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2005年03月01日
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カテゴリ:連載小説
 真っ暗な闇の中で、1組の男女が向かい合っている。
 2人の他には何も見えない。何も無い。

 ただ、暗闇の中に2人が居るだけ。

 2人にとっては、相手が自分の全て、自分が相手の全て・・・。



「何?それ。」

 私がそう聞くと、あなたは私に腕枕をしたままで答えた。

「天国のイメージ。」

「天国?真っ暗闇が?」

 あなたが急に天国なんて言うから、私は驚いた。天国と言えば、もしも天国が存在するとしたらだけど、きっと明るくて幸せなところだろう。

「天国でも地獄でも、死んだら真っ暗闇なんじゃないかと思ってさ。地獄はきっと自分以外何もないただの闇なんだ。いつまでもいつまでも永遠に闇の中で漂っている。何も見えなくて、何も感じなくて・・・それが地獄。」

 私はそんな地獄を想像しようとした。何も見えず何も感じない、真っ暗闇。けれど上手く想像できなかった。ただ、きっと辛いだろうって事はわかった。きっと想像も出来ないくらい辛いだろう。

「地獄って怖いね。」

 私は素直につぶやいた。

「そう、きっと地獄は辛いよ。でも、天国では同じ暗闇でも、目の前に愛する人が居るんだ。そして、愛する人の存在だけを感じる。愛する人のぬくもりだけを感じる。」

 あなたは、じっと天井を見ながらそう言った。
 豆電球だけを灯した部屋で薄暗く照らされているあなたの横顔は、本当に天国を見ているかのように幸せそうだった。

「・・天国と、地獄か。・・変わったイメージだね。」

 私は今まで天国や地獄の存在を真剣に考えたことが無かった。子供の頃はなんとなくイメージしていただろうけれど、今では、天国も地獄も無いと思っている。
 死んだらきっと、それで終わりで後には何も無い。だから私は幽霊などの類も信じてはいなかった。

 あなたの横顔を見ながらそんなことを考えていると、天井を見ていたあなたがふと私に目を向けて言った。

「僕が死んだら、目の前にはキミが居るよ。」

 そしてあなたは、腕枕していた手で私の肩を抱くように引き寄せた。
 私はあなたの胸に顔をうずめながら言った。

「・・ありがとう。」

 そして、心の中で続ける。でも、ごめんね、と。
 もしもあなたのイメージ通りなら、私はきっと天国には行けないや。私が死んでも、私の目の前にあなたは居ない。


つづく





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最終更新日  2005年03月01日 13時15分55秒
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