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アルタクセルクセスの王宮址遺跡

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2006年12月21日
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カテゴリ:西アジア・トルコ
(引用開始)
トルクメニスタンの独裁者、ニヤゾフ大統領急死
12月21日22時58分配信 読売新聞

 【モスクワ=緒方賢一】中央アジア・トルクメニスタンで、旧ソ連時代末期から20年以上にわたり独裁支配を続けたサパルムラト・ニヤゾフ大統領が21日未明(日本時間同日早朝)、死去した。66歳だった。

 国営テレビが伝えた。糖尿病と心臓病を患っていた。強権指導者の突然死をめぐり様々な憶測が出ている。極端な個人崇拝に基づく統治が終焉を迎えたことで、後継体制が大きな焦点となった。

 葬儀は24日に行われる予定で、ベルドイムハメドフ副首相が葬儀委員長を務める。憲法は国会議長が大統領の職務を2か月間代行すると規定する。しかし、インターファクス通信によると、アタエフ議長は21日、刑事事件の捜査対象となったため、同副首相が大統領代行に就任するという。刑事事件の内容は不明。
(引用終了)


 我ながら不明なことに、僕はこのニヤゾフという人を去年まで知らなかった。しかも彼が支配する中央アジアの旧ソ連国家の一つトルクメニスタンは、なんと「永世中立国」であるという(1995年の国連総会で決定)。
 ところが日本人が「永世中立国」という言葉から連想するイメージとは裏腹に、この国はニヤゾフ大統領に対する異様な個人崇拝が行われ、人権無視が日常茶飯事であるという。「永世中立」というのは要するに旧宗主国であるロシアの影響力排除の方便にすぎず、最近は対米接近のため米軍駐留も検討されていたそうだ(徴兵制による軍も保持)。
 日本でも対米従属から脱却したいと考える人の中にはすぐ国連主義を持ち出す人が居るが(民主党とか)、こういう国が国連に永世中立国と認められるんなら北朝鮮も・・・・なんてね。

 ドイツのニュース記事を見ると「心臓発作」と書いてあったが、トルクメニスタン政府の発表では単に「心臓停止」と伝えられたという。そりゃ死んだら心臓は止まりますわな。首都のあちこちで半旗が掲げられ、政府系の23紙は全て休刊、また来年の新年祭の中止が発表されている。
 憲法の規定で大統領代行になるはずの国会議長が捜査されたり、野党が「大統領は実は三日前に死んでいる」と発言したり(武田信玄じゃあるまいし)と、不可解なことが多い。既に後継をめぐる権力闘争が始まっているとみるべきだろう。ニヤゾフには一男一女があるが、北朝鮮やシリアのような世襲は行われないようだ。
 豊富な天然ガスを産出し(その富は大統領周辺に流れているようである)、中国やロシアとの経済協力にも積極的なこの国の南隣はイランである。北朝鮮と同じく米中露の三勢力が接し、核開発問題でゆれるイランの隣国と、きな臭いことこのうえない。後継の政争にはこうした外国の意思も働くだろう。

 サパルムラト・アタイェヴィッチ・ニヤゾフは1940年アシュガバート生まれ。父親は第二次世界大戦の対独戦争で戦死、母と二人の兄弟は1948年の大地震で死に、彼は孤児となった。学校を出て電気技師となった彼は共産党に入党して頭角を現し、ついに1985年にはトルクメン共産党第一書記となった。つまり彼は現在まで21年にわたりトルクメニスタンの指導者の地位にあったわけである。
 ところが1991年にソ連が崩壊すると彼は民主党を設立して共産党を禁止、さらにソ連から独立したトルクメニスタンの大統領に98%の支持で選出された。1992年に大統領選挙(対立候補なし)で99.5%の得票で勝利した(この得票率でどういう選挙かは推して知るべし)。首相職はおかず、大統領による独裁体制を構築した。正式な任期は1997年までだったが二度延長し、1999年には国会(彼の与党と翼賛政党のみが政党として許可されている)によって終身大統領に指名された。ただし欧米の批判に配慮して昨年、2008年から10年に対立候補の立候補を許した大統領選挙を行う、と発表していた。

