そして翌1963(昭和38)年4月、今度はアメリカがトルコのミサイルを撤去し、広い意味でのキューバ危機は終わりました。 果たしてキューバ危機の「勝者」は、アメリカとソ連どちらだったのかですが、アメリカや日本、西欧諸国などでは、キューバの核ミサイルを撤去させた、アメリカとジョン・F・ケネディ大統領の勝利と見なされてきました(キューバ危機当時、緊張してみていたウチの父鳥も、そう認識していました)。 しかし、アメリカはミサイル撤去の条件として、キューバへの侵攻や政権転覆計画の放棄を約束しています。ですからアメリカの完全勝利とは言えません。 むしろ、ソ連のミサイル配備の目的が、「アメリカのキューバ侵攻を抑止する」であったことを考えると、ソ連とフルシチョフもまた勝者とみなすことが出来ます。 トルコのミサイル撤去の件を含めれば、アメリカ・ソ連双方にとって「引き分け」と言うところになるでしょうか。 しかし、国家としては引き分けとしても、双方の指導者、ジャック(ジョン・F・ケネディ大統領)とフルシチョフの2人は、共に「敗者」と言えそうです。 ジャックはキューバ危機の13ヶ月後、テキサス州ダラスで暗殺され生涯を閉じることになります。 彼の暗殺については、軍部やCIAの陰謀、マフィアの策略など諸説ありますが、このキューバ危機への対応が一因になっているとする見解は強くあります。 一方のフルシチョフは、キューバ危機から2年後、失脚して政治生命を絶たれることになります。失脚の理由は、「アメリカに譲歩しすぎた」ことを弾劾された結果でした。 さて最後になりますが、「キューバ危機は何故戦争とならずに終息したのか?」という命題は、危機から50年たった今も、歴史家や政治学者などの間で検証が繰り返しおこなわれています。 なにせ、核戦争の瀬戸際での米ソ両国首脳部による駆け引き、組織による意志決定や危機回避のプロセス、そして平和的な解決となったいきさつなど、これほど際だった題材は他にないからです。 この命題について、ひとつ私見を書いてみたいと思います。 ケネディとフルシチョフ双方の間には、緊張したやりとりの中にも「相手も全面核戦争を望んでいないはずだ」という奇妙な信頼関係が存在していたと思われます。 したがってソ連船は臨検ラインを強行突破せず、護衛のソ連潜水艦も米艦を攻撃しようとしませんでした。またアメリカ軍も、U2撃墜の報復にキューバにあるソ連軍地対空ミサイル基地を攻撃しませんでした。 もしどちらかの指導者が戦争を望んでいたら、その時点で戦端が開かれたはずです。 相手がそれをしなかったことが、ギリギリのタイミングまで平和的な解決を継続させる希望、信頼関係になっていたの間違いありません。それが異なる政治体制、価値観を持つ米ソ両国に、共通する「ゲームのルール」となり、戦争回避へ繋がったと言えます。 逆に言えば、双方が認識をひとつにする「ゲームのルール」がない場合、交渉は決裂するか、対立がどんどん深まってしまうといえるかも知れません。例えば1941(昭和16)年の日本とアメリカ、現代におけるアメリカと北朝鮮、日本と中国、韓国などです。 双方が認識を共通する「ゲームのルール」が異なる以上、何度話しあってもかみ合うわけがないのです。 キューバ危機の教訓として、米ソ両国は改めて核戦争の危機にあることを痛感しました。その結果ジャックの提案で、両国の首脳部を直通電話で結ぶ「ホットライン」が開設されることになります。双方が誤解により核戦争へと突き進んでしまうリスクを低減させようとしたのです。 しかし一方で負の遺産もあります。 米ソ両国は第2のキューバ危機を避けるため、直接相手を攻撃するのを避け、さながらチェスゲームのように、相手陣営を間接的に切り崩す「小さな戦争」へとシフトしていくことになります。 