カテゴリ:音楽
クラシックでもポップスでもミュージカルでも演歌でも子どもの合唱でも、
ジャンルを問わず心に響く音楽にはウルウルしてしまうが、 実際に出かけるのはほとんどがクラシックのコンサート。 そんな私が、誘われて昨日初めてジャズのライブを聴きに行った。 毎週金曜日掲載のコンサートリスト作成の際、 ブルーノート東京のステージをしょっちゅう載せていながら、実物を聴いたことがなかった。 夜の青山。骨董通りをしばらく南下して左折すると、HPにあったお洒落な建物が見えてくる。 おそるおそる入口のドアを開けて踏み込むとなんだか別世界。 受付で待ち合わせの旨を告げ、階段で地下へ下りると、また案内のカウンターがある。 スタッフも妙に洗練されてて、クラシックのコンサートホールとは違った緊張感がある。 (こりゃ慣れてない客だと丸わかりだな。。) 案内されたテーブルに某広報女史の姿を見つけてホッとした。 同席のジャズジャーナリスト氏と名刺交換する。 (やっぱりこういう場所はよくわかってる人と一緒でなきゃ無理だわ。よかった!) ようやく辺りを見渡すと、結構広いフロアである。 ステージ正面はもう一段低くなってて、その四角いエリアに20卓ほどテーブルが並ぶ。ほぼ満席。 ああいう真ん中のエリアは常連さんのジャズ通が占めているのだろうか。 それを囲む柵のすぐ外側にも、両サイドに数卓ずつある。 私達はステージに向かって右サイドの外側席だった。ドラムがよく見える位置だ。 さて、今夜のステージは、 「ウンブリア・ジャズ関連イベント第2弾! イタリアの人気ベテラン・ドラマーが実力派メンバー達を率いて初登場」 初めて聴くブルーノートのジャズ・ライブがイタリアンとは、 よくよくヨーロッパにご縁があるんだなあ。。 なにしろ、ジャズのことは全然知らないので、イタリアのジャズと言われても??だが、 もらった資料によると、ウンブリア・ジャズというのは、 1973年に始まったヨーロッパでも有名な音楽イベントで、 イタリア内外の世界的なジャズ奏者とジャズファンが州都ペルージャに結集するそうだ。 中世の建物が並ぶ旧市街の広場が人でびっしり埋まっている写真があった。 今夜のブルーノートに登場したロベルト・ガットはイタリアを代表するジャズ・ドラマー。 早めに寂しくなった頭髪(ヨーロッパ人によくある)は潔くスキンヘッドにして、 エネルギッシュな男性に多い太い猪首にがっちりした体格というイカツイ風貌だが、 ドラムを愛おしそうに叩き回しワイヤーブラシで撫で回す姿がなかなかセクシーで、 ややうつむき加減の顔をしょっちゅう左方に向けては最前列のキレイなお姉さんに流し目を送る なんとも茶目っ気たっぷりのチャーミングなおじさんだ。 トランペット、テナーサックス、ピアノ、ベースの面々もやはりベテランらしく、 うち2人はスキンヘッド気味、3人が猪首という共通点があり、 イタリアのおじさん達は中高年になってもステキと思わせる(ホントかな) オペラやカンツォーネの伝統を感じさせる感情豊かな歌いぶりに、 思わず、ピアノを習っていた頃、先生によく言われた 「もっとエスプレッスィーボに…♪」という言葉を思い出した。 音楽用語ってほとんどイタリア語なんだもんね。 いや~実にエスプレッスィーボ!なのだった。 ジャズって楽譜を忠実に再現する音楽と全然違うんだと思った。 もちろん、基本のメロディやリズムや和音のパターンがあるのだろうが、 そういうものは既に記憶のデータベースに蓄えられて、いつでも検索可能な状態でスタンバイ、 一瞬一瞬にもっともふさわしいものを、これまた血肉となっている超絶テクニックによって、 次から次へと繰り出してくるという趣である。 メンバーのソロ・パフォーマンスをしばらく見守っている場面があったかと思えば、 ふっと絶妙の合いの手が入り、そのうちまた5人全員で怒涛のセッションを繰り広げるのだ。 ジャズジャーナリスト氏は、薄暗がりの中でなにやら熱心にメモをとっている。取材か。 時折、いろいろ解説してくれるのだが、広報女史と私は 次々出てくる人の名前がさっぱりわからず、ジャズ通の知識に敬服しつつ、 ただただ目の前の演奏に感服するばかりであった。 イタリアン・ジャズは上品、という話を聞いたが、 確かに音がとてもきれいだった。ピアノもトランペットも。 そして、ドラムスのロベルト・ガットの超人技は目を疑うばかり。 ドラムセットが身体の一部と化し、痙攣しているかのような足の動きにつれて、 ハイハットシンバルがパクパク上下して、スーンスーン・ツ・ツと鳴り、 バスドラムも法則性が把握できないほど複雑なリズムでドスドス響く。 手のほうは、2つのシンバルとスネアドラムとタムタムドラムの間を 2本のバチが高速で飛びまわってスイングスイングスイング!! リムショットにも何種類も違った響きがあるし、あ!いつの間にかワイヤーブラシに持ち替えてるし、 あら、今度はスネアをオフにしてタムタムの音みたいにしているし。 まさに変化自在の手さばきに、惚れ惚れと見とれるのであった。 ついにはバチを放して、素手でたたき始める。 ボンゴやコンガのように! ほとんどサルの境地だ。 そうなのだ。原初の本能を全開にして自己を解放できる(=サルになれる)人でないと 様にならない。ドラムスではそれがハッキリわかる。 羞恥心や理性が邪魔するとできない。 (そこが高校時代のブラスバンドでの私の大ネックだった) 「マイルス・デイヴィスに捧ぐ」ということで、 次々演奏される曲の冒頭部分を聴いただけで、 正面エリアの席からは「ヒュー」という喜びの声と拍手が沸き起こる。 ジャズファンなら誰でも知っている有名な曲なんだろうな。。 マイルス・デイヴィスの名前ぐらいは聞いたことはあるし、 ジャズ版「枯葉」のメロディは私にもわかったけれど、 たとえば今演奏されている曲がジャズ史の中でどれほど「かの有名な」ものか わからなくて、やや場違い感を抱きつつ、 知らなくてもなんでもスイングスイングスイング! で、いつの間にか一緒に身体が揺れだして、それなりに楽しめたのであった。 9時半から1時間以上ぶっ通しで、最後のほうでやっとメンバー紹介があるまで、 ノンストップで演奏が続いた。 いや、この人達、ほっといたら一晩中でもセッションを続けるのかも。 昔ちょっとだけドラムスをやったことがある身には信じられないことだが。 (だってバチを握る手が疲れて、そのうち言うことをきかなくなるんです) 余分な力が抜けてるんだろうなあ。。達人鉄人名人達だ。 人の身体から直接出てくるようなジャズの即興。 音楽って本当に不思議。。 今夜のステージに感謝します♪ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年05月16日 15時28分14秒
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