 まあこのくらいなら中央アジアの旧ソ連諸国にはよくあることである。
 しかし大きく違うところは、彼は自身を「テュルクメンバシュ」(トルクメン人の頭)と呼ばせ、個人崇拝を推進していた。彼は大統領であり、政府首班(首相)、軍最高司令官、与党党首、国家最高哲学者、国家最高詩人を一人で兼任していた。
 トルクメニスタンには金ぴかの彼や彼の父母の像があちこちに立っているという。これくらいならまあ僕もトルコ(ケマル・アタチュルク)やシリア(アサド大統領)で見ているし、首都に高さ40mの金色に輝く金日成像が立つ北朝鮮の例もある。しかしトルクメニスタンでは都市や学校、空港、果ては隕石にまで「テュルクメンバシュ」という名前が付けられている。
(ニヤゾフのために多少弁護するとすれば、オアシス遊牧民の「氏族制社会」と共産主義しか知らず、イスラム教や民族といった意識も低かった国民に対し、自立した国民や国家というまとまりを作り上げようとしたのだろうが・・・・。自立ではなくソ連という強力な他者によって解放され、伝統的な両班制度を否定しゼロからの国家建設を目指した北朝鮮が、国家=擬制的親族集団を目指して結局金日成に対する個人崇拝、親子継承に陥ったのと似ていなくもない)
 さらに甚だしいのは2001年に刊行された彼の著書「ルーフナーマ」(魂の書)で、全国民はこの本を読むことが義務付けられている。隣人愛や道徳について説いたこの本は学校でも教えられ、大人は毎週土曜日にこの本を読むことを義務付けられている。運転免許の取得や大学入試の科目にも、ルーフナーマに関する試験がある(運転免許の場合、試験を免除してもらうには200ドル課金される)。
 また月の名前や曜日も、ニヤゾフにより名称が変更された。北朝鮮でも暦に関してはこうしたことはしてなかったと思うが。

 1月→テュルクメンバシュ月(ニヤゾフの尊称。「バシュ(頭)」という語に掛けている)
 2月→バイダク月(「国旗」の意)
 3月→ノウルーズ月(春分の日にあたるイランの新年祭に因む)
 4月→グルバンソルタン・エジェ月(彼の母の名。萌え出ずる緑と母性をイメージ)
 5月→マフトゥム・クリ月(国民的作家の名)
 6月→オグズ・ハン月(トルクメン人の伝説的始祖の名)
 7月→ゴルクト月(オグズ・ハンと並ぶ歴史的英雄)
 8月→アルプ・アルスラン月(ビザンツ帝国を破ったセルジュク朝の英主の名)
 9月→ルーフナーマ月(ニヤゾフの著書の名。発刊日に因む)
 10月→ガラシュスズルック月(「独立」の意。独立記念日に因む)
 11月→スルタン・サンジャル月(アルプ・アルスランの孫)
 12月→ビタラプ月(「中立」の意。トルクメニスタンが永世中立認定された1995年12月の国連総会を記念)

 曜日は以下のとおり(「ギュン」はトルコ系言語で「日」の意)
 月曜日→バシュ・ギュン(頭の日)
 火曜日→ヤシュ・ギュン(若い日)
 水曜日→ホシュ・ギュン(良い日)
 木曜日→ソガプ・ギュン(祝福の日)
 金曜日(変更されず。トルクメン語で「アンナ」=イスラムの聖日)
 土曜日→ルーフ・ギュン(「魂の日」。この日に「ルフナーマ」を読むことが義務)
 日曜日→デュンフ・ギュン(「安息日」)

 その他ニヤゾフは首都を除く全国の病院を閉鎖したり(「病人はちゃんとした医者の居る首都に行けばいい」という理由)、彼自身が糖尿病手術で禁煙を余儀なくされたため公共の場での喫煙を禁止したり、映画館、オペラ、バレエ、サーカス、図書館(「田舎の人はどうせ本を読まない」)、ケーブル放送、インターネットを禁止したりと気ままな政策は数限りない。笑い話で済むうちはいいが、この国で大統領を批判することは死を意味しかねない。
 2003年にはイスラム教シーア派、バプティスト教会、プロテスタント、ユダヤ教の布教活動が禁止され、イスラム教スンニ派が国教とされている(イランでもこういう法律はない)。国民の一割を占めるロシア人は、2003年に国外退去するかトルクメニスタン国籍の取得を要求された(こうした国粋主義の反面、ニヤゾフ自身はロシア語で育ったためトルクメン語が不得意らしいのだが)。反体制派ジャーナリストが「消える」ことはよくある話で、2002年にニヤゾフの車列が銃撃された直後は反体制派が厳しく弾圧された。
 2006年初頭には月70ユーロほどが支給されていた年金制度が改められ、女性は30歳、男性は25歳からトルクメンスタンに居住していた者のみが年金受給資格をもち、そうでない者は今まで受給していた年金の返還が要求されている。また成長した子供がある者やコルホーズ(ソ連時代の集団農場)で働いていた者は例外なく年金受給資格を失う。

 北朝鮮と同じく一種の鎖国体制にあるため(外国からの援助も断ることが多い。なお最大援助国はアメリカ、日本、ドイツの順)、この国の多くは謎に包まれているが、この体制がどうなっていくか見ものではある。





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最終更新日  2006年12月22日 22時11分52秒
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