アメリカのベトナム戦争、ソ連のアフガニスタン侵攻は、その延長戦上にあります。 こうして21世紀を迎えた今日も、世界を巻き込んだ全面核戦争の危機こそないものの、各地でテロや小さな紛争が続いています。 この負の遺産をいつ克服できるか、それはこれからの課題と言えそうです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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こんばんは~♪
このキューバ危機への対応が原因で、ケネディ大統領が暗殺されたのかもしれないなんて! 何だかゾッとする話ですね。暗殺者は戦争をしたかったということになりますよね。 戦争で利益を得るなんて考えたくないことですが、 複雑な力が交錯した中で国を治める事の難しさ、痛感しました。 コメントのこと申し訳ありませんでした!詳しくは私のブログで・・・ (2013.01.10 22:27:00)
シトラス7さん
こんばんはです。 >このキューバ危機への対応が原因で、ケネディ大統領が暗殺されたのかもしれないなんて! >何だかゾッとする話ですね。暗殺者は戦争をしたかったということになりますよね。 >戦争で利益を得るなんて考えたくないことですが、 >複雑な力が交錯した中で国を治める事の難しさ、痛感しました。 一般的には振り上げて拳の落としどころを奪われた軍とCIAのメンツを潰してしまったと言うことはよく言われています。 あと、亡命キューバ人たちは、アメリカのキューバへの侵攻計画破棄で、祖国を永遠に失うことになってしまったので、かなり恨む人はいたといわれています。 まぁその辺は、暗殺事件がいまだハッキリしないので何とも言えません。 >コメントのこと申し訳ありませんでした!詳しくは私のブログで・・・ いえいえ、ミスは誰でもあることです。気になさらないでください♪ 私も誤字ばっかりであとで冷や汗毎回かいてます(笑)。 それではまた。 (2013.01.10 22:48:58)
ばーど白鳥さん
こんばんは(*^。^*) キューバ危機が避けられたとはいえ、その後の小さな争いのもとになったのならそれで良かったのかと考えさせられますね。 戦争はいつ起こるかわかりません・・・。 今の中国だって戦争をしたくないはずですが、かなり挑発的ですよね(ーー゛) 戦争を起こしたがっている力がどこかで働いているんでしょうか。 戦争で金儲けや得をする人間がいる限り、なくならないですね戦争の不安。 (2013.01.11 20:58:10)
元お蝶夫人さん
こんばんはです。 >キューバ危機が避けられたとはいえ、その後の小さな争いのもとになったのならそれで良かったのかと考えさせられますね。 >戦争はいつ起こるかわかりません・・・。 >今の中国だって戦争をしたくないはずですが、かなり挑発的ですよね(ーー゛) >戦争を起こしたがっている力がどこかで働いているんでしょうか。 >戦争で金儲けや得をする人間がいる限り、なくならないですね戦争の不安。 いやまぁ、中国に関しては共産党の一党独裁体制に行き詰まっているなと感じています。 最近は尖閣一色ですが、他にもインドやベトナム、フィリピンなど20カ所以上の地域で国境紛争を起こしているんです。 昔は紛争を意図的に起こすことで、体制維持につなげていましたが、最近はそれも上手くいかなくなっているように感じます。 どうなることやらです。 それではまた。 (2013.01.11 23:41:04)
ばーどさん、こんばんは!
