カテゴリ:日常
記憶のデータベースに保存されている花の香り。
春先、この香りに出会うと一年ぶりでも迷うことなく、 「あ、沈丁花!」と瞬時にその名が検索される。 しかし、今感じたその香りがすぐにどこかへ失せてしまって、 あれ?どこ?と見回しても何も見えない場合が多い。 ・・・少し行った先に、こんもりと丸く小柄な木が見える。 白や赤い縁どりの小花があるから間違いない。 いたいた、こんなところに…!やっぱり沈丁花。 別に隠れているわけじゃないんだけど、目立たないのだ。 近くに来ると却って香りがしなかったり。 秋に咲く金木犀は、そこらじゅうの空気をむせ返る甘さに染め上げ、 「秋ですよ!秋ですよ!わかってますかー!」と大騒ぎする。 それに比べると、春先の沈丁花は控え目だ。 「ここだけの話なんですが、春が来ているわけなんですよ。お気づきの通り」 と小声で内緒話して行くのだ。 人魂みたいに(?)空中を神出鬼没で、ふっと香りがしてすぐに消える。 あ、もっと嗅ぎたい…! 先週、何度か雨が降ったが、それぐらいでは沈丁花は散らない。 しっかり者の小花が枝にしぶとく付いている。 ちょっとした雨でパラパラパラーっと地面に転げ落ちる金木犀のオレンジ色とはそこも違う。 おしゃべりで陽気なムードメーカーで、才能を発揮して存在感あるけど ちょっとクセもあって、案外もろい人。そういうタイプいますよね。 美人じゃないし、ほとんどしゃべらないし、地味で目立たないんだけど、 実は、「えーっ知らんかった!あの子にそんな才能があったの!?先言ってよ!!」 っていうタイプもいますよね。 どっちのタイプが好みですか? ベランダの前に金木犀の木が並んでいる。 秋にはそれこそ辺り一帯が甘い香りに包まれるが、 今はオレンジ色の小花もなく、ひっそりと静まりかえっている。 …と思いきや、誰も顧みない常緑樹の枝葉の先に、 新芽が出ているではないか! 金木犀は金木犀なりに、粛々と生きているのであった。 花も木もじっと息を詰めて待っている。 春本番前のひととき。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年03月20日 11時42分38秒
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