大変ご無沙汰しておりました~。 ようやくブログも更新出来ました(>_<) キューバ危機のお話、興味深く読ませていただきました。 いつもながらにすごいですね・・・・。 たしかに、現在大きな戦争こそ起きてないものの、常に世界のどこかで小競り合いがありますよね・・・・。 人間という生き物である限り・・・・それは避けられないことなのでしょうか・・・・・。 (2013.01.12 00:21:42)
*花カフェ*さん
こんばんはです。 >ばーどさん、こんばんは! >大変ご無沙汰しておりました~。 >ようやくブログも更新出来ました(>_<) 色々大変なご様子、どうぞお体には気をつけてくださいね。 >キューバ危機のお話、興味深く読ませていただきました。 >いつもながらにすごいですね・・・・。 > >たしかに、現在大きな戦争こそ起きてないものの、常に世界のどこかで小競り合いがありますよね・・・・。 >人間という生き物である限り・・・・それは避けられないことなのでしょうか・・・・・。 今も中国の問題など、フィリピンも関わっていましたね(こちらは南沙諸島問題で)。 人間が殴り合いの喧嘩が起きてしまうように、国も喧嘩が起きてしまうのはやもえないのでしょうね。 でもその回数を減らすことは出来ると思っています。 そうやって悲劇が一つでも減ればいいですね。 ・・・と、書いていた矢先に、フランスのマリへの軍事介入、シリアでの内戦の激化のニュースが伝わっています。 まだまだ道は険しそうですね(ため息)。 それではまた。 (2013.01.12 21:40:42)
キューバ危機の時、ソ連軍の最高幹部の一人が、フルシチョフの暴走による世界戦争の危機を防止するため、ソ連側のミサイル、核配備の詳細をアメリカ側に通報。ソ連がそれ程、実戦配備が進んでいないことが判明。アメリカが強気にでてかえって戦争が避けられたという話もあります。通報した幹部は逮捕され死刑になったそうです。身を捨て世界を救った人が影にいたそうです。
(2013.01.28 19:29:00)
尖閣問題は核戦争に繋がる危険もあり得ると思います。連日中国は領海領空に侵入してきていますから、ちょっとした偶発事件が即、日本アメリカ対中国の交戦、に発展し、仮に中国軍が大敗したら核使用に踏み込む可能性はあります。そうなればすぐに核世界戦争に入ってしまいます。
自民党時代、尖閣を中国は「核心的利益」とはしてきませんでした。民主になり、管・小沢の代表選の党員投票日直前尖閣に漁船を侵入させ、それ以降「核心的利益」と言い出しました。中国から見て日本がスキだらけに見えているのでしょう。マスコミには「スキ」をつくるのを歓迎助長する傾向にあるのは注意すべきでしょう。 (2013.01.28 20:08:01)
カラスのメルトモさん
はじめまして。 その話はしりませんでした。 アレクサンドル・フォーミンの話はふれようかとも思ったのですが、そちらは面白いのですが、不確定な話になってしまうので今回書きませんでした。 尖閣の方も、一歩間違えばキューバ危機の二の舞になる可能性あるんですよね・・・。 さてどうなることやら。 それではまた。 (2013.01.28 22:13:51)
元ネタはBS世界のドキュメントでCIAかキューバ危機の特集番組(アメリカ制作)だったと思います。CIAの幹部や元政府高官などが大勢証言している番組で信憑性は高いと思いました。パワーバランスが崩れると戦争が起きるということで、ニクソンがCIAを国内政治に利用(ウォーターゲート事件)、その反省でCIA解体(カーター)それでバランスが崩れ、イラン革命、ソ連によるアフガン侵攻、日本でのロッキード事件などが起きました。尖閣は中国の40年前からの計画で、中国が力をつけたら日本攻撃の口実にするためのものだったようで、解放軍報などにかねてより主張されてきたもののようです。中国は本気のようで、駐米大使予定者が渋谷で急死したのも(暗殺?)怪しいとおもいます。
(2013.01.29 09:43:49)
カラスのメル友さん
こんばんはです。 ドキュメントですか、ウチはテレビがないので、たまにgyaoでドキュメンタリーで定評があるナショナルジオグラフィックをみるぐらいですかねぇ。 ただ、あの手の番組というのは、証言者の主張はさておき、番組の構成で首をかしげる仮説や主張が出てくることがあるので、少し割引いてみるようにしています。 中国の過激な発言も、出る時は必ず国内問題で揺れていることが多いので、不満の目を外に逸らそう行為が半分と見ています。 ただ、この手の行為はいずれ自分の首を絞めていくことになるので、危険な兆候だなと感じています。 それではまた。 (2013.01.29 22:39:13) |